五台山での円仁(3)「五台巡礼」

 

東台の野の花

 

 

東台の豪華な野の花は、円仁日記の次の描写を思い出させる。「その花々の色を見ると、一般にはまだ知られていないものであり……まるで錦を敷きつめたようだ」。この五台山の地はすべて北魏(386~534年)の孝文帝が文殊菩薩に与えたものだと、土地の伝説は伝えている。皇帝は、文殊菩薩が読経の際に用いる座布ほどの大きさの土地が欲しいといわれて、疑いもせずに奉納した。ところがその座布はみるみるうちに500里もある五台の地を覆うばかりの大きさになった。皇帝は騙されたと知って怒り、台という台に臭いねぎを植えさせた。これに対抗して文殊菩薩は野の花の種を一面に蒔いた。野の花のかぐわしい香りが野に満ちて、ねぎの悪臭を消してしまった。「文殊菩薩の蘭」もまた文殊菩薩の名にちなんだ花である。

 

普済寺の中庭

 

円仁は、五台山を去る途中に南台を訪れ、「三間のお堂の内に文殊菩薩像が安置されている。白玉で造られ、同じく白玉の獅子に乗っておられる」と記している。ここで香を焚くことは、五台山巡礼の完了を意味した。それは私にとっても同じであった。

 

望海寺の日の出

 

五台山でのすばらしい経験の一つは、東台から眺める日の出だ。円仁も「まことに知る、五台山こそ万峰の中心なり」と叫んでいる。

 

 

阿南・ヴァージニア・史代 米国に生まれ、日本国籍取得。10年にわたって円仁の足跡を追跡調査、今日の中国において発見したものを写真に収録した。これらの経験を著書『「円仁日記」再探、唐代の足跡を辿る』(中国国際出版社、2007年)にまとめた。





 

人民中国インターネット版

 

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