People's China
現在位置: 中日交流中国と私 日本と私中国と私

小林桂子さん 「愛」が人の心をつなぐ

 

「世界に一番大切なのは愛だ」「愛は、すべての災難を乗り越えていける」

これは、2007年12月に開催されたモナコ国際映画祭で5つの賞を受賞した中日合作映画『純愛』のテーマであり、その脚本および主役を担当する小林桂子さんの心からのメッセージでもある。

子どものころ、大好きなディズニー映画から命の大切さや人を愛する気持ちなどを学んだ。両親も映画を見せることで、「命はすべて同じ。国籍も関係ない。動物も人間も命はすべて尊い」ということを教えてくれた。そのため、映画はメッセージを伝える1つの方法だと分かり、それを通して、自分の生き方や夢を伝えていこうと思った。

1997年、舞台の出演で初めて中国の東北地区を訪れた。「中国の魅力、エネルギー、パワーを中国人から感じました。強さや情熱、激しさ、国を思う気持ちがとてもすばらしい。しかも残留孤児を助けてくれた心の温かい、ひとなつっこい人たちだと強く感じました」

それをきっかけに「中国の人が大好きになっちゃった」のだという。「これからの自分の人生をかけて、中国の人たちと理解しあおう。理解しあうことによって、過去に戦争という悲しい体験でできた傷やお互いの溝がうまるかもしれない。今、私たちがそれをしないと、未来の子どもたちの本当の日中友好はうそになってしまう」と考えた。そこから『純愛』の制作プロジェクトが始まったのだ。

中国人も日本人も相手のすばらしいところを理解しあってもらうために、残留婦人から聞いた話を基にして、8年をかけ、資料を調べたり、戦争体験者に取材したりして脚本を書いた。そして、日本に留学経験があり、日本が大好きな蒋欽民(ジャン・チンミン)監督に出会って、お互いの民族性を初めて表現することができた『純愛』を完成させた。

これは、戦争映画ではなく、「愛」の物語である。1945年、長い間続いた戦争の後、日本に帰れなくなった愛と俊介が、中国の農村で山龍(シャンロン)とその母に出会い、共に生き、彼らの中に生まれる友情と命をかけた「愛」を描いた作品である。

映画のなかに、「我愛你」というセリフがある。「一番大切なセリフ、私の一番好きなセリフでもあります。この『你』は、中国の人たちであったり、世界の人たちであったりします。とても意味深いセリフなのです」

四川省の大地震の報道で、現場にいる人たちが、「愛」と書かれたTシャツを着ているのを見て感動したという。「やはり『愛』が大切なんだと感じました。愛する気持ちは、人から求めるのではなく、自分から与えるものです。愛する気持ちがあれば、どんな障害でもきっと乗り越えていけると思います。私の人生のテーマです」(文=銭海鵬)

プロフィール

東京生まれ。日本では、テレビドラマや舞台などで、幅広く活動。1997年「戦後50年日中友好訪中団」の一人として、中国の舞台に出演したことをきっかけに、中国中心の芸能活動に専念。1999年、中国残留婦人の人生を描いた中日合作映画『純愛』の制作プロジェクトをスタートさせる。

おすすめスポット

『純愛』のロケ地である吉林省の集安市です。とてもきれいなところで、旅行で行くならぜひおすすめします。鴨緑江が国境線となっていて、望遠鏡を覗くと対岸が見えます。夜には、川沿いの屋台で、朝鮮料理や焼き肉を食べながら、国境の雰囲気を楽しむことができます。

 

人民中国インターネット版 2008年9月

 

 

同コラムの最新記事
僕の人生を変えたハンセン病快復村
オペラ『遣唐使』をめぐって
「もっと勉強」北京で決意
上海万博での出会いは財産
「ご飯に餃子」はおかしい?