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就職にたちはだかる壁

 

存在する男女差別

 

中国では1950年代から「女性が天の半分を支える」とよく言われるようになった。そして今の若い人たちは子どものころから「男女平等」の教育を受けた。

 

そのため、女子学生の多くは、単純な事務仕事では満足せず、男性と同じように職場で活躍したいと考えている。しかし近年、就職活動の現場において、彼女たちは「男性に限る」や「男性優先」という現状に遭遇している。

 

性差別があらわに

 

大学生の就職事情は「男強女弱」の状況が明らかだ(新華社)
  10年前までは、国家が大学卒業者に対して統一的に仕事を分配していたため、就職時における男女差別はそれほど明らかではなかった。しかし近年は、自ら就職活動をするのに加えて、大卒の人が増えたため、雇用者側は求人の際にさまざまな条件を提示するようになり、これまで隠れていた性差別があらわになった。

 

いまの女子学生たちは、募集要綱を見るとき、まずは「男性に限る」という条件がないかどうかを確認するのが習慣となっている。でもこうした差別的な条件に対して、ひそかに文句を言うだけで、雇用者側に訴える人は少ない。

 

このような性差別により、女子学生の選択範囲は狭くなっている。そのため、女子学生向けの就職説明会が各地で開かれ、女子学生に企業と接触する機会を与えている。

 

ある就職説明会は、朝9時から始まるというのに、6時すぎにはもう人が集まり始めた。10時になると会場は女子学生でぎっしり。そこで主催側は、入場券を配り、時間を分けて入場させる方法をとった。

 

女子学生向けの就職説明会で人気が高いのは、販売や財務、広報、教師などの職だ。こういった職は女性に向いているため、たくさんの女子学生を引き付けている。応募数も募集人数の数倍になるという。

 

就職説明会は多くの学生に歓迎されているが、女子学生向けの就職説明会も性差別のひとつだと考える人もいる。

 

家庭と仕事の両立は?

 

上海市の人材サービスセンターは、大学生のための就職窓口を設けた。無料で情報を提供したり、就職先の選び方を指導したりしている(新華社)
  性差別という現実に直面して、大学院に進学してさらに高い学歴を取得し、自分の競争力を高めようと考える女子学生は多い。しかし現状からみると、修士号や博士号を取った女子学生の就職状況もあまりよくない。

 

ある企業の人事部の責任者は次のように語る。「大学院を出ると、もう25、6歳です。2、3年もしないうちに出産して産休をとり、そのあとも育児があってフルに働くのは難しい。でもそれで解雇したら『労働法』に違反してしまいます。そこで解雇するわけにはいかない。これは企業にとってはかなり大きな負担です。だから、わが社では女性を採用しないのです」

 

同じ条件であれば、女性を採用するほうがコストが高くなる。利益を追求する企業にとっては、男性を採用したほうが賢い選択なのだ。

 

育児の問題、気力や体力の違い、これは雇用者側が女子学生を断るときの常套文句である。

 

しかし、一般の企業のホワイトカラーの仕事は体力とはあまり関係ないし、育児は父親と母親の両方がやるべきだろう。それでも伝統的な考えから、多くの人は家庭のことは女性がより負担すべきだと思っている。これが、女性の仕事の効率に影響し、そのために女性の採用は敬遠されるのだ。

 

性差別は社会の偏見であり、人々が自ら悟るのは難しい。企業が「男女どちらでも構わない」と言っても、結婚や出産を制限したり、高学歴を求めたりなど、隠れた性差別は依然として存在する。

 

これに対して中国婦女連合会婦女研究所の蒋永萍さんは、政府はもっと積極的な政策をとって、企業が女性を雇用するよう奨励すべきだと指摘する。たとえば、税を減免したり貸付を優先したりして、雇用者側が男女平等を促進する社会的責任を果たすよう導いていくべきだと話す。

 

待たれる法律の制定

 

男女平等の就職を保証するには、市場メカニズムの調整だけに頼っていてはいけない。この問題を本当に解決するには、政府がイニシアチブをとるべきだ。

 

『労働法』と『婦女権益保護法』には、「女性は男性と平等に就職する権利を有している」と規定されているが、これは巨視的な規定で、可操作性にかける。たとえば、『労働法』第13条には、「国が規定した女性に合わない職種やポスト以外は、性別を理由として、女性の採用を拒否したり、女性の採用基準を高めたりしてはならない」と定められている。ところが、どんな仕事が女性に合わないのか、これについてはいまだに明確な定義がない。

 

法律があいまいであるために、被差別者である女子学生が法に基づいて自分の権利を勝ち取ることは難しい。中国人民大学の楊偉国教授は、「差別をなくすためには、まずは法律で明確に定義し、それと同時に、違反した場合の処罰を制定しなければならない」と指摘する。

 

2008年に公布された『就業促進法』に期待を寄せている人もいるが、「雇用者側は女性従業員を採用する場合、労働契約の中で、女性従業員の結婚や出産、育児を制限する内容を規定してはならない」という項目が増えただけだ。多くの法律の専門家が言うように、本当に解決するためには『就業差別禁止法』を制定しなければならない。

 

董昱(25歳)

   2004年、北京第二外国語大学卒業。専攻は日本語

 

3カ月間で十数社の面接試験を受け、最終的に某日系企業に秘書として採用されました。その仕事は安定していて収入も悪くなかったのですが、昇進できる可能性も少ないし、10年、20年後も同じような事務仕事をしていると考えると絶望的な感じがして、ほどなくして辞めました。

 

そのあと、ファッション誌を出している出版社や旅行会社で働きましたが、どれも秘書のような仕事でした。女性はこういう仕事しか見つからないのか? 自分の追い求めている目標は高すぎて現実的ではないのか? と悩みましたが、やはり常に挑戦する仕事が好きなので、まだ長く続けようと思う仕事は見つかっていません。

 

Q 仕事を探すのは難しいと思いますか。

A 思いません。ただ、いい仕事を見つけるのは難しい。

Q あなたの理想の職業は何ですか。現在の仕事は希望通りですか。

A 将来性があって、自分の学んだ日本語を十分に生かせる仕事です。今の会社はまだ入ったばかりなので、どうなのかよく分かりません。

Q 現在、大学生が就職難に直面している主な原因は何だと思いますか。

A よく分かりません。原因はいろいろあると思います。

 



 

 

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