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累卵の危うき

 

 晋の霊公は、春秋時代(前770年~前476年)の12列国のひとつ晋の君主で、名は夷といった。

 

 ある時、国の財力欠乏にもかかわらず、豪華をきわめた九階建ての楼閣を建造しろと命令した。この大工事は人力と財力をむだに使うだけだと知りながら、霊公を畏れて、大臣たちには誰ひとり、敢えて進言しようとするものがなかった。

 

 そこへ「知恵袋」と称されていた荀息がニコニコしながら霊公の前に進み出た。

 

 「それがしは、新しい技を身につけましたので、ひとつご覧に入れましょう」

 

 「どんな技じゃ」

 

 「碁石を12コかさね、その上にさらに卵を9コのせるというものです」

 

 びっくりした霊公は、「危険じゃぞ!卵が転がり落ちたら、それこそみな割れてしまうではないか」

 

 すかさず荀息は、「霊公さまのいいつけどおりに、九階建ての楼閣を建造しますなら、男は耕さず、女は機を織らず、兵士は国を守らず、役人どもはおのれの持ち場を離れて、それも長い間楼閣建造のために働かねばなりません。わが晋の国は、ために兵士や民衆は疲弊し、財力は底をつき、ひとたび急あらば、たちまち他国に攻め落とされてしまいましょう。卵を積み重ねることより、もっと危険だとは思いになりませんか」

 

 はっとわれに返った霊公は、すぐに工事をやめるよう命令した。

 

 後世の人は荀息のこの話から「累卵の危うき」の成語を引き出し、事態が緊急で、きわどいことのたとえとして使っている。

 

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