PART6 映画で現代中国への興味増

2021-02-24 13:51:01

春秋戦国時代末期を舞台にした映画『キングダム』が2019年に実写邦画1位となり、昨年末に公開された『新解釈三国志』も好評だ。中国の歴史を題材にした映画、特に三国時代を描いた映画は日本人に愛され続けている。中国映画と聞いて多くの人々がまず頭に浮かべるのが、呉宇森(ジョンウー)監督の『レッドクリフ』などの歴史映画だろう。だが最近ではSNSの発達に伴い、現代を舞台にした中国映画も徐々に頭角を現している。

文化のルーツに興味

中日合作映画『徐福~永遠の命を探して~』のプロデューサー太代眞裕さんは、日本人が中国の歴史を題材にした映画が好きな理由を次のように分析する。「中国には悠久の歴史と広大な土地があり、想像できる余地がとても大きいため、日本人は古代中国にロマンチックな憧れを託すのです。また、日本の多くの文化は中国から来ていて、自国の文化のルーツを探る中で知らぬ間に古代中国に興味を持つのです。実際、私が映画『徐福』の製作に携わったきっかけもそうでした」

もともと始皇帝や三国時代に興味があった太代さんは、関連書籍を読む中で徐福を知り、彼に興味が湧いた。「徐福は日中交流の橋渡しの先駆けで、中国の文化を日本にもたらし、日本文化のルーツの一つともいえます。映画を通して、たくさんの若者に徐福を知ってもらいたいです」

 

アニメで今の中国を知る

中国の歴史を題材にした映画には一定の固定ファンの変わらない熱意があり、昨年の日本の映画市場では新たな傾向が生まれた。昨年11月7日に中国アニメ映画『羅小黒戦記』の日本語吹き替え(8)版が上映され、日本で大ベストセラーになった漫画のアニメ映画『鬼滅の刃 無限列車編』の上映期間中に4億3465万円の興行成績、27万6000人の観客動員数を記録した(昨年1220日時点)。

このような好成績の背景には、『羅小黒戦記』の口コミがSNSで広がったという理由もある。同映画は19年9月に日本に初上陸し、池袋の映画館1館で10日間の限定上映が行われ、日本のアニメ業界の注目を集め、有名なアニメプロデューサーや監督が何度も見に訪れ、ツイッターで宣伝された。SNSの宣伝によって同映画は大量のファンを獲得した。上映から3日後で、10日間限定上映の映画チケットは完売した。ファンの強い要望の下、同映画の上映期間は延長され続け、上映館も全国各地に広がり、配給(9)会社のチームジョイはアニメ制作会社アニプレックスと日本語吹き替え版の制作を決定した。

1911月の字幕スーパーの段階ですでに見ています。当時、ツイッターでフォロワーがすごくいいと言っていたので興味が湧いたからです。今回日本語吹き替え版が出て、羅小黒を知るネットユーザーがもっと増えたのがとてもうれしいです」。日本の『羅小黒戦記』ファンの「音ちゃん」は、映画の評判が高く興行成績が良い理由は、中国色の強さが花を添えていると考える。「特に印象的なシーンは、羅小黒が妖精に誘拐されて、地下鉄の乗客たちが妖精のことを人さらいだと思って取り囲んで問いただすところでした。中国人の性格がよく描かれていて、面白いなあと思いました。それから、アジアの大都市って独特の町並みや建物などの細かいところが違っても、都市計画などの大まかなところに似ている部分が多いので、既視感から観客に親近感を抱かせ、作品に入っていきやすいんだとも思います」

『羅小黒戦記』の配給を担当するチームジョイ事業企画部部長の楊倩敏さんは次のように指摘する。「映画の中の中国要素は日本の観客に新鮮な体験を与え、現代中国を知る一つのきっかけとなりました」。そしてファンのツイッターのコメントを取り上げてこう説明した。「羅小黒のおかげで、中国語を勉強したいと思う人、より多くの中国アニメに興味を持ち、中国のアニメ制作レベルに対する認識を改めたという人も少なくありません」

共感を呼ぶ社会問題

この外、中国映画と映画関係者に対する日本人の認識を変えた作品がある。昨年10月に上映された『薬の神じゃない!』だ。上映期間は長くなかったが、Yahoo!映画評価ランキング1位、フィルマークスの初日満足度ランキング2位という好成績を収め、評価も高い。「最後は泣いてしまった」「法と人情、どちらが正しいのか。観た後にいろいろと考えが止まらなくなる傑作映画だった」というレビューも多い。

中国の社会問題を反映した映画はなぜ日本人から好評を得たのだろう。同映画の字幕翻訳を担当した水野衛子さんは次のような考えを述べる。「まず、映画の上映が新型コロナウイルス感染症の時期とたまたま重なったからです。新型コロナは健康や医療の問題がある日突然降り掛かった災いだと意識させ、映画の中の人物と気持ちが重なったのです。次に、日本にも医療費高騰という社会現象があり、さらに新型コロナウイルスワクチンの分配方法など現実的な問題も加わったため、映画で描かれる中国の社会問題は日本の観客にとってもはや他人事ではなく同様に直面している課題となり、参考する価値があったからです。三つ目は映画の構成の絶妙さによるところが大きく、シリアスな社会問題に焦点を当てながら、コメディータッチで描かれたのが観客にとても受け入れやすかったからです。観客を楽しませた後に重い内容がじわじわときて、深く考えさせられました」

昨年中国で大ヒットしたサスペンスドラマ『隠秘的角落』は今年日本で配信される。今まで中国時代劇の輸入が多かったことを考えると、これも新たな傾向だ。水野さんが取材の最後に、「これからはもともと興味があった中国の時代劇のドラマや映画だけではなく、質が良く共感しやすいものや、中国の現代社会や一般人の生活を描いた作品が日本でより注目され、評価されていくでしょう」と語った現象がすでに日本で起こり始めている。(王朝陽=文)

人民中国インターネット版 20212

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