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第十五回 中医師を育成する中医薬大学

馬島由佳子=文・写真

中国では、中医学で診察する医師を"中医"と呼び、西洋医学で診察する医師"西医"と区別します。また「中医」でも「西医」でも医師免許を取得していれば「医師」として治療を施すことができます。

中医師になるための大学の大学名には「中医薬」とついています。中医薬大学ではどんなカリキュラムが組まれているのでしょうか。

北京中医薬大学

北京中医薬大学卒業を卒業し、現在は北京仁泰クリニックに勤務する何齐平・中医師は、同大学のカリキュラムを次のように説明します。

「日本の医学部は6年制ですが、中医薬大学は5年制です。2年生までに中医基礎理論、解剖学、経絡学、診断学、方剤学などを、3、4年生で内科、外科、皮膚科などの臨床科目を学びます。また、3年生の1年間は西洋医学の授業もあります。5年生になると1年間病院で研修をします。卒業しただけでは、中医師免許は与えらえず、さらに1年間病院で研修したあとに、中医師国家試験を受験し、合格すれば中医師として仕事ができます」

授業風景

また、1年生終了時に専門分野を決めるそうです。何医師は、鍼灸推拿(按摩)専門の中医師です。もちろん中薬も処方します。

その他、北京中医薬大学では、社会人のために、定期的に夜間と週末に学ぶ中医学講座、鍼灸講座、気功講座を開講しています。どれも人気の講座で、毎回、定員80人がすぐに埋まるそうです。私も今年の3~6月に、復習をかねて中医学講座に通学しました。10~60代の中医学に関心を持つ中国人と一緒に授業をうけましたが、みんな勉強熱心で、休み時間になると先生に質問するために、教壇の前に人垣ができます。講座終了時には終了証が授与されます。

社会人中医学講座修了証書

同大学の構内にある施設で特徴的なのは、中医薬博物館、医学書専門の売店、『頤馨本草薬膳餐庁』という立派な名前がついた薬膳レストランです。これらは学生でなくても利用できます。

ところで、筆者は現在、何齐平・中医師から推拿と鍼の治療を受けていて、ある病気が回復中です。以前には中薬を服用して完治した病気もあります。私にとって中医による治療は、「何千年も継承されてきた先人たちの膨大な治療経験や処方が裏付けとなり、良い結果がもたらされた」という実感があり、中医への信頼感は大きいです。この記事を連載した理由の一つも、まさにここにあります。

中国では、病院によっては外国人専用の国際医療窓口を設けているところや、主に日本人を対象にした病院に中医師が常駐して日本語対応を行っているところもあります。読者の皆さまも、旅行などで中国に行く機会があり、気になる症状があれば、中医師に相談してみてはいかがでしょうか。

何齐平中医師プロフィール

北京中医薬大学卒業後、北京按摩医院で中医師として勤務。その後、日本に渡り、東京大学老年看護研究室で蓐瘡(床擦れ)関係の勉強をし、中国整体の教師などをして5年間の東京滞在後、北京に戻り、現在は北京市仁泰クリニック、済安堂にて勤務。専門は頚椎病。仁泰クリニックhttp://www.rentaimedical.com/

何医師の診察日は金曜日のみ。

初診料600元、診察費600元

鍼350元、推拿は部位によって300~500元(2012年12月現在、1元=約13円)

 

 

馬島由佳子

静岡市出身。

外務省在職中に赴任先の北京で中国医学、特に中薬に魅了され、2001年帰国退職後、財団法人交流協会で働きながら東京・本郷にある北京中医薬大学日本校で学び、2008年に国際中医師の資格を取得した。

現在、『人民中国』インターネット部に勤務。

  

人民中国インターネット版 2012年12月28日

 

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