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日中青年交流会旅行

 

ジャスロン代表 笈川幸司

早稲田大学北京事務所主催・日中青年交流会旅行。

今回の旅先は承徳。先月の銀川、内モンゴル旅行では残念ながら参加できなかったが、冬休みの笈川特訓班に参加してくれた17名の大学生が中国側代表として交流会を盛り上げてくれた。

今回は、両国の若者同士がどのように交流しているのか見てみたいという好奇心から、出発日に他の予定を入れなかったことで実現した一泊旅行だ。

初日、まずは万里の長城へ。

中年の身、階段を駆け上がるペースが速ければついていけるはずもない。私は心底心配したが、そこは現代日本の大学生、ご老人とさほどかわらぬ牛歩のごとく、遅々として前に進まない。

それを見た中国人スタッフたちは驚く。これは偏見かもしれないが、数年後、彼らが社会人になったとき、世界を驚かすワーカホリックになるというのに、どの大学生からもその片鱗すら垣間見ることができないからだという。もしかしたら日本人は、知らず知らずのうちに、社会に出るまでは心のスイッチをOFFにしているのかもしれない。

そんな彼らのお陰もあって、私は体力を余計に消耗することなく、無事初日の大仕事(万里の長城巡り)を終えることができた。

さて、今回集められたメンバーについて紹介していなかったので簡単に触れておこう。

日本側は、早稲田大学から短期留学にきていた25名。中国側は、北京の大学を中心に集められた日本語学科の一年生13名。互いに相手の国の言葉を自由に話せない者同士。そこが、この旅のポイントだった。

交流会と言っても、ディスカッションのできる語学レベルは互いに持ち合わせていない。そこで、勾配の急な階段を、手を貸し合い、簡単ではあるけど励ましの言葉をかけ合いながら一歩一歩上がっていくことで、相手への関心、思いやりの心が芽生えてゆく。焦ることはない。私たち大人は何もせず、黙って彼らの心の変化を見ていれば良い。

案の定、互いに思いを伝えられなかった者同士が意気投合し、その夜はカラオケに出かけ、夜一時まで歌い通しだったそうだ。私は夜9時前には、さっさとベッドに潜り込んでいた…。

翌日、スタッフを含めた41名を乗せたバスは承徳へと向かう。

ガイドさんの話によると、世界遺産の承徳を訪問する日本人は少ないらしい。北京からバスに乗って3時間でいける場所。なぜ行かないかを分析するつもりはない。ただただ、お勧めしたい!

昨年の日本語講演マラソンで、天津や河北省へは日帰り講演を敢行した。往復2、3時間は当たり前。かかった時間は平均6時間以上だったことを考えると、承徳まで日帰りで行けるはずだ。「あの」感動を味わうことができるのだから、北京在住のすべての日本人には承徳へ行ってもらいたい。

私が一番に押すのは、普寧寺にある世界最大の木造大仏だ。

私は11年間中国に暮らしてきて、普段驚くことはまずない。カーレースのようにつっ走るタクシーに乗っても怖いと感じることはないし、レストランで信じられないほどたくさんの料理を注文するカップルがすべて平らげてしまう姿を目にしても「またか」と思うだけ。そんな私が驚くのだから、中国にきたばかりの日本人なら必ずや驚き、満足することだろう。

普寧寺の木造大仏は立っていた。座っているイメージがある大仏が立っていた。私はなぜかその大仏の顔を見てしまう。「さて、帰ろうか」と思って敷居をまたいでも、再び戻ってきて見てしまう。しかし、それは私だけではなかった。日中青年大学生たち全員がその場からなかなか離れようとしなかった…。

早稲田大学では、毎月と言って良いほどこのようなイベントを地道に行っている。そして、この活動に参加した両国の若者たちの心が徐々に打ち解けていくところを実際に目にした。

私はこれまでスピーチ大会や日本語特訓班を実施し、日本語学習を通じて、中国人学生たちに「日本」に触れてもらう努力をしてきた。

しかし今回のように、実際に日本人の言行を自分の目で見て、実際に日本人に触れてもらうことで、より日本への理解が深まることを知った。

今後は、今回のような活動をどんどん推し進める努力をしていきたいと思っている。新しい希望の光が見えた二日間だった。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。

「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2012年4月9日

 

 

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