満員御礼ありがとう~从化講演会
ジャスロン代表 笈川幸司
主任の陳姗姗先生とは夏から連絡をとってきた。
四ヶ月のときを経てようやく実現した从化講演会。当日、大学へ向かう車の中で陳先生は、「大きな会場が取れなかった」「二、三年のみが集まるので集客は望めない」などと申し訳なさそうに話していた。しかし、蓋を開けて見るとびっくり。二百人が入る会場には立ち見の学生のほうが多かった。陳先生曰く、「全員来ちゃいましたね」。
去年までの10年間、約70の大学を回ってきた。舞台経験十分と意気込んで臨んだ日本語講演マラソンは、出だしからコケてしまった。大連でコケて、ハルピンでは恐る恐る話をした。北京に戻るまでは誤魔化し誤魔化しやってきたが、地元清華大学では、学生たちを励ますどころか説教をしてしまった。

清華での講演後、ショックの色を隠すことができず、珍しく妻に尻を叩かれるはめに。それが良かったのか、その日の午後、北京旅遊学院での講演では、落ち着いた話し方に切り替え、悪い流れを断ち切ることができた。
それからは毎晩、綾小路きみまろさんのライブを見るようになった。話のプロのエキスを吸いたかったからだ。とにかく、講演を始めて2ヶ月は試行錯誤を繰り返し、自信あるフリだけをしてやり通した。
ところが、河北省講演会では変化が見られた。9月に講演を始めて、80大学を回ったころから、自然と思い通りにできるようになったのだ。
この日わたしは決めていた。会場に集まる学生たちを思い切り笑わそうと。ここの大学の名は、広東外語外貿大学南国商学院。民間大学だったからだ。
以前のわたしなら偏見を持って臨んでいたかもしれない。確かに、民間大学の日本語レベルはけっして高くないと思い込んでいた。ところが、講演マラソンを始めて全国各地を巡ってみて、教師が熱心な学校なら入学当初の点数が低くても、学生たちの日本語能力に影響がないこともわかった。南国商学院もそういう学校のひとつだ。
ここの教師の熱心さを、他の学校では見かけることができない。講演が終わった後、「冬休みには北京に行って笈川先生の特訓クラスに参加したい」と言い出す学生たちがいた。質問をしようと長い長い列をなす学生たちがいた。そういう学生たちを教えているのは、講演中、終始最前列に坐っていた日本語学科の教師全員だ。教師も学生も関係なく、わたしの仕事は、彼ら全員を笑わすことだった。
笑いは喜びだ。しかし、日本語学習のイメージは、どちらかと言うと暗いものらしい。先日、講演中にひとりの学生が述べた彼らの共通の認識は、「明るい英語とは違い、真面目で面白みのない人間たちが話す言葉」というショッキングなものだった。しかし、そう思っている彼らの認識を、清掃のおじさんが、アスファルトに貼ってある広告のシールを剥がすように、ひとつひとつ丁寧にやる、これがわたしの仕事だ。
広東省に来て、それがようやくできるようになってきた。
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笈川幸司 |
1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。 2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/ |
人民中国インターネット版 2011年12月20日