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本当の相互理解とは

 

山﨑千咲

私は語学留学で2016年2月から7月まで中国の重慶にいた。私が通っていた学校には、数年ぶりに日本人が来たということで珍しがられてなのか沢山の人から話しかけてもらえた。そんな環境にいたおかげで、Wechat(中国版のlineのようなもの)には計130人と交換して沢山の友達ができた。130人の中には、日本に興味がある人、日本語が上手な人、日本のアニメが好きな人、全く日本に興味がない人など様々な人がいる。 

その内、全く日本に興味がない男子学生のマオと毎週一緒に出掛ける仲にまでなった。出会いのきっかけは、寮の管理人とマオが話している時に偶然、私が通りかかり管理人がマオに私を紹介したことである。マオは、日本のことを全く知らなかった。私と会話をしたいがために日本の事を聞いたり知っていることを話したりしてくれた。『日本語で“你好”は何と言う?日本で人気があるスポーツは?日本はお寿司が有名だけど僕は生魚が食べられない。』逆に私も、『重慶の方言で“好的”は何と言う?中国で流行っている歌手は?重慶は唐辛子が有名だけど、私は辛い物が食べられない。』と言ったりした。このような話は新鮮で楽しかったし、異文化理解に繋がり、勝手に中国人の事を分かっている気になっていた。 

その後、マオの質問が『日中関係についてどう思う?どうして戦争で沢山の人が殺されているのに日本はアメリカが好きなの?』という歴史に関わる質問に変わっていった。政治・歴史問題について話し合うのは、今後マオとの関係が悪くなる予感がして、私はいつも『そういった事は詳しく知らないけど、たとえ日中関係がどんな状態になっても、私たちの仲はいつも良い。犠牲者が出るから戦争はしてはいけないしか習っていない。』と言い、歴史・政治に関わる質問にはいつも逸らした。育った環境が違うため、意見の食い違いがでて価値観の押し付け合いになると思ったからである。 

留学が終了し、私が日本に帰ると徐々にマオとの連絡が減り、今では疎遠になっている。今だからこそ、思うことがある。あの時、マオはただ単純に私の意見を知りたかっただけじゃないだろうか。歴史・政治という難しい問題を通して一日本人としての私の考え方を理解してみたかったのではないだろうか。もし、本当に歴史や政治のことについて知りたいならインターネットで調べられるし、インターネット上でみんながマオの疑問について答えることができるだろう。でも、そこには信頼関係がないからきっと言い合いや喧嘩になるだろう。でも、私たちは信頼関係ができており、あの時だからこそ、普段きけないナーバスな歴史・政治問題にも触れられるのである。あの時だからこそ、一日本人・一中国人の個人の意見として知り、お互いに知らなかったことを分かり合い、本当の意味での相互理解できると言える機会であったと思う。メディアには決して取り上げられることがない相互に意見を言い合い受け止めてこそ、日本人・中国人というものを再認識でき、本当の相互理解と言えると今だからこそ感じる。

 

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