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伝説の桃源郷シャングリラ

 

上橋頭村の木椀

 

各種の木椀製品が並ぶルロンチュマさんの家
 上橋頭村は徳欽までおよそ150キロメートルの、崗曲河谷の入り口に位置している。中国労農紅軍の「長征」で賀龍将軍が率いた第2軍団、第6軍団がここを通ったことがある。現在でも村の入り口の橋のたもとに「紅軍橋」の文字が残る。この小さな村で作られる木椀は非常に有名なものである。当時茶馬古道でチベット、四川に運ばれた貨物のなかにも上橋頭村の木椀があり、「シャングリラの木椀村」と呼ばれていた。

 

村に住む37歳のルロンチュマさんは、木碗に彩色の絵を施している。部屋には八吉祥図とハス模様が描かれた各種の木椀や、「辣子盒(唐辛子を盛る容器)」「ツァンバ盒(ツァンバや茶葉を納める容器)」がところ狭しと積み上げられている。すべて中甸からの注文だという。

 

36世帯しかない上橋頭村のうち、「ツァンバ盒」を作る家は2軒、木椀を作る家は6軒ある。ルロンチュマさんの祖父は村の木椀職人であった。言い伝えによると、かつて上橋頭村の木椀は種類が乏しく、一軒または二軒の家が普通の「辣子盒」を作っていたのみであったが、ザシスナーという青年がわざわざチベットに修行に行き、戻ってきてからツァンバ盒とさまざまな木椀の作り方を村人たちに伝授したのだという。

 

チベット族地区には、「父と息子、母と娘、そして兄と弟は同じ椀を使わない」という習わしがある。男と女が使う木椀の様式が区別されている。男用は口が大きく外側に広がり、深くはない。女用は口がわりと小さく、細身である。チベット族の人が普段使う木椀は12種あるという。上橋頭村で造られたものは、主にチベット族地区で売られる。

 

上橋頭村の木椀を作る材料は、必ず上等なクルミの木あるいはツツジの木の木材でなければならない。表面には漆の木から採った生漆を塗りつける。ひびが入ることや漆がはげることを防ぐため、3回生漆を塗らなければならない。こうすることでつやを長く保つことができるようになる。

 

古代、生漆で塗られた工芸品は皇室へ献上する貢物であった。村ではいまでも代々伝わってきた習わしを守り続け、生漆を塗った木椀にだけ金箔を施し、ほかの種類の漆を塗ったものには銀箔を施す。

 

上橋頭村での取材を終えると、次の目的地である梅里雪山を目指して、この地を後にした。(馮進=文・写真)

 

人民中国インタ-ネット版

 

 

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