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チェン・ボーリンの魅力『変身超人』

文・写真=井上俊彦

ここ数年、興行収入急上昇の勢いは止まらず、ますます多くの作品が公開され、さまざまな話題が生まれている中国映画です。そこで、このコラムでは地元・北京の人々とともに映画館で作品を鑑賞し、新作や映画界の話題を紹介していきます。同時に、そこで見聞きしたものを通して、北京の人々の生活も感じ取っていければという姿勢で映画館通いをしていきますので、お付き合いいただければ幸いです。

ポスター

チェン・ボーリンが変身ヒーローに?!

『藍色夏恋』(2002)、『ブッダマウンテン』(2011)などで日本でもおなじみのチェン・ボーリンですが、最近は中国大陸部でも大いに人気があります。特に、ドラマ『イタズラな恋愛白書~In Time With You~』(我可能不会愛你/2011)で演じた李大仁役で「小清新」たちの心をとらえました。

その彼が主演するのが『那些年我們一起追的女孩』のギデンズ(九把刀)の原作を映画化した『変身超人』です。最初にポスターを見て「おいおいチェン・ボーリン、なんちゅー映画に出演しているんだい?」と思ったのですが、とても評価が高いようなので、恐る恐る見に行った次第です。その結果は……、確かに元祖変身もの世代の私ですが、まさかこの年齢になって変身ヒーローに感動するとは! ある意味うれしい驚きでした。

鉄男(チェン・ボーリン)はSUTYの変身ヒーローもの『変身超人FLY』の主人公。視聴率は低迷していますが、社長の強いプッシュで10年以上続く長寿番組となっています。ところが、留学から戻った社長の娘・盈盈(グォ・シュエフー)が社長に就任すると、低視聴率を理由にヒーローを交代させられます。窮地に陥った鉄男はエロ映画やショッピング・チャンネルに活路を見出そうとしますが、ヒーローしか演じてこなかった鉄男にとって、それは大きな試練でした。実は鉄男にはヒーローにこだわる大きな理由があったのです……。

自然な表情のまま笑わせ、泣かせる演技

テレビのヒーローもの制作現場を舞台にした笑いと涙の物語です。復活をかけて苦闘する主人公を演じるチェン・ボーリンの、変身ヒーロー“しかできない”役者ぶりは、最初は滑稽で、やがて涙を誘います。私の前方に座っていた若い女性2人は、前半は大いに笑い、後半では大いに鼻水をすすっていました。

美嘉歓楽影城の最寄り駅・中関村駅前の最近の様子

駅前ビルの地下を通って津楽匯ビルに行くことができる。足元にはこんな矢印も

それにしても、文芸映画やトレンディー・ドラマで活躍するイメージの強いチェン・ボーリンが演じる変身ヒーローのおとぼけぶりは、とても自然です。演技力を前面に出す俳優ではない気がしますが、確かな存在感はやはりしっかりした演技から生み出されているのだと、改めて感じました。

ところで、先ごろ日本に一時帰国した際に「最近、中国で人気の二枚目男優は誰?」と複数の方に質問されました。それで気づいたのですが、最近大陸部では台湾の男優の活躍が目に付きます。チェン・ボーリンのほか、ぱっと思いつくところでもラン・ジェンロン(藍正龍)がよく合作映画で主演していますし、トレンディー・ドラマではロイ・チウ(邱澤)、武侠ものではウォレス・フォ(霍建華)、タイムスリップものではニッキー・ウー(呉奇隆)などがヒーローを演じてそれぞれ人気です。また、『那些年我們一起追的女孩』のクー・チェンドン(柯震東)も最近注目を集めています。

ちょうど開催中の第3回北京国際映画祭の看板も見られた

エレベーター・ホールには公開間近となったヴィッキー・チャオ監督第1作『致我們終将逝去的青春(So Young)』の巨大なポスターも

そうそう、クー・チェンドンで思い出しましたが、この映画には彼のほか、たくさんの台湾スターが友情出演していますので、台湾エンタメ・ファンの方にはぜひゲスト探しも楽しんでほしいところです。ヴァネス・ウーの出演には「いいのか、イケメン・スターがそんなことして?」とちょっとびっくりしました。

 

【データ】

変身超人(Machi Action)

監督:チャン・シーリン(張時霖)

キャスト:リチェン・ボーリン(陳柏霖)、チウ・イエンシャン(邱彦翔)、グォ・シュエフー(郭雪芙)、チェン・ティンシュエン(陳庭萱)

時間・ジャンル: 94分/ドラマ・コメディー

公開日:2013年4月19日

シネコンのあるビルを含む一帯は中関村広場という巨大ショッピングモールになっている。“電脳街”のイメージが強い中関村だが、おしゃれなショップも多い

美嘉歓楽影城のゆったりしたロビー

美嘉歓楽影城

所在地:北京市海淀区中関村大街15号中関村広場購物中心津楽匯3階

電話:010-82674001

アクセス:地下鉄4号線中関村駅D口から東へ徒歩2分

 

 

プロフィール

1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。

1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。

現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。

 

人民中国インターネット版 2013年4月20日

 

 

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