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第一回  中医と西医、どちらで診察する?

 

馬島由佳子=文・写真 

馬島由佳子 静岡市出身。外務省在職中に赴任先の北京で中国医学、特に中薬に魅了され、2001年帰国退職後、財団法人交流協会で働きながら東京・本郷にある北京中医薬大学日本校で学び、2008年に国際中医師の資格を取得した。現在、『人民中国』インターネット部に勤務。

唐の僧・鑑真和上は12年で5回渡日を試み753年、6回目に成功。日本に仏教を伝えるとともに、 生薬を携え中国医学と薬の知識を伝えました。

日本では大陸から伝わった医学をもとに日本で独自に発展した医術を「漢方」と呼び、その薬を「漢方薬」と呼んでいます。中国では、数千年の歴史を持つ中国の伝統医学を「中医学」、薬を「中薬」と呼び、日本と共通のものも数多くありますが、呼び方や人々の関わり方も違います。

本連載は、北京で活躍する中医師のとっておきの話を中心に日本の薬局でも購入できる中薬(漢方薬)を紹介します。さあ、中国の人々の健康を支えている中医学にふれてみましょう!

 

中国のテレビでは毎日中医学に関する健康番組が放送され、最近はインフルエンザの予防薬としての中薬処方が開発され、化粧品にも積極的に活用するなど美容への応用も増えています。

中国では中国伝統医学を「中医」とし、西洋医学の「西医」と区別していますが、どちらも医師免許を取得していれば「中医師」、「医師」として治療を施すことができます。日本では「漢方医」は明治維新後に廃止され、現在は西洋医学を学び医師免許を取得した者だけが「医師」です。中国の西医は画像や生化学検査のデータに基づいて診断し、症状が現れている部位を化学薬品などで治療します。中医は体内の各器官は深い関連性があると考えるため、部分的な症状で判断するのではなく各機能のつながりを重視し、また、人体と自然界は一体であるという観点から、自然界からの影響も視野に入れ人体のバランスを診て診断します。薬は植物、動物、鉱物など化学合成していない天然の原料(生薬)を用いた中薬です。

処方一日分ずつの生薬が調合されたバット

中国には中医の専門病院、診療所が数多くあります。今回は北京市内にある総合病院、中日友好医院(朝陽区和平里櫻花東路2号)を取材しました。日本の一般的な総合病院と同じ現代医学の診療科がそろっていますが、日本の病院と最大の相違点は「中医科」の設置です。しかも中医科は「中医呼吸科」「中医風湿病科」「中医男科」「中医老年病科」など13診療科に区分されています。

 

中薬の注射液
中医科にも入院設備があります。もちろん薬は中薬を使用し、注射や点滴も中薬です。

ところで医者は、中国全土で西洋医が100万人以上いるのに対し、実は中医師は27万人ほどです。近年は中医学と西洋医学の互いの薬と治療法を併せ、各自の優位性を発揮することで治療効果を高めようとする「中西医結合科」が設けられ、中医と西医の両方の医師免許を持つ「中西医」が治療にあたり実績をあげています。中日友好医院でも中西医結合治療が重視され、治療のさらなる向上を目指して研究に取り組んでいます。

点滴にも中薬液を注入している 入院患者の脈を診察(脈診) 

 

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