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第十二回 「寒邪」に対抗!冬の養生

 

馬島由佳子=文・写真 m.Takako=イラスト

11月8日の立冬を迎え、本格的な冬がやって来ました。冬の主な気は「寒」。気温が急に下がったり、突然冷え込んだりすると毎年決まって風邪を引いたり、便がゆるくなったり、関節が痛んだりする方が多く見うけられます。それは、「寒」の気が発病因子となり、「寒邪」となって人体を侵すためです。今回は「冬の養生」について考えてみましょう。

「寒邪」は陰の邪!

冬が到来し、急激に気温が下がると体に寒さや冷えを感じます。また、雨にぬれたり、発汗後に風にあたって体が冷え温かさが失われたり、体の防寒や保温が足りないと、「寒邪」を受けて体内外に障害が現れます。体には体表(肌表)や臓器などを温める気、「陽気」があります。陰の邪である寒邪が体内に侵入すると陽気が傷つき、正常な体を温める作用が衰え、それが要因となって発病に至ります。

※ 寒邪の侵入によって体表(肌表)が傷ついた症状「外寒」と、体内の陽気機能が衰退したために起こる症状「内寒」があり、互いに作用します。

「寒邪」が人体に侵入したときの特徴

パパイヤ、クコ、アロエの薬膳スイーツ

① 陽気を損傷しやすい。 悪寒・発熱・頭痛・無汗など。寒邪は脾と胃を襲うことが多い。脾陽(脾の陽気)と腎陽(腎の陽気)を損傷すると、寒がり・手足の冷え・腹痛・水のような下痢や嘔吐、尿量過多などの症状が現れる

②  気・血の流れを滞らせ、痛みを引き起こす。  寒邪の凝滞性により気・血が正常な運行ができず、不通による痛みが生じる。

③  収縮や引きつりを起こす。 寒邪は皮膚や毛穴を収縮させるので、悪寒・無汗を引き起こし、経脈・筋に侵入すると手足の筋肉の引きつりや痛み、関節のこわばりや激しい冷痛、屈伸しにくいなどの症状が出る。

冬の養生法

黄耆(生薬)入り蜂蜜。気を補い肺を潤す
冬は自然界の草木は枯れ、花は落ち、動物は冬眠します。万物が静かに眠りにつき、取り入れたものやエネルギーを貯蔵するといったイメージです。体内においても陰陽代謝が緩慢な感覚です。冬の養生法を実践し、春の新生に向けて、精力を蓄え英気を養いましょう!

冬は日照時間が短く、朝晩の寒気が多いので、早く寝て、なるべく遅く起きましょう。体を温め陽気を養い、運動は簡単な散歩、登山、ゆったりとしたダンスなどをして毎日明るく楽しい気持ちで過ごしましょう。

五行学説では、冬は「腎」に当たるので、腎を養生することを心がけます。女性はとくに冬は脾、腎、肝血を保養することが大切です。中日友好医院中西医結合循環器内科主任医師の杜金行先生に、食事から摂取する際に効果的な食物を伺いました。

「体温を低下させないように、陽気を保つ温熱類の中で、もち米、桃、オレンジ、ナツメ、レイシ、リュウガン、ざくろ、パパイヤ、生姜、山椒、シソ、ウイキョウ、八角、酒、紅茶、鶏肉、羊肉などが日本人にお勧めです。料理名で言うならば、“当帰生姜羊肉湯”を召し上がってみて下さい」というアドバイスをいただきました。

 

“当帰生姜羊肉湯”のレシピ

材料:当帰15g、羊肉200g、生姜適量

作り方:羊肉をぶつ切り、または食べやすい1口サイズに切る。羊肉とスライスした当帰、生姜と水を鍋(できれば土鍋か砂鍋)に入れて2、3時間煮込む。味付けは塩、ごま油でお好みの味に調整して下さい。料理酒、クコ、ナツメ、長ネギを入れて煮込めばさらに保温効果が倍増です。

効能:当帰は、補血(血を補う)、活血(血の巡りを良くする)、調経止痛(生理痛をやわらげる)、潤燥滑腸(腸内を潤し、便通をスムーズにする)で、婦人系の病気に多く用いられます。羊肉は、温補気血(体を温め気・血を補う)で、腰痛や冷え性、虚弱の方に適しています。生姜は、解表散寒(発汗させ寒さを取り除く)、温中止嘔(胃を温め、胃の冷えによる嘔吐を止める)、温肺止咳(肺を温め咳を鎮める)

<取材を終えて>

当たり前のようですが、とにかく冬は体を温めることが一番です。とくに、腎は元気・エネルギーの源であるため、腎機能を高める養生が大切でしょう。

中国の足按摩に行くと必ず付いてくる「足湯」は10分ほどで体の芯から温まります。冷えによる関節痛や予防にも適しています。中国では症状別に足湯に用いる中薬があります。日本では、お気に入りの入浴剤を入れて「足湯」を試してみるのもいいですね。

「足湯」に用いる効能別の中薬

 

人民中国インターネット版 2011年11月18日

 

 

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