People's China
現在位置: 連載最新映画を北京で見る

中国映画の2013年を振り返る

 

年間興行収入が約218億元と躍進が続いた中国映画界の2013年をざっくりと振り返ってみたいと思います。

『人再囧途之泰囧』の爆発的ヒットの中で幕を開けた2013年でした。1月には同作が掘り起こしたコメディー・ファンが続けて見に行ったのか『快楽大本営之快楽到家』が、評判はかんばしくないのに好成績を上げました。春節に向けて子ども向けアニメやヒロインものもヒットし、家族向け作品の可能性を示しました。一方で『一代宗師』も公開され、ウォン・カーワイ監督作品としては中国大陸部で最大のヒットとなり、多彩な内容の作品が映画ファンを楽しませました。

バレンタインデーにはチャウ・シンチー監督の『西遊・降魔篇』が『泰囧』に迫る爆発的ヒットとなり、中国映画界まさに頂点を極める勢いでした。そんな中で、日本のテレビドラマをリメークした『101次求婚』が2億元を上回る大健闘を見せ、それに続いて3月にはタン・ウェイ主演の『北京遇上西雅図』が5億元突破のヒットとなるなど、ラブロマンスものの健闘が目立ちました。この時期には、フォ・ジェンチィ監督の『蕭紅』も公開され、2013年の各映画賞にノミネートされました。

4月にはヴィッキー・チャオ初監督作品『致我們終将逝去的青春』が公開され、大きな話題になりました。今年公開された作品として第2位の興行成績を上げただけでなく、各映画賞でも評価されましたから、初監督作品としては素晴らしい成績と言えそうです。この月には『毒戦』などもヒットしました。このところ、『~戦』という名前の犯罪映画が多数公開されており、少しどじょうが多すぎるかなという気がします。そして5月には『致青春』に続くようにかつての大学生生活を描いたピーター・チャン監督の『中国合夥人』がヒットしました。80年代、90年代を懐かしむ風潮が生まれているのかもしれません。この頃、『アイアンマン3』が海外作品として年間最高成績を上げました。

6月に入ると夏休みに入る大学生などをターゲットにし、人気小説家のグォ・ジンミン(郭敬明)が自らの作品を映画化した『小時代』のほか、アンディ・ラウ主演の『天機・天機・富春山居図』が予想以上のヒットになり、ネットにこれらの作品をこきおろす評論があふれ話題になりました。7月は『パシフィック・リム』『スピード6』『ホワイトハウス・ダウン』などの海外作品が軒並み大ヒットしましたが、そんな中で中韓合作の『大明猩』が意外な好成績を上げました。野球を見ないはずの中国ですので、私も驚きました。また、この時期公開された『周恩来的四個昼夜』は、当初は大きな話題にはならなかったものの、その後超ロングセラーとなり注目されました。『天台愛情』『盲探』などの作品が健闘しました。

8月はバイ・バイハー主演の『被偸走的那五年』、ニック・チョンが肉体美を披露した『激戦』、『小時代2』、ファン・ビンビン主演の『一夜驚喜』など多彩な作品がスクリーンをにぎわしましたが、受験生と恋愛の問題を扱った『青春派』が公開後に評判になりました。

9月は『狄仁傑之神都竜王』が予想通りの大ヒットとなる中、ダークホースとして『全民目撃』が好成績を上げ話題になりました。10月には『ローンレンジャー』や『ラストスタンド』など大作アメリカ映画にまじって公開されたロシア映画『スターリングラード』が話題になりました。国産映画では『我想和你好好的』が、ニー・ニーとフォン・シャオフォンというリアル・カップル(?)の共演で関心を集めたようです。

11月には『掃毒』『控制』などの犯罪ものが話題になる中、海外勢の『ゼロ・グラビティ』がヒットしました。そして12月になると『無人区』『風暴』『私人訂製』『ポリスストーリー2013』『等風来』など話題作が立て続けに公開され映画館のロビーは大勢の人で賑わいました。

 

国産のストーリー映画は638作で前年より107作減少しましたが、興行収入は約218億元で前年より28%ほど増加し、この数年来の流れを維持しました。例年との違いは国産映画が好調で、輸入作品を大きく上回ったことです。興行収入に占める国産映画の割合は59%でした。なお、興行収入を地域別に見ると、1位から広東省、江蘇省、北京市、浙江省、上海の順です。人口から考えるとやはり北京と上海の映画消費が突出していることが分かります。

2013年の国産映画興行収入ベストテンは以下の通りです(数字は大まかなもので12月末時点の計算です)。

『西遊降摩篇』 

12億4600万元 

『致青春』 

7億1900万

『狄仁傑之神都竜王』 

6億020万元 

『私人訂製』 

5億8200万元(12/31現在上映中) 

『中国合夥人』 

5億3930万元 

『北京遇上西雅図』

5億2000万元 

『小時代』 

4億8800万元 

『警察故事2013』

3億4000万元(12/31現在上映中) 

『風暴』 

3億0600万元(12/31現在上映中)

『天機 富春山居図』

3億元 

32作品が1億元を突破しており、18位の『101次求婚』までが2億元突破です。ちなみに、1億元以上の興行成績を上げた外国映画は28本、トップは『アイアンマン』の7億5520万元、2位は『パシフィック・リム』の6億9430万元でした。

 

プロフィール

1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。

1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。

現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。

 

人民中国インターネット版 2014年1月13日

 

同コラムの最新記事
中国映画の2013年を振り返る
帰ってきた『33日』コンビ『等風来』
馮小剛の面目躍如 『私人訂製』
ド派手な香港犯罪アクション 『風暴』
“起死回生”の公開 『無人区』