People's China
現在位置: 連載笈川講演マラソン

熱意には熱意で~広州講演(一)

ジャスロン代表 笈川幸司

老若男女を問わず、夏になるときれいになる人が急に増える。

これは、北京で十年過ごしてきたわたしの率直な感想だ。冬はと言えば…。厚着するのが美徳とされているわけでもないだろうが、どこへ行っても「厚着しなさい、厚着しなさい」と注文が厳しい。12月の北京、ほとんどの人が着込みに着込んでマルマルしている。えっ、おしゃれに気をつかう人はいないかって?はっきり言うと、えーっと…。いや、はっきり言えない…。

さて、列車に揺られて22時間。いつもの如く、列車では眠れない。

早朝、広州駅到着のアナウンスが聞こえてきたので目をこすった。夏の北京を彷彿とさせる。多くの美しい人たちが街を闊歩していた。空は青く、両側を緑に囲まれ、道にはゴミひとつない。人々は気持ち良さそうに口を大きく開けて話している。その声はカラオケのエコーがかかっているかのようだ。よく聞いてみるとさっぱり意味がわからない。そう、広東語だった。

まず、広州初の講演地、広州大学。

日本語学科が新設されて間もないとのことだったが、みなやる気に満ちていた。「全教師、全学生を集めます」と気合いが入る宋暁真主任。連絡担当の徐淑丹先生は、講演が始まるまで毎日何度も連絡してくれた。

広州郊外に建てられた校舎は「大学城」の中にある。「大学城」には10以上の大学が集まって、ひとつの街になっている。大学のキャンパスだと言うのに、ジュエリー専門店で恋人に宝石を買う男子学生、日本よりも値が張るHäagen-Dazsのアイスを食べて歩く学生たちの姿があった。いやはや、北京とはちと様子が違う…。

ところで、講演では良い感触を得た。学生たちがわたしのことを事前に知っていてくれたことは想定外だった。河北講演会でもそうだったが、こんなに恵まれた環境で講演をしていると、あとで怖い気もする。

何を話しても食いついて来てくれるし、誰一人として席を立つものがいない。ひとつひとつの話を真剣に聞いてくれるし、こちらが恥ずかしくなるくらいに笑ってくれる。

確かに、そうなるよう日々努力と工夫を積み重ねてはいるが、早い段階で今の状態に持っていくことができたことは今後自信になると思う。

帰りのタクシーの中、携帯でネットにつないで『新浪微博』に入り、「ありがとう!終わりました!」と講演終了の報告をして学生たちとコメントのやりとりをするのが最近の日課になった。

次に、日本の皆さんは番禺という街をご存知だろうか。広州市のはずれにあり、今は番禺市ではなく広州市番禺区とされている自然豊かな美しい街だ。

夜7時半に始まる講演会。「広州を一緒に見てみましょう!」と、番禺職業技術学院の司先生が3時半にホテルに迎えにきてくれた。これまで、講演会にはタクシーに乗っていくこともあったが、先生が迎えにきてくれると経済的にも助かる。

ここ、中国での講演会は待遇がまちまちだ。今回は、陳要勤主任から「大先生がおいでくださった!」と派手な横断幕と花束を用意していただき、熱烈歓迎とばかりに盛り上げてくださった。ありがたい厚遇だった。

そしてもうひとつ。広州のはずれ、増城区にある広州珠江職業技術学院。

わたしはここで度肝を抜かれた。もし、興味があれば一度体験してみて欲しい。教室に入るなり、聞こえる、雷鳴の如く響き渡る学生たちの挨拶の声。何を言っても大きなリアクションが返ってくる。彼らのあまりの元気の良さに、わたしのほうが元気づけられた。

もともと、試験前で講演の受け入れを断ろうとしていた趙鉄柱主任は、わたしが電話をしたときに熱意を感じてくれて、急遽講演実施に踏み切ってくれたそうだ。

熱意には熱意で応える。

ここ中国では、けっして順風満帆ではないのだが、この十年間、常に感じているのは、外国人である私の「熱意」だけは、どんなときでも通じるということだ。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2011年12月14日

 

同コラムの最新記事
二ヶ月ぶりの舞台~上海講演
日中友好
北京特訓班
東京大学交流会
2011年最後の講演会~潮州講演