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周恩来総理と中日関係(下) 生誕110周年にあたって

 

多くの難問を乗り越えて

 

田中首相が北京に到着した後も、すべての問題が一挙に解決したわけではなかった。対立は歴史問題と台湾問題に集中した。この2つの問題の解決にも、原則の堅持と政策の柔軟性を高度に統一させた優れた周総理の外交テクニックが再度発揮された。対立点をまとめてみると――

 

1、戦争責任の問題

 

日本側は最初、次のように提起した。「過去数十年の間、日中関係は不幸な経過をたどってまいりました。その間、わが国が中国国民に多大なご迷惑をおかけした(添了很大麻煩)ことについて、改めて深い反省の意を表するものであります」(歓迎宴での田中首相のスピーチ)。

 

これに対し周総理は「日本軍国主義が半世紀の長きにわたり中国を侵略し、数多くの中国人民が殺傷されました。それをただ、『添了很大麻煩』という当たり障りのない言葉で表現するのは、中国人民の強い反感を引き起こさずにはいられません。日本側が再考するよう求めます」と指摘した。

 

そして最終的に、中日共同声明の中での表現は、次のようになった。「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」

 

2、戦争状態の終結に関する問題

 

中国側は中日の国交が正常化された日から戦争状態の終結を宣言すると主張した。これは理の当然である。しかし日本側は「宣言」を「確認」に変えようとした。周総理は「このように書けば、サンフランシスコ(講和)条約の締結以後、中日の戦争状態はすでに終結したと見なされることになる。しかしわが国は、あの条約の締結国ではないので、こうした言い方には同意できない」と明確に指摘した。

 

最終的に共同声明では「日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する」と改められた。そして声明の前文には次の一句が加えられた。「戦争状態の終結と中日国交正常化という両国国民の願望の実現は、両国関係の歴史に新たな一頁を開くこととなろう」。このように「戦争状態」に替えて「不正常な状態」を用いることによって、「戦争状態」と「不正常な状態」を密切に結び付けたのである。

 

3、戦争賠償の問題

 

日本側は、高島益郎・外務省条約局長が外相会議で意外にも「蒋介石がすでに日台条約の中で賠償の請求権を放棄すると宣言しており、日中共同声明でこの問題を重ねて提起する必要はない」と発言した。

 

これに対し周総理は、首脳会議でとくにこうした主張に厳しく反駁した。「我々は賠償請求権を放棄しました。しかしあなた方の条約局長はそれを有難いと思わず、蒋介石がすでに賠償放棄を宣言したから、今回の共同声明で重ねて提起する必要はないと言う。これは中国に対する侮辱であり、我々は絶対に受け入れることはできない。蒋介石は賠償を放棄する権利がない。彼のやり方は、他人のお金を気前よくばらまくようなものだ」

 

最終的には田中首相が中国側の好意に感謝の意を表し、共同声明の本文に「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」と明確に書かれたのだった。

 

4、台湾問題

 

田中首相は中国側が提起した「国交回復三原則」を「十分に理解する」と表明したが、サンフランシスコ条約と日本が蒋介石と結んだ「日蒋条約」(日台条約)の束縛から抜け出すことができなかった。サンフランシスコ条約は、日本が台湾を放棄することを規定しただけで、台湾を中国に返還することには言及していない。最終的な解決方法は、三項の原則を別々に処理することとなった。

 

第1項、中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法政府であることを、そのまま共同声明の正文に書き入れた。

 

第2項、台湾の帰属問題に対しては、両方が別々に述べる方式が採用された。すなわち中国側は「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であること」を重ねて表明し、日本側は「この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と表明した。

 

その後、大平外相は記者会見で「カイロ宣言では台湾を中国に返還することが規定され、日本はカイロ宣言を受け継いだポツダム宣言を受諾した。ポツダム宣言の第8条は『カイロ宣言の条項は履行せらるべし』とある」と説明した。同時に大平外相は「日中国交正常化の結果として、台湾と日本の外交関係は維持することはできず、台湾の日本大使館も閉館しなければならない」と宣告した。

 

第3項、「日蒋条約」は非合法的であり、無効であり、廃止しなければならないことについても、大平外相が記者会見で「日中国交正常化の結果として、日台条約はすでに存続する意義を失い、終息を宣言する」と厳粛に発表した。こうして、外務大臣が台湾との条約廃止を宣言し、外交関係を断絶する「日本方式」が初めてつくられた。

 

最後の首脳会議で周総理は「あなた方は今回、信義を守り、両国の平和友好は良好なスタートを切りました。我々が再び国交を樹立するには、まず信義を重んじなければなりません。これがもっとも重要なことです。中国には『言必信 行必果』(言ったことは必ず実行する)という孔子の言葉があります。あなた方は今回、この精神を示したのです」と日本側を賞賛し、この6文字を紙に書いて田中首相に渡した。田中首相も「日本にも『信は万事の本』という諺があり、これが日中国交正常化の基礎でなければならない」と応えた。そしてこの諺を紙に書いて鄭重に周総理に渡し、約束を忠実に守る決意を表した。

 

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