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総括 中国映画の2011年を振り返る

 

文・写真=井上俊彦

いよいよ年末になりましたが、今年の中国映画界は話題豊富な1年となりました。

2010年末に公開された『譲子弾飛』『非誠勿擾Ⅱ』の大ヒットの中で年が明け、2月には10年前に話題を集めたドラマの後日談を映画化した『将愛情進行到底』がヒット、春から夏にかけては『カンフーパンダ2』や『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』などハリウッド映画が上映され、チケット売り場に長蛇の列ができました。夏には『建党偉業』『武侠』『窃聴風雲2』など話題作が一挙に公開されましたが、その陰でドラマで人気の女優ヤン・ミー(楊冪)主演の『孤島驚魂』が1億元近い興行成績を収めるなどの動きも見られました。秋になると『白蛇伝説』『画壁』などの中国ファンタジーが話題となりました。そして11月には低予算作品の『失恋33天』が3億5000万元の興行成績をあげ、今年最大のダークホースとなりました。さらに、12月には初の本格3D武侠映画『龍門飛甲』、チャン・イーモウ(張藝謀)監督の新作『金陵十三釵』など大作の公開が続いています。

このコラムでは24回の連載の中で25本の映画を紹介しましたが、実際に劇場で見た作品は60本ほどになりました。そこで、年末にあたって映画ファンとして2011年の5大ニュースをピックアップしてみます。

 

1.『失恋33天』のヒット

中国映画では、大作がそれほど振るわず、むしろローバジェット映画からビッグヒットが生まれました。その中でも『失恋33天』は、今年の中国映画界で一番の話題と言って過言ではないでしょう。11月という興行の端境期に上映され3.5億元の興行成績を上げました。私自身も公開初日に映画館に出かけましたが、予定の回も次の上映回も満席で入れないという、初めての経験をしました。そして、この作品を支持した「小清新」など知的で芸術、カルチャーを愛する若者たちが注目されました。

2.90周年映画

2年前の建国60周年時に『建国大業』『風声』などが上映されましたが、今年は『建党偉業』をはじめ『楊善州』『飛天』など共産党成立90周年を記念する映画が上映されました。また、辛亥革命100周年を記念する『1911』(原題・辛亥革命)も制作されました。

3.興行収入130億元

興行収入は11月末で110億元を突破、最終的には約130億元となると予想されています。昨年が101億元なので、また今年も約30%という伸びを記録したことになります。4年で3倍近い成長をしてきたわけで、業界としては笑いが止まらないのかもしれませんが、その一方で、入場料がじわり値上がりという動きも見られましたし、チケット売り場で40分並ばされたこともある一方、私以外にまったく観客のいない上映もありました。

4.ミニブログと集団購入

制作側や出演者が、「中国版ツイッター」と言われるミニブログで早くから作品を宣伝して効果を上げる一方、作品の欠点をあげつらい「爛片」「垃圾片」(いずれもダメ映画の意味)などの短い言葉で攻撃する個人のミニブログも多数登場し、ミニブログの正負両面での影響に注目が集まりました。また、ネットでの「団購」(集団購入)が流行、通常の数分の1の価格でチケットが販売され、映画館によっては「団購」専用窓口を作るほどの人気となっていますが、一方で不公平感などの問題点を指摘する声も出ています。

5.リメーク全盛

リメークものの制作が相次いでいます。『硬漢2』『窃聴風雲2』『全球熱恋』『龍門飛甲』などが上映され、前作以上のヒットとなるものも登場。『画皮Ⅱ』『河東獅吼2』『飲食男女2』なども控えている状態で、この背景には確実な回収が期待できる作品を求める投資者の存在があると言われます。ファンとしても、前作以上の期待を持ちますので、安易なリメークが続くと観客離れにもつながりかねないと警鐘を鳴らす向きもあります。

さて、このようにいろいろな動きがあった2011年の映画界ですが、来年はどんな作品が上映され、何が話題になるのか、今年に引き続き映画館通いをしながらレポートしたいと思います。お付き合いいただければ幸いです。

 

   

 

プロフィール

1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。

1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。

現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。

 

人民中国インターネット版 2011年12月27日

 

 

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