同級生グループ

2021-04-28 14:45:43


崔桂明=文

鄒源=イラスト

SNSの微信(ウイーチャット)ができてから、大学の同級生が自発的に同級生グループをつくった。暇なとき、グループチャットをしたり、「祝儀」の贈り合いや奪い合いをしたり、とてもにぎわっていた。

時間がたつにつれ、みんなは同級生の社会的地位に興味を持ち始めた。お金があったり、高い職位に就いていたりする人の発言が重みを持つようになった。

卒業後、われわれの同級生には公務員になった人が多く、今グループ内で最も出世頭は副処級幹部で、名は張興といい、X市の規律検査委員会で仕事をしていた。不思議なことに、張興がひとたびチャットを始めると、グループ内の公務員たちが、続々とそれに追随し、持ち上げた。

張興はグループの中で唯我独尊の情勢にあった。最近では、張興がマイカーでチベット自治区に行き、何枚かの風景写真をアップし、「われわれ夫婦は今ラサに向かう途中」と一行付けて、笑顔の絵文字を入れた。それがアップされるやいなや、あっという間に「いいね」マークが数個付いて、親指を突き出した小さな手がずらりと並んだ。

続けて、張興は毎日同級生グループに行った先の報告をし、旅の写真をアップしたため、みんなもその旅をしているように感じた。まるで盆や暮れのお祭り騒ぎのようだとみんなが思った。

その日、張興のマイカー旅行による盛り上がりが終わって1時間ばかり後のことだった。耿暁琳という同級生が一つのリンクをアップし、それは彼女が書いた文章だった。

耿暁琳は、自分が余暇の時間を利用して書いた原稿なので、転送してほしいとみんなに頼んでいた。耿暁琳のこの苦労して得た成果をみんなはきっと称賛するだろう、同級生が持つ才能にみんな喜びを感じることだろうと私は思った。

しかし1時間過ぎても反応はなく、また1時間後に、「祝儀を贈るよ!」とコメントを付けた人がようやくいたが、それに続くコメントはなかった。

耿暁琳は卒業後、いい仕事が見つからず、ある商店の販売員をしていた。彼女は時間があるときに読書をするのが好きで、自分でも文章を書いて投稿してみたら、採用されて掲載されたのだった。彼女がこれをグループチャットに投稿したのは、自慢するためではなく、同級生にできる限りの手助けをしてほしいと思ったからだ。

それとは対照的に、張興の一言、一枚の写真は、一石で千層の波紋を引き起こした。しかし耿暁琳の苦労の結晶には、誰も反応を示さなかった。

私自身はずっと騒ぎを傍観しているだけで、発言しない人間で、官僚になった同級生の発言に追随することはなかったが、耿暁琳のような肉体労働者が助けを必要としているときには、必ず助けの手を差し伸べる主義であり、だから、こっそりと転送しておいた。その後、グループ内に「OK」マークを書き込んだ。

この後の半年間、張興は同級生グループに書き込みをしなかった。今まであんなに活発に書き込んでいたのに、鳴りを潜めてしまったのはどうしてなのか、私はふに落ちなかった。ちょっと尋常ではない。

また半年が過ぎ、張興からようやく書き込みがあり、一つの動画が投稿された。1日たっても誰もそれに応えず、彼は放っておかれた。以前のお役人たちは、みな口がきけなくなったのか、まさか誰も見ていないわけでもあるまいしと、私はいぶかしく思った。

ちょうど私が不思議に思っているとき、同級生の小雅が私にメッセージをくれ、「張興は金銭トラブルを起こし、免職となり、今では一般職員だ」と教えてくれた。

 

翻訳にあたって

中国の公務員の等級は、上から国家級(正・副)、省級・部級(正・副)、庁級・局級(正・副)、県級・処級(正・副)、郷級・科級(正・副)、科員というように分けることができ、この文章で出てくる処級幹部は課長クラスの中層幹部といえる。ちなみに張興が格下げされた「一般職員」は上述の「科員」にあたり、大学を卒業して入職した人は皆これに相当する。企業で言えば「平社員」といったところだろう。

文中の 「红包」は微信に付属している機能の一つで、送金機能のこと。個人から個人への送金のほか、数人のグループに一定額を送り、一人一人にランダムに配分するという機能もあり、これを「抢红包」(祝儀の奪い合い)という。 (福井ゆり子)

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