PART2 高齢社会の到来に向け準備
2021-12-23 10:39:49
陳言=文
上海市中心部の静安区の住宅地にある老人ホームはベッド数が50床あり、夜になるとお年寄りの多くは子どもの家に戻るが、子どもが近くに住んでいない十数人はここに泊まる。
21世紀に入って、中国の大都市の高齢者介護問題はますます注目されるようになった。かつて自転車が道路を埋め尽くしていた光景はいつの間にか消え、さまざまな自動車が街中を走っている。路地には楽しげに遊ぶ子どもより、世間話や日なたぼっこに興じるお年寄りの方がはるかに多い。中国は次第に高齢社会へ移行している。ここ数年の変化を簡単に振り返っただけで、人々は中国における高齢化が予想以上に速いものだと思うだろう。
「50床は明らかに足りません。社区(コミュニティー)内の他の住宅を高齢者向けに改造するか、現在の部屋の面積とベッド数を拡大することを考えています」と老人ホームの責任者は語った。
今後5年で高齢者3億人
中国では、60歳以上の人を高齢者と定義することが多い。「中国統計年鑑」が年齢別の人口統計において、65歳以上の人口を統計したところ、2019年の65歳以上の人口は1億7603万人で、総人口に対する比率は12・6%だった。60歳以上を高齢者とすれば、今年の中国の高齢者人口は2億人以上になり、人口の長期的推移から見れば、25年に3億人に達する見込みだ。今年から25年までの5年間はちょうど、国民経済・社会発展の第14次五カ年(「十四・五」)計画の期間だ。
2億人余りという数字はほぼ日本の総人口の2倍だ。欧州と比べると、8300万人の人口を持つドイツは欧州の人口大国だが、中国の高齢者数はその総人口の2倍以上だ。4年後の25年になると、中国の60歳以上の高齢者数は日本の総人口の約2・5倍、またはドイツの総人口の3倍以上になる。こうした数字から中国における高齢化の深刻さがうかがえる。
中国が「十四・五」計画を策定する際に非常に重視した数字は、毎年4800万~4900万人増加する高齢者の数だった。この数はスペインまたはコロンビアの人口規模に匹敵する。このようなすう勢は止まることはなく、毎年このペースで進んでいる。
中国の高齢化問題は、ある国や地域で起きる社会の変化とは異なり、規模が非常に大きく、スピードが非常に速い。高齢者を敬い子どもを大切にする数千年の伝統がある中国だが、これほど多くの高齢者が短期間内に急増するのを経験したことがない。高齢者介護の問題をそれぞれの家庭に自力で解決させるわけにはいかず、中国の社会制度や伝統的な考え方はわずか5年間で、深刻化し続ける高齢化問題の対応に備える基礎を打ち立て、独自の解決の道を歩む必要がある。
家庭負担どう減らす?
欧米や日本などは経済が高度に成長した後、高齢化問題が追って現れた。それらの国々の高齢化問題の解決も難しいが、高齢化の進展ペースは今の中国ほどではないし、規模の桁が違う。
中国の高齢化のもう一つの特徴は、「未富先老(まだ富んでいないのに先に年を取ってしまった)」だ。経済建設は現段階で、大量の投資を必要としている。国民の収入を増やして消費をけん引することは、国が収入配分において考慮しなければならない問題だ。また、中国の高齢化は始まったばかりの段階であるため、関連費用は政府の支出においてそれほど多くない。
GDPに対する年金給付支出の比率を見ると、19年のイタリアは16・2%、フランスは13・9%、日本は9・4%だった一方、中国は5・3%にとどまっていた。これは中国の老後の生活費の多くが個人や家庭が負担することを意味している。
中国の一般家庭はそれを負担できるほどに豊かになっているだろうか。合計特殊出生率の低下が続いているすう勢から見ると、現在の中国の中年以上はほとんど自分の両親を扶養することができ、兄弟姉妹が共に両親の世話をする(2)ことが一般的だ。一方、45歳以下はほとんど一人っ子で、1人で両親の世話をすることがさらに多い。結婚後すぐに、夫婦2人で4人の親を介護することを考えなければならない。人数や収入などの面から考えると、今の中国の中年層にとって親世代の介護は多くの問題があるようだ。
高齢化対応の政策目標
「十四・五」計画期に入る前、中国はすでに高齢化問題について政策の面でさまざまな議論を行ってきた。たとえば、昨年10月に行われた中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議(第19期五中全会)で、高齢化に積極的に対応するという国家戦略が打ち出された。一般の中国人も、そこから国家と中国共産党が高齢化を重視していることを感じ取った。重く見られていたから、高齢化に対する政策は国家戦略のレベルに格上げされた。
中国社会科学院副院長で人口問題の専門家である蔡昉氏は高齢化について緊張感を持っている。中国メディアの取材時、同氏は「『十四・五』計画期は高齢化に対応する最も肝心な時期だ」と指摘した。中国の高齢化の進展に伴い、労働参加率や人的資本、消費力が逓減する現象が現れ、経済成長や国家全体の高齢者介護能力に影響をもたらす恐れがあり、国は速やかに新しい対策を打ち出すべきだと同氏は考える。
発表された「十四・五」計画を見ると、高齢化の積極的な対応は出産・育児政策、定年退職制度、教育・訓練体制、社会養老保険モデル、収入配分構造、高齢者介護サービス産業の発展など多岐にわたっている。
高齢者介護産業の発展期へ
中国の高齢化の規模の大きさは関連産業の巨大なビジネスチャンスを意味している。社会的ニーズが拡大する中、国家の政策面の関与や資金面の支援があれば、企業は当然関連する投資を行う。
南京市郊外の溧水区で、数万人収容できる高齢者介護コミュニティーが建設中だ。自立できるお年寄りに集い・通いの場を提供し、身体機能の向上を図る上で、溧水区は高齢者介護産業と高齢者介護サービス産業が共に発展する新しい体制づくりに取り組んでいる。
外資系企業も意欲的に中国の高齢者介護事業に参加している。日本の大手IT企業のNECと日立は中国で高齢者介護に向けたITプラットフォームを打ち出すとともに、地方政府と協力し、高齢者介護事業の技術的進歩を促している。
高齢者が3億人になる25年に向けて、中国は前もって布石を打ち、「十四・五」計画によって時宜にかなった対策を打ち出した。高齢者介護は新しい投資分野になりつつあり、今後も大きな可能性があるだろう。
浙江省湖州市の介護施設で楽しく暮らしている戴鳳宝さん(99、右から2人目)。同施設には平均年齢81歳の高齢者 108人が入居しており、行き届いた介護を受けている。このような施設は中国の各地で増えている(新華社)
医療と介護の統合は現在中国が普及を模索している介護サービスのモデルだ。写真は河北省唐山市の安馨医療介護荘園でAI搭載設備でリハビリを行う高齢者(新華社)
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