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17歳の第一歩

 

野村由稀乃

この夏、私は大きな一歩を踏み出そうとしている。生まれて初めて、上海に、中国に行こうとしている。親は何も言わないけれど、あまり賛成していないことは雰囲気で痛いほどわかる。北朝鮮のミサイル発射に伴い、世界情勢も安定しているとは言えない。自分が高校三年生であることを私はよく理解していて、夏休みをどう過ごすかが進学に大きく影響することも分かっている。しかし、私はどうしても中国に行きたい。今、中国に行かなければならない。

去年の夏、アメリカのカンザスシティを訪れた。ホームステイ先の家族は、アメリカ人のお父さん、中国人のお母さん、そして子供が二人いた。家には中国らしいものも沢山置いてあり、私が滞在した部屋の雰囲気もベッドカバーが漢字で中国風だった。私ははじめ、この環境に戸惑った。なぜなら、中国に対して良いイメージを持っていなかったからだ。中国人に嫌なことをされた体験はないのに、私は無意識に偏見を持っていた。しかし、ホストファミリーは私に優しかった。私が楽しめるように予定を組んでくれた。アメリカの食事に飽き始めていた私のために、カレーや豚カツまで作ってくれた。想像の中の中国人と彼らは、かけ離れていたのである。日本の大学に通っていたホストマザーは日本語を話せる人だった。つたない英語しか話せない私にとって、それは本当に救いであった。母国語ではないのに日本語も英語も流ちょうに話すことが出来る彼女は、たくましく勇敢でかっこいい。長い時間を彼女と過ごすことで、次第に彼女に強い憧れを抱くようになった。私も彼女の様な国際的な感覚を身に着けた人になりたい。まさか中国人の中に自分が憧れる人を見つけることが出来るとは、過去の私なら信じられなかっただろう。どれだけ極端な偏見を持ってしまっていたのかと自分でも恥ずかしくなる。

アメリカに滞在中、車の中から電車を見つけた。その電車はもちろん線路の上を走っていたのだが、線路には塀やフェンスが取り付けられていなかった。後から母に、日本にもそのようなところがまだあると教えてもらったのだが、当時の私は驚いた。簡単に人が走行中の電車に飛び込めてしまうと考えたからである。ホストマザーにその考えを話すと、どうして日本人はそんなに自殺を考える人が多いのかと聞かれた。日本に住んでいたときからずっと疑問だったのだそうだ。確かに日本の自殺率は他国と比べると高いように感じる。ホストマザーの話によると、アメリカでは命は神様にいただいたものであるから、誰も、自分でさえも取ってはいけないという思想が強いそうだ。そして中国人は、辛い状況に陥ったとしてもそもそも自殺しようという考えを持たないのだ。この話を聞き、私は国民性の違いを今まで以上に感じた。そしてそれをもっと知りたいと思うようになった。

日本に帰国し心に余裕が出来てから思う。私たち日本人は相手がどこの国で生まれ育ったか、ということを気にしすぎていると思う。それは日本が島国であることも関係しているかもしれない。日本人でも一人ひとり個性があるように、中国人にもそれぞれ個性がある。中国人として全ての人をひとくくりに嫌うことは問題だ。私はホストマザーと出会ったことで、価値観を大きく変えることが出来た。しかし、あくまでも私は彼女しか中国の方を知らない。彼女の印象だけで中国人を知った気にはなれない。もっと多くの中国の方と話してみたい。今年の夏、私の住んでいる県で上海の生徒と日本の生徒の交換事業がある。参加するために試験に合格しなくてはならないが、挑戦してみるつもりだ。他人の意見やメディアの報道ではなく、自分の目で、耳で、肌で中国を学びたい。そして、これからもっと大好きになるだろう中国について、周囲に自信を持って語れる日本人になりたい。

 

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