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東京大学交流会

ジャスロン代表 笈川幸司

2006年8月、北京大学日本語学科の学生たちを中心に、北京市では大学生日本語学習サークルKODAMAが誕生した。彼らは、2008年まで定期的に集っては、積極的にイベントを主催してきた。

2008年夏の北京五輪を境に、北京市の各大学では、独自のサークル活動が盛んになっていく。KODAMAのメンバーたちも、それぞれの大学で学生会を立ち上げ、各々のイベントを開催するようになった。

日本語学習サロン・ジャスロンは、年一回、その年に日本語イベント等で活躍した北京市内の学生たちを集め、表彰をしている。

去年は日本大使館広報文化センターをお借りし、今年は東京大学北京事務所の協力を仰いだ。ただ、今年の催しは例年のものとは随分違っていた。

通常、ジャスロン杯の表彰式といえば、会場に北京市内から70名ほどの日本語学科一、二年生を集め、彼らの前でその年に活躍した先輩たちが感想を述べたり、後輩たちを激励したり、アニメのアフレコやスピーチ、漫才やコントを披露したりする場となるのだが、今回だけは、宮内雄史所長に学生たちとの交流会をしていただけないものかと相談したところ、了承を得て実現したのだ。

交流会の内容については、わたしが感想を話すより、参加した中国人学生の本音をそのまま伝えたほうがよいと思い、本人に了承を得てここに掲載することとした。

交流会の感想文北京第二外国语学院三年 

赵薇雯

2012年1月5日東京大学北京事務所で行われた交流会に参加できたことを光栄に思います。宮内雄史所長は中日関係・日本文化の視点及び東京大学の紹介についていろいろ話してくださいました。この交流会を通して視野を広げさせてくださった気がします。大変勉強になりました。

まずは「もったいない文化」を紹介していただきました。ケニアの環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが日本を訪問したときに「もったいない」という言葉を知りました。「もったいない」は、自然や物に対する敬意、愛などをリスペクトする気持ちが込められている言葉だそうです。しかも、他の言語に該当する言葉が見つかりません。リデュース、リユース、リサイクル、リスペクトの概念を一語で表せる言葉が見つかりませんでした。そのため、マータイさんは国際女性地位委員会でそのまま「もったいない」と唱和するなど、世界へこの語を広めようとしました。

世界人口は1950年にはおよそ25億人で、20世紀末には60億人にまで急増しました。過去50年、世界人口の増加は二倍あまりに達しました。地球の大きさは変わっていないのに、人口の増加は著しいです。わたしたちは小さな地球で共存しなければなりません。そこで、この「もったいない」の概念が世界と繋がるのです。

そのほか、宮内所長は日本経済の話、東京大学の紹介などをしてくださいました。その中で、印象深かった面白い話がありました。

それは「2010年中国のGDPは日本を超えたが、一人当たりのGDPは日本の約10分の1だ」という話です。宮内所長はいろいろなデータを見せてくださいました。それは、中国人はけっして貧しくないことを裏付るデータでした。例えば、鉄鋼生産量において中国の粗鋼生産量は世界一です。車の販売台数について、中国新車販売は三年連続世界一です。はるかに日本を上回っています。携帯電話の普及率を見ると、携帯電話ユーザーは8億5900万件に達しました。子供からお年寄りまで町で携帯を扱っている姿を見かけます。そのほか肉類、たまご類、果物、魚などの一人当たりの消費量は日本を上回るケースもあります。では、ほんとうに実質的な豊かさ(経済力)が、日本人の10分の1なのでしょうか?交流会に参加したほとんどの学生が所長の話を聞いて思わず笑い出しました。しかし、私はとても笑えませんでした…。

世界一の鉄鋼生産は環境破壊を代価にしました。販売されている自動車の多くは日本メーカーです。携帯電話を見ると山寨手機(模倣携帯電話機)が多く使われています。セキュリティが保証されていないのが現実です。食品の安全問題は言うまでもありません。先進諸国と比べて品質はまだまだではないでしょうか。

ものはあるにはあるのですが、中身にも関心を払うべきです。それらのデータを見て、なおさら懸念せざるを得ませんでした。

改革開放政策以来、中国は著しく発展を遂げてきました。それとともに、いろいろな問題も起こりました。これからは私たち80後(1980年代生まれ)、90後(1990年代生まれ)の若者たちは、これまでの問題の解決の責任を担っていかなければなりません。日本のよい点を見習い、自国を良くするために。

最後に、このような素晴らしいお話をしてくださった宮内所長、そして、交流会を開いてくださった笈川幸司先生に感謝の意を表したいと思います。ほんとうに有難うございました。

《笈川幸司より》

今後も年一回、このような交流会を開くつもりです。もし交流会に興味のある方がいらっしゃいましたら、どうぞお声をかけてください。自由に見学していただきたく思います。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2012年1月2日

 

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