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中国古典詩学者 葉嘉瑩氏に聞く

 

故郷に戻り後進を育成する

60年余りに及ぶ教師生活で葉嘉瑩氏は多くの後進を育てた。かくしゃくとして上品な葉氏の講義は、彼女の恩師である顧随氏と同じように、学生たちから敬慕されている。ひとたび壇上に上がれば、その小柄な体からすぐに強いオーラが放たれる。学生の多くは同じテーマの講義を何度も聴きに訪れるという。実のところ、彼らは講義を聴きに来るというより、ある種の美を鑑賞しに来ているのだ。この美は古典的でもあり現代的でもある。学生たちは、壇上に立つ葉先生はまさに1編の詩そのものであるとたたえている。

 一生の努力を通じて、葉氏は伝統と現代の間、東洋と西洋の研究者の間に中国古典詩の交流と研究の橋を懸け、極めて高い名声を得た。長年、北米で暮らしたが、葉氏はいつも「故園千里隔,休戚総相関(故郷は遠く離れているが、感情的には密接につながっている)」と、ふるさとのことを想っていた。2012年、葉氏は中央文史館館員となり、晩年は優れた伝統文化を伝え、中国の古典詩詞を広めるために貢献しようと決めた。

 葉氏が帰国するという情報が伝わると、友人や支持者たちは天津の南開大学と連絡を取り、資金を集めて、大学内に葉氏の号から名付けた「迦陵学舎」という施設を建てた。葉氏はここで晩年、カナダから持ち帰った60年の教師生活で集めた資料を整理するつもりだという。 

 葉氏の作品に、「柔蚕老去応無憾,要見天孫織錦成!(柔らかな蚕は遺憾なく老いていくが、織姫が錦を織り上げるまで見届けたい)」という句がある。これはまさに、葉氏が中国の詞についてまとめた「弱徳の美」に対する生き生きとした総括だ。弱々しい春の蚕は「弱徳」の存在を象徴しており、絶えることなく粘り強く糸を出し続け、最後には美しい錦となる。

 「中国の古典詩詞には、延々と続く生命に感応する長い流れが存在しており、絶えずに若者たちが加わってこそ、この生命の流れは枯れることなく続くでしょう」と葉氏は言う。そして「中国はいまや経済発展に疾走していますが、自国の最も純朴で重みのある文化の伝統を絶対に途絶えさせてはいけません」と呼びかける。

 風雲に満ちた現代中国を生き抜いた葉氏の波乱万丈な人生を眺めると、古典詩詞の「弱徳の美」により彼女の文化的使命感が喚起され、人生にも奥深い風采が加えられ、国内外での不朽の名声を得ることになったと言えるだろう。葉嘉瑩氏の望みがかなえられることを心から祈る。

 

 

 

 

 

柔蚕老去応無憾,要見天孫織錦成

(柔らかな蚕は遺憾なく老いていくが、

織姫が錦を織り上げるまで見届けたい)

 

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