五台山での円仁(3)「五台巡礼」

 

中台への道を行く孤独な僧

 

中台へ行くのに、円仁は踏み固められた小道を登った。彼の観察によると、「五台は高く、他の山塊の嶺々の上に抜きん出ていて、その周囲は500里もある。その外側には高い峰が重なり合って、五台をとり巻く壁をなしている。それらの峰には樹木がうっそうと茂っているのだが、五つの台だけは中腹から頂上まで樹が一本もない」  私の前を行く孤独な僧の姿を路上に認めたとき、私は唐代の巡礼者の後に続いて歩いているかのように感じた。

 

凍てついたローム層とつらら

 

五台の高い部分を占める厚いローム層は、円仁がまさに描写しているとおりだ。「中台は他の四つの台の中心をなす。中台はいたるところ地面から水が湧き、一寸余の柔らかな草が厚く地面を覆っている。草はその上を踏むと倒れるが、足を上げるとすぐにまた元に戻る。細く柔らかな草は苔をまじえて生えている」

 

中台の眺め

 

五台を見上げて円仁は、山頂はいずれも円形をなして樹木無く、青空に届かんばかりにそびえている、と書いている。彼が初めて中台を訪れたのは旧暦5月20日であった。巡遊の道すがら、さまざまな坂を越え、そこかしこに立ち寄ってお茶を飲んだ様子などをこと細かに述べている。私がこの台に挑戦したのは5月1日であった。前夜に雪が降ったため、大気は身が引き締まるように冷たく、空はどこまでも蒼かった。

 

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