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北京市日本語アフレコ大会~北京大学

ジャスロン代表 笈川幸司

2006年5月、北京大学で「第1回北京市日本語アフレコ大会」が開催されて以来、北京市の多くの大学でこの名のついたコンテストが行われるようになった。そして、その流れは北京市内に留まることなく、天津、大連、西安へと、規模も地域も拡大してゆき、今では中国全土で行われている。

今回、北京大学では約5年ぶり3回目の開催となったが、由緒あるこの大会には、現在日本の声優界で活躍している劉セイラさんも出場し、優勝したことがある。

ところで、なぜ5年ぶりに北京大学でコンテストが開催される運びとなったのかを説明しておこう。昨年11月に日本語講演マラソンの一環として実施した北京大学での講演では、北京大学二年生、中日交流協会の虞(※)会長がすべてを手配してくれた。わたしが北京大学を離れたのは2007年6月。現在、北京大学の在校生の中にわたしの教え子はいないが、彼の要請でアフレココンテストの開催に協力することとなった。

さて、今大会は、予選を勝ち抜いた15チームが決勝戦に進んだ。中には河北省、河南省、香港からの出場者もあり、全国大会と言っても過言ではないほどレベルの高いものだった。その中で、この大会を制したのは対外経済貿易大学1年生チーム。先々週のコンテストでは2位だったが、よりクオリティの高い大会でリベンジを果たした。2位は外交学院の1年生チーム。アフレココンテストはスピーチコンテストとは違い、日本語の実力よりも模倣能力と表現力によって評価される。日本語学習歴の短い1年生が今大会のように優勝することも珍しいことではない。

ニュースではまず取り上げられることはないだろうが、入賞こそできなかったものの、わたしの中で非常に印象に残ったチームをここで紹介したい。

まずは、北京第二外国語学院同時通訳クラス1年生チーム。作品名は「ロミオとジュリエット」。なぜ印象的だったかといえば、ロミオとジュリエットの対話中に挿入歌が流れるのだが、これを歌唱力抜群の男女二人の学生が感動的に歌い上げたからだ。これは、まったく新しい試みだった。

次に、北京大学二年生チーム。チームワークを重んじるのが日本の文化というなら、この日本語大会で彼らが優勝したとしてもおかしくはない。このチームの作品では叫ぶシーンが多かったが、普段の練習で同じように気合いを入れて叫んでいる姿を想像するだけで心が打たれる。

審査員としてこの大会に参加したが、他の審査員の皆さんにも、大会の流れだけで点数をつけるのではなく、練習中の様子を想像していただけたらと思う。わたしはこの2チームに満点をつけたが残念ながら6位入賞はならなかった。

今学期に開催された学生会による日本語コンテストはすべて終了した。以前は大きな団体がコンテストを主催し、学生たちは常に受身だったが、今では企画から大会実施まですべて学生が行う場合も少なくない。実際に学生が主催する大会は、日本大使館や大企業が行うように隅々まで行き届かないことは確かではある。しかし、学生たちにとっては、ものを考える訓練になる。そして、考えたことを行動に移す際、さまざまな障害に苛まれることによって、はじめて成長できるのだ。

教師が口を出し、無難に終わらせるよりも、学生たちにすべてを任せ、それを黙って見ていることが学校の中における大人の責任ではないだろうか。よほどひどい結果になったとしても、教師が頭をさげて済む問題なのだから。

笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。元衆議院議員公設秘書。元漫才師。

2001年に北京に来て、10年間清華大学、北京大学で教鞭を取る。10年間、中国人学生のため、朝6時に学生とのジョギングから始まり、夜中までスピーチ指導を無償で行い、自ら日本語コンテストを開催、中国全土の日本語学習者に学ぶ機会を提供している。また、社会貢献をすることで、日本大使館、日本国際交流基金、マスコミ各社、企業、日本語界から高い評価を得ている。2011年8月から2012年7月までの一年間、中国540大学で11万人の日本語学習者を相手に「日本語の発音、スピーチの秘訣」についての講演を実施する予定。「ジャスロン日语学习沙龙」のホームページ:http://neo-acg.org/supesite/

 

人民中国インターネット版 2012年5月

 

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