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大連特訓班

ジャスロン代表 笈川幸司

ここ数年、夏休みと冬休みに学生を大連に集め、五日間の「特訓班」を実施している。今回は、国慶節休みに実施した。五日間、朝9時から午後5時まで学生たちは息つく暇もなく、脳みそをカシャカシャ回転させながら勉強していた。

この特訓の特徴は、勉強の反射神経を鍛え、できないと思う心を打ち破って「できる」瞬間を体感してもらう点と言える。対象は、苦労を苦労とも思わない若者に限る。そういう条件で学生を集めているからか、楽なタスクはひとつもないのに落伍者が出ない。ほんとうは参加者全員が苦しいはずだ。それでもあきらめずに付いてこれるのは、特訓を通して、根性を鍛えることができるからだろう。課題は、400字程度の日本語の作文を3分以内で書くこと。そして、それを短時間で覚え、スラスラ話すこと。普通に考えたら、日本人でもできないかもしれない。

日本人は驚くかもしれないが、中国人学生に「やり方」を教えたら、できない人はまずいない。ただ、普通は学校でも会社でも「やりかた」を教えないから、できないまま日本語学習歴を無駄に重ねる中国人学習者が多いだけの話だ。

「中国人には何を言っても無駄」

その考え方は間違っている。日本人に対していう言い方が彼らに通じないだけの話で、物分りが良いのは中国人のほうだ。そのことに薄々気づいている日本人は、簡単には不満の言葉を吐かない。方法を探ることが賢明だと分かっているからだ。

おっと、話が飛んでしまった。

話を戻すと、特訓の初日に「好きな季節は?」と聞くと、ほぼ100%の学生が「春です」など、簡単なひとことでしか答えられないが、五日間の特訓を経た学生はどんな質問に対しても、脳みそをフル回転させ、90秒程度でスラスラと答えることができるようになる。次回、特訓班を実施するときは、五日間すべて参加することを条件に、どの教師にも公開したいと思っている。なぜなら、ひとりでも多くの教師に、この指導法をマスターしてほしいからだ。

ただし、不安な点もある。

技術や知識は、身につけた人に「こころ」がない場合、かえって面倒なことになることが多い。「こころ」のない人が知恵や知識、技術を身につけて他人より秀でてしまったら、他人の足を引っ張り、心をつぶす「悪魔」になってしまうからだ。

その癖はなかなかなおらない。少なくとも、わたしにはその人を変える力がない。だから、そういうタイプの人は、申し訳ないが参加を控えて欲しい。

最後に、今回の特訓中、大連ラジオ番組「九州新発見」のパーソナリティ・林楽青先生が取材に来てくれた。10月9日の放送内容に、特訓班のことが紹介されている。http://blog.sina.com.cn/s/blog_628d20970100yhbp.html

わたしは、近い将来、全国各地で特訓班を実施したいと考えている。

なぜなら、中国全土にいる、苦労を苦労とも思わない「こころ」ある若者たちに、日中友好の架け橋の役割を本気で果たして欲しいと思うからだ。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2011年10月8日

 

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