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日本語講演マラソンがスタート

ジャスロン代表 笈川幸司

9月20日13時半、快晴の大連にて待ちに待った日本語講演マラソンがスタートした。この一年を振り返ってみれば大連講演を2回行ったのみ。久しぶりの講演会だったので、不安を抱いていた。

海洋大学

わたしは普段から「ピンチに強い人間だ」と自分に言い聞かせている。こういうときのためだ。ところが今回ばかりは勝手が違っていた。主催を引き受けてくれた大連理工大学出版社の遆副社長からは「確かに良かったけれど、笈川先生の良さが最大限に発揮されていなかった」とのコメントをいただいた。声を張り上げ、懸命に訴えかけるわたしの姿を見て、さすがに完全否定ができなかったのだろう。その後、「場所が良くなかった」「観客が悪かった」など、あれこれ理由を挙げてはわたしのことをフォローしてくれた。しかし、いろいろな条件を挙げられても何一つ納得できなかった。なぜなら、出来が悪い一番の理由を、わたし自身が一番よくわかっているからだ。

「習うより慣れろ」

これは、ものごとをはじめるときに使われる言葉。だが、しばらくやっていなかったため、勘が鈍っている状態のときにも使える。実際、日を追うごとに「あれ?」と思うような不自然な「ま」が消えていった。「慣れ」というのは、その不自然な「ま」を埋めることを言う。そして、「渡りに船」とばかりに、このイベントの連絡係で雑誌『一番日本語』の編集者・劉宇光先生がひとつのグッドアイディアを提供してくれた。

芸術学院

これまで、わたしの講演に対する2つの意見があった。ひとつは、「面白い話が盛りだくさんだった!」という肯定的意見。もうひとつは、「話にまとまりがなかった!」という否定的な意見。話を変えるときに違和感を持たれたら後者に回る人が増える。その点に気づいた劉先生がある日突然、講演開始直後、学生たちに質問用紙を配り出した。3分後、学生たちから質問用紙を集め、わたしに手渡した。その日から、この講演会が、聞きに来た学生たちとわたしとの交流の場となった。

これがハマった。こちらが予め用意していた話をするより、学生たちからの質問の答えとして、あたかも即興で話しているように見せるほうが好感を持たれる。質問に答えているのだから、同じ内容の話をしたとしても、つまらない説教には聞こえない。毎回、即興で答えているので、臨機応変に対応できる頭の良い人間だと勘違いされるかもしれないが、少なくとも、一方的に話を進めていた以前のやり方よりは感触が良い。最初の六日間、大連で13校14講演を実施したが、幸先の良いスタートを切ることができたのは、すべて劉先生のお陰だ。次の訪問地・ハルピンでも、大連講演に負けないぐらいの気合いで行きたいと思う。

 

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2011年9月21日

 

 

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