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中国式お酒の飲み方

 

「乾杯攻めで参りましたよ」。ビジネスで中国に来たことがある人の多くが「中国式お酒の飲み方」に辟易した感想をお持ちです。確かに円卓を囲んで食事をしながら「では皆さまの健康を願って乾杯」とか「昇進を祝して乾杯」とか、全員が立ち上がり乾杯する光景はごく普通です。これが主賓だと他のテーブルからも次々と祝福や感謝の乾杯にやってきますから、何回も乾杯するはめに陥ります。

しかし、20年前に比べると中国人のお酒の飲み方は随分変わりました。まず、当時はコーリャンが主原料の度数が高い蒸留酒「白酒(パイチュウ)」が、ほとんどでしたが、最近は中国語では「紅酒(ホンチュウ)」というワインで乾杯のケースも増えています。もちろん宴席の主流は圧倒的に「白酒」です。文字通り飲み干してグラスの底を見せると盛り上がりますが、昔のように無理強いはしません。

日本では「取りあえずビール」が基本ですが、中国ではチャンポンは身体に悪いという考え方が根強く、正式な晩餐会でも居酒屋でも一種類の酒で通すのが普通なようです。筆者は相変わらず、日本式飲み方を墨守していますから、場の雰囲気が許せば、白酒も、ワインも飲み、水がわりにビールもいただいていますから、中国人の友人は「大丈夫?」と心配してくれます。

中国式飲み方が意外に健康的なのは、日本のように「手酌で行きましょう」と、めいめい勝手に飲むのではなく、誰かに声を掛けるか、テーブルの全員を誘って「乾杯!」で飲むからです。それにグラスは小さいですから、度数が高いせいで、のどごしはビリビリと来ますが、意外に量は飲んでいません。ただ時に、もっと飲みたいと思っても、何かの話題で盛り上がって、誰も「乾杯!」と言わないし、何回も自分で「乾杯!」と言うのも気が引けるということがあります。最近、「今日は日本式で行きましょうよ」と言うのですが、長年の伝統はなかなか変わりません。「結局、郷に入っては郷に従え」です。

二十数年前、奥さんから飲み過ぎないように注意されているため、お酒が進まない人がいると「気管支炎(中国語で気管炎=チー・クアン・イエン)にかかっているんだろう」と冷やかしました。「妻の管理が厳しい」という意味の「妻管厳」と発音が似ているからです。当時は携帯電話がほとんどありませんでしたが、最近では、宴会の途中で何度も奥さんから「警告電話」がかかってくる人もいます。日本にも恐妻家はいますが、中国の方が妻の管理が厳しいのかも知れませんね。

それにしても、日本もそうですが、中国でも「破滅型酒飲み」が減っているようです。クルマ社会に突入した中国では酒気帯び運転、酔っ払い運転には厳罰で対処していますので、宴会でも「車ですので」「ああ、そうですか」という会話が普通に交わされています。

ところで、日本酒に相当するのが「白酒」ですが、最近、「茅台酒」がコマーシャルで「国酒」を称していることが、他の酒造メーカーから批判され、話題になっています。四川省の「五糧液」とか山西省の「汾酒」など五大銘酒、八大銘酒の競争が、豊かな国民が増えるにつれて、より激しくなっているようです。

島影均

1946年北海道旭川市生まれ。

1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。

1989年から3年半、北京駐在記者。

2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。

 

人民中国インターネット版 2013年1月16日

 

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