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男だけのスピーチ大会を開催

ジャスロン代表 笈川幸司

「男女差別だ!」

そんな批判の声が聞こえてきそうなコンテストを開催しました。しかし、現場はどうだったのかと言えば、会場に集まった多くの人たちから温かい目で見守られた、笑いあり、涙ありの穏やかな大会でした。

成績優秀者

日本国際交流基金の統計によると、中国で日本語を学ぶ学生は83万人だそうです。その大半が大学生ですが、わたしの知る限り、女性優位の状況は揺るぎません。クラスの成績上位、留学枠、スピーチコンテスト枠などは女子学生の独壇場です。

だからと言って、男子学生が頑張っていないわけではありません。わたしは10年前からずっと、「最後に頼りになるのは絶対に男子学生だ」と言い続けてきましたし、今もその考えを変える気持ちはありません。ただ、「日本語が上手なのはどちら?」と聞かれたら、わたしはウソをつけません。「それなら、女子です」と答えます。「自分の日本語に自信を持っているのはどちら?」と聞かれたら、「女子です」と答えます。とにかく感覚で言えば、大学四年間で女子に約二年分の差をつけられてしまうような可哀相な男子たちに何とか頑張ってもらいたい!と思って企画したのが、この「男子だけのスピーチ大会」だったわけです。

大会開催に最低限必要なのは、会場、人、賞品などの経費です。

今回、大会の趣旨を理解していただいた日本大使館広報文化センターから会場を無料でお借りしました。人というのは、審査員と出場者のことです。審査には、東京から「月刊日本語12月号」の取材に来てくださったアルクの村上先生、石本先生と、浮世絵外交を中国で展開している日本国際芸術文化協会の平井副理事長に依頼しました。3名とも出場者の顔と名前がわからないため、「不公平だ!」と声を荒げる人もいませんでした。次に出場者ですが、各大学に通知を出して募りました。今回は1分間スピーチというハードルの低い大会だったためか、38名も集まりました。その全員が日本大使館の舞台に立つとあって、ほとんどの学生が足を震わせながらスピーチしていました。最後に経費ですが、出場者全員分の賞状をこちらで用意し、最優秀賞一人には、平井さんから浮世絵が授与されました。

山田重夫公使のあいさつ

スピーチコンテストというと、大学の面子や審査の不透明さなどが指摘され、「そんなものは必要ない」という意見まで出てくるのも事実です。しかし、わたしはこう言いたい。「コンテストは、スポーツにたとえれば試合のようなもの。練習ばかりしていても上手にはならない。ある程度の緊張感を持って試合に望むから誰もが上達できる。そして、周りのレベルと自分のレベルを把握した後には、心に余裕を持って練習に取り組むことができる。だから、コンテストは必要だ」と。

大会後、出場したほとんどの男子学生から、感謝の声、感謝の電話、感謝のメールをいただきました。20日から始まった『日本語講演マラソン』の合間を縫ってこのような有意義な大会を開催することができ、ほんとうに良かったです。これからも、熱いハートを持った多くの学生たちに機会を提供していけたらと思っています。

 

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2011年10月2日

 

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