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日中間の「パイプ」を育成 塚本慶一教授

 

北京語言大学で行われた日中同時通訳養成の集中講座に立つ日本杏林大学塚本慶一教授

「Aクラスの日中同時通訳者は日本と中国にはそれぞれ10人程度しかいない。将来、この分野では日本が中国から人を『輸入』するしかないだろう」と、日中同時通訳の第一人者、杏林大学の塚本慶一教授は言う。

「以前は、中国と日本の間では政治、経済の交流が中心だったが、いまは社会、医学、芸能、科学から原発まで、あらゆる分野に広がっている。だが、Aクラスの英語同時通訳者が日本に約200人いるのと比べ、日中間の『パイプ』はあまりにも細すぎる」。

同時通訳として30数年日中間のビジネス、政府間交渉などの最前線で活躍してきた塚本教授は、1947年に中国上海に生まれ、66年になってようやく医師の両親とともに日本に引き揚げた。そして、東京外国語大在学中に通訳の仕事を始め、試行錯誤を重ね技術を高めてきた。

「日本での中国語教育は初級レベル向けのものは増えてきたが、上級レベル向けはまだ少ない」、後継者の育成を自分の責務と感じる塚本教授は、80年代初頭にサイマル・アカデミーで、2007年に杏林大学で中国語通訳コースを立ち上げた。

「同時通訳者に必要なのは、両国の言葉だけではない。両国の文化に対する理解と経験が重要」なため、そのまま使える教科書がない。塚本教授は両国が発表した公式文書を使い、学生に常に本番を意識させ、訳の長さ、声の高さなど細かく指導する。

杏林大学修士課程の通訳コースは3期生を迎えたが、毎期10人ほどの学生のうち、日本人は1人から2人程度で、残りは中国からの留学生だという。

連休を利用し、客員教授として北京語言大学などで通訳講義も行っている塚本教授は、「通訳者は日本人であれ、中国人であれ、日中両国が共有する人材だ。将来は多くの中国人通訳者が日本で活躍する時代が来るかもしれない」と話している。(文/写真=王 征)

 

人民中国インターネット版 2011年6月2日

 

 

 

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