【貧困脱却 決着に加速】サンショウ栽培で農村発展

2019-08-08 10:07:09

長江南岸に位置する重慶市豊都県湛普鎮で6月中旬、見渡す限りのサンショウの木が豊かに実を結んだ。すがすがしい香りを放つその一粒一粒の「緑の真珠」により、現地の農民は貧困を脱却して豊かになる道を歩んでいる。

 

張吉勝さん(中央)の生活状況を尋ねる向海林さん(右から2人目)と冉海龍さん(右端)、張玉瓊さん(左端)ら(写真沈暁寧/人民中国)

 

最も困窮した家庭を再建

今年53歳になる張吉勝さんは湛普鎮白水社区の農民だ。以前は4人家族で、精神疾患で働けなくなった妻、90歳でなおも家事を切り盛りする母親、小学生の息子と暮らしていた。一家は張さんが毎年トウモロコシ栽培で稼ぐ2、3千元を頼りにして苦しい日々を過ごしていた。「あのころ家では米とトウモロコシしか食べられませんでした。家族が腹いっぱい食べられるようにするため、私はしばしば1食減らしました」と張さんは振り返る。2015年に母親が亡くなり、息子も精神疾患があると診断され、一連の重苦しい打撃で張さんはほとんど心が折れてしまった。「生活に何の見通しもありませんでした。家族全員で一緒に毒をあおり、死んで終わりにしようとまで思いました」

張さんが絶望していたころ、白水社区の駐村貧困救済作業チームの隊長である張玉瓊さん(48)が現れた。張隊長は14年に全国で始まった貧困脱却の難関攻略戦で、白水社区の駐村隊長に就任した。彼女は4人のスタッフを率い、1年がかりで担当区域内の900世帯余りを回り、各世帯の生活状況を逐一把握した。訪問の過程で彼女は張さんの苦境を知った。「張さんの家に着いてすぐにぼうぜんとしました。室内に家具がないだけでなく、建物も倒壊の恐れがあり、しかも精神疾患の患者が2人いました。社区全体で最も困窮している家庭でした」。張隊長は直ちにこの状況を冉海龍白水社区党総支部書記に報告した。彼らは一日も早く困難を乗り切るよう張さんを助けることを決めた。

冉書記は張さん一家のために最低生活保障をすぐに申請した。これにより、一家の一人一人が毎月180元の補助金を受け取れるようになった。その額は多いとはいえなかったが、張さんの生活の負担を部分的に軽くした。16年初め、冉書記は社区内で調整して土地を用意し、労力と資金を手配し、1カ月かけて張さんのために新しい家を建てた。張隊長と他の駐村隊員は、手分けして家具と生活用品を買った。「引っ越し当日、張さんはとても感動していました。彼は口下手で、ただしきりに『共産党は素晴らしい!』とだけ言っていました」。張隊長は当時を思い出して目を赤くした。

さらに冉書記は、張さんが経済的価値の高いサンショウを15ムー植えるのや、病気の妻のために毎月200元の重度身体障害者手当を申請するのを手伝った。また、農村の道路を清掃する月給1700元の仕事を張さんに割り振った。最低生活保障の月額が1人当たり350元に上がったのに伴い、張さん一家の昨年の収入は以前の十数倍に当たる3万8000元以上となった。冉書記のおかげで家庭内の経済状況が少しずつ立ち直って行くにつれて、張さんは次第に笑顔を浮かべるようになっていった。

今年1月、張隊長らの協力で、張さんは3万元のローンを組み、自分のサンショウ畑を拡充するために使った。湛普鎮の向海林鎮長(39)は次のように説明する。「15年から豊都県政府は幾つかの銀行と協力し、全県の貧困世帯に利子補給付きの少額ローンを実施し、彼らの事業の発展を助けています。この4年間で湛普鎮は計606万元を貸し付けました。ローンを借りた貧困大衆は元金を返済するだけでよく、利子は政府と銀行が完全に負担します。それだけでなく、どうやってローンを借りるのか、その資金をどう合理的に使うのかを、貧困救済幹部は貧困大衆にマンツーマンで教えなければいけません」

張さんはこの3万元で肥料と農薬を買い、働き手を雇い、自分のサンショウ栽培を徐々に軌道に乗せた。「年内に必ずローンを完済したい。政府に多くの利子を負担させてはいけませんから」と彼は話す。

「現在、張さん一家は貧困脱却を基本的に実現しました。これはまず党と国家の貧困救済政策が良かったことによります。次に、張さん個人の努力によります」と向鎮長は指摘する。張さんはこの点に触れると、少し感情を高ぶらせた。「今のような暮らしができるとは夢にも思いませんでした。党員幹部は私と何のつながりもありませんでしたが、肉親のように私の面倒を見てくれたのです!

今後どんな困難にぶつかっても、しっかり生活していきたいと思っています」

 

古タイヤを利用して花を育てている湛普鎮の村民(写真沈暁寧/人民中国) 

 

精神的にも豊かな生活を

14年に湛普鎮はサンショウ栽培を貧困救済産業と定め、15年に大規模栽培を始めました。今では鎮全体で計1万1128ムー(約740)のサンショウ畑が広がり、昨年の生産高は7000万元余りに達しました。この産業により、鎮全体の261の貧困世帯のうち155世帯が貧困脱却を実現しました。サンショウ栽培は習近平総書記の打ち出した『美しい山河は何物にも代え難い』というグリーン発展の理念に合致しており、三峡ダム地域の環境を守っただけでなく、貧困を脱却して豊かになるよう大衆を導いたということを実践が証明しています」。向鎮長は現在の職務に就いてまだ3カ月だが、現地の貧困救済の進展についてよく理解している。

現在、湛普鎮にはまだ36世帯の貧困家庭があり、計71人がいまだに貧困から脱却していない。向鎮長によると、彼らは主として病気で働けない人たちだ。これらの人々については最低生活保障政策を適用し、最終的な貧困脱却を援助できるという。「20年に湛普鎮全体の貧困脱却という目標を実現する自信があります」と向鎮長は語る。

期限通りにやり遂げる貧困脱却任務とともに、向鎮長はより長期的な計画も持っている。今年5月、彼の発案で、湛普鎮政府が農民の各世帯に無料でコウシンバラの苗10株を配布した。これまでは至る所に捨てていた空き容器にコウシンバラを植え、中庭に飾り付けるよう奨励した。「これは環境を美化し、片付けを習慣とするライフスタイルを育てるためです。農民は経済的に貧困を脱却するだけでなく、精神的にも貧困を脱却する必要があります。美しい生活環境を創造することは、人々の貧困脱却の願望と積極的な向上の原動力をかき立てるはずです」と向鎮長は説明する。

湛普鎮の農村では今、どの家も古い洗面器や廃タイヤにコウシンバラを植えている。間もなくこれらは色鮮やかな花を咲かせる。その時、コウシンバラとサンショウが咲き誇る山村が長江のほとりに生まれるだろう。(沈暁寧=文

 

人民中国インターネット版 201987

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