地方政府・企業の交流拡大 ハイテクから観光まで

2019-05-06 14:54:11

文=陳言 

春風が頬をなで、一日一日と暖かさが増してきているのを感じる。中日の経済交流は昨年の両国首脳の相互訪問で弾みがつき、今年はさらに活発化の様相を呈している。

中日交流を全体的に眺めると、両国の政府や大企業から、地方同士へとますます広がりを見せている。また、企業のイノベーションの分野で開拓が進み、より深く重層的な中日交流が展開され、両国の経済関係はさらに安定的かつ強固に発展し始めている。

 

貴州省でビッグデータ事業

中日の経済交流では、政府同士のイベントがかなり多いことに気が付く。その他、省エネや環境保護に関する会議や第三国経済協力フォーラム、北京_東京フォーラムなどが定期的に開催され、大企業間の交流も頻繁に行なわれている。

経済交流の次の段階はどういった分野で展開されるべきか?日本の経済団体の北京駐在員は次のような事例を挙げた。

貴州省はここ数年、ビッグデータ分野での開発が非常に速く、関連分野で日本企業との提携を求めている。貴州省政府の訪日団は、日本滞在中の活動の重点をビッグデータ事業の紹介と日本企業との提携に置いた。

提携交渉が日本で順調なのは当然だが、貴州省側が紹介する地方色や地元民の暖かさ、景勝地に日本の観光業界が大きな関心を示している。貴州省の少数民族地区やアジア最大の滝といわれる黄果樹大瀑布などへの観光が注目されていることも、経済交流の大きな成果になっている。

「中国の地方は広大で、中国で働いたことがある日本企業の社員や役人は中国に対する理解を深めていますが、中国に来たことのない人々は各地方の事情に詳しくありません。中国の各地方の特色を紹介すれば、交流の中身はもっと豊富になるでしょう」と、前述の日本人駐在員は話していた。

一方、訪日中国人も日本に来て新鮮な印象を受けている。最近、静岡県を訪問した中国メディアの記者は、これまで静岡県の主要産業は農業だと思い込んでいた。しかし、同県の川勝平太知事にインタビューした際に、同県の自動車電子産業の現状を紹介された。また、医療機器の分野の最新情報を聞き、同県が急速に変化し、機械製造の新しい分野でも長足の進歩を遂げていることを知った。

中日両国の各界各層の人々がさらに交流を重ねれば、相互理解はもっと深まり、新分野開拓のチャンスはさらに増大するだろう。

 

尽きない提携の可能性

2月末、日本の総合電機企業の研究者は北京中関村のイノベーションストリートを再訪した。

半年ぶりの再訪だったが、往来する人が増え、情報技術(IT)の革新やニュービジネスモデルを語る人が増え、提出するアイデアはかつてと大違いだと感じたそうだ。多くのカフェで、さまざまなコンピューター論が熱く語られる光景を見た日本人研究者は、ある種の懐かしさを感じた。かつて日本企業にもこうした熱気にあふれ議論が交わされた時代があった。しかし今は、静かに資料を読み、議論も紳士的で、自らの発想を実践にこぎつけようという迫力に欠けている。

中関村のイノベーションはITが大部分を占めているが、ITを基礎にしたビジネスモデルや生産方式などが絶えず変革されている。加えて巨大市場の存在があり、一つのイノベーションアイテムが市場で認められると、急速に普及し、巨大な影響力を発揮する。これらは日本企業が今まで経験したことのないことだ。このような可能性があるので、中国の若者をはじめ、イノベーションでチャレンジしてみたいと思う世界中の人々が次々と中関村にやって来ている。今はまだぼちぼちといったところだが、ついに日本企業や日本のイノベーション関係者の姿を中関村で見掛けるようになった。

一方、京都など、東京や大阪以外の地方で、電子部品企業に大きな変化が起きている。パソコン、携帯電話、電気自動車に使用されている大量の電子部品用セラミックは、京都が世界市場の主要な供給地だ。京セラ、村田製作所、オムロン、堀場製作所などの京都の企業はデバイスやテスターなどの分野で優れた技術を持ち、中国企業に注目されている。世界的にも、これほど大きな電子部品企業の研究開発生産施設が集中している地域は極めて珍しいだろう。

中国企業はITのイノベーションで、日本企業は基礎原料や部品の研究開発でそれぞれ特長があり、両国の企業はそれぞれ異なる経営路線を進んでいる。異なれば異なるほど、企業間の提携の余地が大きくなる。

 

昨年5月、貴州省貴陽市で2018年中国国際ビッグデータ産業博覧会が開かれた。ビッグデータは貴州省の新興産業として、世界から注目を集めている(東方IC

 

新たなチャンネルの構築を

 政府間、大企業間の交流に比べて、中国の地方政府と日本の地方自治体、イノベーション企業間の交流は開拓の途上にあり、関連チャンネルの構築が不可欠になっている。

 筆者は新たな変化に着目している。昨年1030日、東京で日中デジタルビジネス協会が結成されたからだ。日本はITと製造技術の連携に十分な経験を持っているが、製造において、巨大な市場の需要がある中国とどのようにドッキングすべきかが、一貫した課題だ。いま、デジタルビジネス協会が誕生したことによって、中日双方で関連する交流の頻度が増し、両国の企業は自社の長所を発揮する新たな機会を得ることになるだろう。

 中国の地方政府と日本の自治体との一対一の交流は、過去数十年間数多く行なわれてきたが、複数の地方政府と自治体を結ぶ合同交流にはまだ多くの推進の余地がある。ある地方の特長は、ある国の一つの地方政府自治体としかドッキングできないということはなく、いくつかの地方政府自治体との交流によってさらに双方の理解が深化すれば、地方の経済活動の長所を極限まで発揮できる。

 中日の地方政府自治体間、イノベーション企業間の交流の拡大に伴って、さらに熱気に満ちた中日経済関係が形成されるに違いない。

 

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