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歴史教科書を読破 稲葉雅人NTT中国総代表

 

自著を手にする稲葉雅人NTT中国総代表

「手を握る相手のことを知らないと商売になりません。中国の人のことをどれだけ知っているのかと自分たちに問いかけてみたところ、実はあまり知らないということが分かったのです」。

「いまの日本は内向きの傾向にあると言われていますが、中国が日本にとって最大の貿易相手国となった現在、変化が激しい中国をもっと知るべきだ」と、去年8月北京に赴任した日本電信電話株式会社(NTT)理事、中国総代表の稲葉雅人さんは言う。

稲葉さんが日本で中国のことをあまり知らないことに気がついたのは2005年、日本のリーダーを育てる目的で一流企業の幹部候補生を集めて開催される研修会「FORUM21」に参加した時だった。当時は小泉首相の靖国神社参拝などに中国が反応、日中関係が悪化し、「政冷経熱」と呼ばれていた。

どうすれば日本と中国の関係を良くできるかを研究テーマにした稲葉さんは、中国人のことを知ることがその第一歩だと考え、80年代中国留学で身につけた語学力を生かし、2006年、仲間とともに、中国と日本の中学校歴史教科書の比較に着手した。

1年間で参考書を含め200冊を読破し、仲間と議論を重ね、『日本と中国「歴史の接点」を考える』(角川学芸ブックス)にまとめた 。最も衝撃を受けったのは「南京虐殺事件」に関する記述だったという。「日本の教科書はわずか数行ですが、中国の教科書は2500字で、日本人の学生に手紙を書こうという練習問題もついている。両国の学生が話す機会があっても、議論にならないでしょう」。

現在、NTTグループは約40社が中国で業務を展開し、数千人の中国人社員を抱えている。「日本と中国のかかわりはこれからも増えていくでしょう。どちらかが正しいということではありません。自分のことだけではなく、周囲のことも知るべきです。日本の将来はここにあります」と語る稲葉さんは、いまも激務の合間を縫って中国の勉強会などに熱心に参加している。(文/写真=王征) 

 

人民中国インターネット版 2011年8月5日

 

 

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