見つけた、私にとっての真実

 

石塚諒平

2012年9月、高校3年生だった私は大学受験のために毎日ニュースをチェックしていた。ちょうどその時期、あるニュースが日本中を騒がせていた。中国各地で起きた「対日抗議のデモ」のニュースだ。通りかかる日本車を見つけ、殴り踏みつける人々。火が放たれ、破壊された日系企業の工場や店舗。気付けば私の心は強烈な嫌悪感に支配されていた。これをきっかけに私は、「中国人はみな日本を憎んでいる」と考えるようになり、中国を毛嫌いするようになっていった。反中の本を読み漁り、評論家が言った考えをあたかも自分の意見かのように語っていたこともあった。しかし今となっては、碌に関わりもせずに中国人を一括りに嫌ってしまったことを後悔している。

そんな私に転機が訪れたのは、カナダへ長期留学に行った2015年の時だった。留学してから半年が過ぎた頃、気付くと私の周りには中国人の友達が多く出来ていた。TAを担当していた日本語のクラスには「1日も早く日本語をマスターしたい」と熱心に私に質問をしてくる生徒がいた。歴史に詳しく、過去そしてこれからの日中関係について夜通し語り合ったルームメイト。帰国直前には中華料理をたらふくご馳走をしてくれ、送り出してくれた友人たち。そんな彼らと共に日々を過ごし、その温かい心に触れ、私の心の大きな氷はとっくに溶けてしまっていた。

一方で、周囲からはこんな声もあった。「国外にいるのは裕福で、教育水準の高い中国人が多い。だから良い人ばかりだと思ったかもしれないけど、国内の人達は君が想像しているのとは違うよ。」確かにそうなのかもしれない。ただ、私の心はモヤモヤしていた。「納得できない。あんなに優しくて温かい人たちばかりだったのに。」一度、中国に行って自分の目で確かめてみないと気が済まなかった。

そんな私の目に飛び込んできたのは桑原功一さんが北京で行ったフリーハグの動画だった。私は心を強く打たれ、留学中に出会った親友たちへの感謝を込めた日中友好のためのハグ活動を行う決心をした。半年以上の準備期間を経て、ようやく今年の2月に大学の友人と共に南京、重慶、上海の3都市を訪れ、現地で多くの人々とハグ活動をした。南京は実際に行ってみると人々の活気が溢れる大都市で、日本で抱かれているような攻撃的な印象を受けることは無かった。そして重慶の人々は優しくて少し照れ屋な人が多かった。おじいさんにハグをお願いすると、「恥ずかしいから嫌だ。」と照れつつも、最後には「我喜欢日本人。」と言ってハグしてくれた時にはどこか報われた気持ちになった。歴史的背景から日本人には「反日感情の根源」のように映っている南京や重慶であっても、そこに住んでいる人々はとても温かくて親しみやすかった。渡航前は不安な気持ちでいっぱいになった時もあったが、今では現地の人々と関わりながら中国を感じた経験はとても貴重で、大切な思い出になっている。

今日便利な世の中になり、様々な媒体で中国についての情報を入手できるが、それら全てが「真実」を伝えているとは限らない。正しいこともあれば、過剰に報道されている事実もある。メディアの意見を鵜呑みにするのではなく、あなたが直接関わって知った事実や感じた気持ちを大切にしていって欲しい。それだけはあなたにとって一番正しい事実であるし、好き嫌いを判断するのはそれからでも遅くはないだろう。きっと多くのギャップを感じる筈である。

今の私があるのも、留学中に私を頼ってくれ、良くしてくれた中国人の親友たちのおかげである。彼らへの感謝を忘れず、これからも私は日本と中国のために微力ながらも貢献していくつもりだ。はじめの一歩としてまずはあなたも「本当の中国人の姿」を確認しに、中国に足を運んでみては如何だろうか。


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