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第九回 北京で見かける薬食同源のあれこれ ②

 

                        馬島由佳子=文・写真

本シリーズの第4回では、北京にある薬膳レストランを紹介しました。今回は身近で手軽に購入することができる、スーパーマーケットや街角のジューススタンドで薬膳を探してみました。

4月、北京市内にある玉淵潭公園で桜祭りが開催されました。日本のお祭り同様、屋台で餃子やラーメン、唐揚げなどが売られる中、「純天然野生植物粉」というものを売っている屋台をみつけました。販売員によると、重慶の名物とのこと。効能別の植物の粉の中から選んで、お湯に溶き、くず湯状態になったものをいただくのだそうです。 

お祭りの屋台でみかけた天然野生植物の粉  お祭りの屋台でみかけた天然野生植物の粉 

観光地で売られているのをよく見かけるのが「雪梨湯」。入れ物に書かれている「止咳潤肺・清熱袪火」とは、「咳をおさえ、肺を潤す。体内の火を取り去り、熱を冷ます」という意味です。梨とナツメを砂糖または蜂蜜で、カラメル色になるまでじっくりと煮込んだものです。梨は秋の喉の乾燥に効き目があり、とりわけ肝が高ぶっている時や高血圧を下げるのに効果があるとのこと。出来上がりに、さらに梨のかけらとナツメが加えられています。私の中国人の友人によれば、「家では、梨の季節になると、梨と氷砂糖に水を加えて煮詰めたものを喉の乾燥と風邪予防に飲みます」とのことでした。

 真夏でも大人気の雪梨湯を売る店 雪梨湯 

ジューススタンド「郭老冷茶」。症状別に、お店独自の生薬などをブレンドして煮出し、ペットボトルに詰めて販売しています。のぼせを冷ましたり、吹き出ものを治りやすくするお茶、口内炎や歯痛の鎮痛効果のあるお茶、美肌に導くお茶などがあります。このお店はチェーン店でオフィスビルに入っているのをよく見かけます。ビルの中で働いているサラリーマンが買って行きます。仕事中のリフレッシュに一杯、おやつ代わりに一杯。とても健康的ですね。

 効能別のお茶 持ち歩きに便利なペットボトルに入れて販売 

スーパーマーケットで「紅色養生牛乳」をいう牛乳を見つけました。牛乳に、紅色の食材である小豆、枸杞子(クコ)、黒糖が入っています。老廃物を出すのを助けながら、滋養を与えるというイメージでしょうか。温めていただけば、いつものホットミルクよりも、体の温かさが持続しそうです。

紅色養生牛乳。しかし中身は一般の牛乳と同じ白色 
 

「茯苓ヨーグルト」の茯苓はサルノコシカケ科の利水滲湿薬。むくみ、尿の減少している体の、余分な水や湿を取り除く効能があります。ヨーグルトに備わっている整腸作用も効果倍増ではないでしょうか。

 茯苓酸奶の酸奶はヨーグルトのこと

「亀ゼリー」は日本でも浸透してきた中国デザートです。亀の甲羅や腹の甲の粉末を数種類の生薬と煮出し、抽出液から作られたゼリーです。肺を潤し、整腸する上にコラーゲンたっぷりで美肌に!写真の亀ゼリーは金銀花を加え、体の熱を冷まし、余分な老廃物を取り去ることで、吹き出物改善も期待できます。

 本格的な薬膳スイーツを自宅で楽しめる

現在の北京は、日本と同じようにコンビニエンスストアが至るところにあります。コンビニで「氷糖雪耳煮木瓜」というデザートを見つけました。薬膳メニューに属します。雪耳は白きくらげのことです。氷砂糖と甘く煮て食べやすくなっています。コラーゲンと食物繊維を多く含み、皮膚を潤します。また、脾と胃を補い丈夫にします。木瓜はパパイアのことです。各種ビタミンを多く含み、抗菌作用があります。胃腸機能の消化を助け増強します。この2つの素材を併せることで美顔効果が期待できる薬膳スイーツの出来上がり! 

 コンビニで手軽に買え、弁当のデザートにピッタリ!

パン屋さんで黒糖を練った生地の中に、赤い粒が入っている食パンを見つけました。枸杞子です。枸杞子は肝を保養する作用があり、視力減退、めまい、かすみ目によいとされます。

 生地もふわふわで味も抜群の枸杞子パン

 「人参野米粥」は朝鮮人参と山薬のお粥。お粥は体力が落ちている時、風邪や病後の回復食にピッタリです。中国語で「山薬」、山の薬と書いて山芋のことです。朝鮮人参も山芋も肺、脾胃に働きかけるので、風邪で胃腸を壊したり、咳で肺を痛めたあとの回復にお勧めします。

 レトルト食品なのに、お店でいただくお粥と同じプロの味

<取材を終えて>今回ご紹介した品々は、北京に旅行にいらした方が、通りすがりに見かけたり、スーパーマーケット、コンビニなどで手軽に購入でき、薬膳を体験できる商品です。ぜひ、お試しを!そして、さらに新しい薬膳商品を発見してみてはいかがでしょうか。

 

馬島由佳子

静岡市出身。

外務省在職中に赴任先の北京で中国医学、特に中薬に魅了され、2001年帰国退職後、財団法人交流協会で働きながら東京・本郷にある北京中医薬大学日本校で学び、2008年に国際中医師の資格を取得した。

現在、『人民中国』インターネット部に勤務。

 

人民中国インターネット版 2011年9月13日

 

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