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2011年最後の講演会~潮州講演

ジャスロン代表 笈川幸司

2011年9月20日に大連を皮切りに、この三ヶ月間ほぼノンストップで20都市に足を伸ばしてきた。そして、今回は2011年内最後の講演地、潮州。そこは、広州から長距離バスに揺られて7時間、福建省にほど近い、人情味溢れた街だ。

毎度毎度、中国は広い中国は広いと記述しているので、もう飽きたぞ!とお嘆きの読者もいることだろう。しかし、説明させていただきたい。この3日間、同じ広東省内を移動してきたが、その旅程を日本でたとえるなら、大阪→東京→大阪→福岡をバスで移動しながら講演を行ってきたことになる。これなら、理解していただけるだろうか。

バスの中では、へとへとを通り越して体全体が液体になってしまうぐらいの感覚を味わった。そんなわたしを見た周りの方々はみなやさしかった。潮州にはおいしい料理がいっぱいある、潮州の女性はきれいでやさしい、女性らしさは日本以上だ、などなど。わたしを元気付けようと一生懸命話してくれた。そのやさしさに応えようと、心が反応した。まだまだ笑顔でいられる、大丈夫、大丈夫。

潮州バスターミナルに到着すると、王主任、謝副主任が出迎えてくれた。これは、地方都市独特なものだろうか、学校によってもてなしかたが全然違うので戸惑ってしまうが、このような温かいもてなしはありがたいことこの上ない。

車に乗るとすぐにホテルを探してチェックインし、まもなく日本語学科の先生方が待つレストランへ。ガチョウの料理が美味しい、野鳥の料理が美味しい、などと話をしているうちに時間が来てしまった。残った料理に後ろ髪を引かれ、遅刻しないよう講演会場へ向かった。

会場に到着し、もっとも印象に残ったのは元気いっぱいの男子学生たちだ。

はっきり言おう。生意気そうな冷たい表情でペラペラ日本語を話す学生よりも、会場全体に光を射すような性格の明るい学生のほうが何万倍もすきだ。

今回は、こちらから元気を出し、元気をふりしぼる必要はなかった。こういうときに無理して大声でやっても逆効果だということは経験上、体が覚えている。

さて、最後の講演は、毎回終るたびに数名の先生方から言われるような、「鬼気迫る感じ」はなかったと自覚する。何百人もの学生を前にしたときは、会場全員を巻き込こもうと意気込み、鬼の形相になってしまうことがあるが、聴衆が100名以内だった場合、やさしい一面のみ見せるのはごく自然のことだと思う。とにかく、学生たちの笑顔を見ながらの講演は楽しいもの。これで、2011年の日程がすべて終ってしまうと考えるだけで寂しくなった。

講演が終わると、一時帰国中の妻から電話が入った。「3ヶ月間、お疲れさまでした」とのねぎらいの言葉。潮州に来る途中は確かに息絶え絶え、傍から見れば疲労困憊だったかもしれないが、実際に終ってしまえば、もう終ったのかと物足りなさだけが残る。それは、目標の100都市555大学訪問にはほど遠い、20都市100講演が終ったばかりだからなのか。

「目標が先にあるときには燃え尽き症候群に陥ることはないんだね!」

これは、苦笑いで放った妻の言葉だ。せっかく最後の3週間で講演の進め方がわかってきたときに休憩しなければならないなんて、もったいなくて仕方ないが、これもひとつの勉強なのだろう。再開は、来春3月あたりだろうか。

翌日、アモイに発つ朝、学院長の陳教授と日本語学科の王主任がホテルにきてくださった。朝食、昼食をともにし、潮州流のおもてなしを体感した。

「小さい街に来てくれてありがとう」とは常套句なのかもしれないが、とんでもない。今回、どの都市でも、前日には「明日の講演を楽しみにしている」と連絡をくれる学生がいた。行かなきゃ良かったと思う小都市はひとつもなかった。

ああ、時代は変わった。《新浪微博》でつぶやくと、学生たちはすぐにコメントをしてくれる。返信するのは大変だが、そうすることで、彼らがその日一日をいい気分で過ごせるのなら、こちらはいくらだって汗を流せる。

中国人学生たちを励ますために実施している日本語講演マラソン。

学生たちを励ますことがどういうことなのか、少しずつわかりかけてきた三ヶ月だった。冬休みに入ってしまい、いったん休憩するのは前記の通り惜しいのだが、来学期には更にパワーアップした姿を皆さんにお見せしたいと思う。乞うご期待!!

 

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2011年12月28日

 

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