PART1 中国の責任と貢献に注目

2021-12-23 13:35:32

段非平=文

「人々はこれまで、経済発展と環境保護の間で取捨選択が必要だと考えましたが、子孫のために私たちの世代は必ずより果敢な行動で環境配慮型への転換を進めなければいけません。CO2排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの実現はもはや選択項目ではなく、必須項目です」。ボアオ・アジアフォーラム2021年年次総会で、フォーラム理事長で前国連事務総長の潘基文氏はこう呼び掛けた。

人類の将来の発展に関わるこの問題に向き合い、中国はすでに「30年までにCO2排出量ピークアウトを実現」「60年までにカーボンニュートラルを実現」という答えを出している。

四川省と雲南省をまたぐ金沙江流域に建設された白鶴灘水力発電所。本格稼働すれば、 総発電量で三峡ダムに次ぐ世界第2位の水力発電所になる (cnsphoto

 

最短期間で世界最大の排出削減

CO2排出に関して中国が打ち出したこの二つの公約「3060」は、世界の注目を集め、国際社会の熱烈な反響を呼んだ。ドイツのニュークライメート研究所の創設者ニクラス・ヘーネ氏は「排出削減量と実際の影響でいえば、中国の公約は過去10年間で最大の気候関連ニュースです」と指摘した。国連気候サミットのジョン・マートン英国特使は、中国の公約によって世界は「災害のような気候変動」を避けられると述べた。彼は同時に、中国につき従って排出量を削減するよう他の国々に呼び掛けた。

英ケンブリッジ計量経済学会の予測によると、中国のこの公約は今世紀の地球の気温上昇を0・25度抑え、世界のカーボンニュートラル実現を5〜10年早めると考えられる。世界自然保護基金(WWF)世界気候・エネルギー部門リーダーのマヌエル・プルガル・ビダル氏は「中国の公約は世界全体の局面を変えるでしょう。世界で排出削減が大きな溝に直面し、気候ガバナンス(3)が欠けている正念場で、中国が公表した新しい目標は非常に重要で積極的なシグナルを発しており、気候変動への対応における中国の国際的指導力を体現しています。中国の行動は世界各国、特に主な排出大国がより断固とした行動を取るよう促すでしょう」と述べた。 しかし、この目標実現のために中国は非常に大きな試練に直面する。第一に、CO2排出量ピークアウトを実現した国はいずれも工業化と都市化のプロセスを終えているが、中国は依然として工業化と都市化の中後期にあり、エネルギー需要は旺盛で、エネルギー総量の抑制と全面的な排出削減の任務は重く、前途は遠い。第二に、欧州連合(EU)と米国はCO2排出量ピークアウトからカーボンニュートラルまでの過渡期を5070年としているが、中国の過渡期はわずか30年で、しかも排出量のピーク値はほぼ米欧の合計に相当する。これは中国が世界最大の排出量削減を達成し、かつ歴史的に最も短期間でCO2排出量ピークアウトからカーボンニュートラルを実現することを意味する。中国の公約は自らプレッシャーをかけ、自ら革新を行った結果であり、国情と能力に基づいて打ち出した最大の努力だといえる。 エネルギー分野の著名なコンサルタント会社ウッドマッケンジーでアジア太平洋地域副責任者を務めるギャビン・トンプソン氏は次のように指摘する。「気候変動に関してこれほど壮大な目標を達成できる国が世界にあるとすれば、それは中国だけです。この目標の課題は非常に大きいですが、中国には国による効果的で力強い支援があります。過去40年間の経済のモデルチェンジと同様に、将来の40年間でも見事な排出のモデルチェンジを進められます」

今年7月に開かれたエコ文明貴陽国際フォーラムで、中国共産党中央政治局常務委員、全国人民代表大会(全人代)常務委員会委員長の栗戦書氏は再び中国の決意と自信を次のように表明した。「CO2排出量の削減、気候変動への対応は他人から求められていることではなく、私たち自身がやろうとしていることです。CO2排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの目標実現は確かに容易ではありませんが、世界の大家族の一員として、中国は責任ある大国が担うべき責任を終始一貫して引き受けています。中国は常に約束を重んじており、私たちは必ず既定の目標を全面的に達成し、生態環境の保護と気候変動への対応にいっそう貢献します」

 

ゴビ砂漠でキラキラと輝くのは、甘粛省敦煌市にある中国初の100㍋㍗級溶融塩タワー型太陽熱発電所「スーパーミラー発電所」だ。発電所内に設置された12000基以上のヘリオスタット(太陽追尾式ミラー)の総反射面積は140万平方㍍を超え、年間発電量は39000万㌔㍗時に達すると予想され、年間でCO2排出量を35万㌧削減できる(新華社)

 

排出権取引の全国市場を創設

厳かな公約に合わせて明確で重大な布石が敷かれている。今年の政府活動報告でも、「十四・五」計画と2035年までの長期目標綱要でも、また国家発展・改革委員会が作成した「2030年までのCO2排出量ピークアウト行動プラン」でも、生態環境部(日本の省に相当)が作成した「国家気候変動適応戦略2035」でも、「3060」目標を実現するために方向性を明確化し、具体的な制度づくりを進めた。

非化石エネルギーの開発と利用はエネルギーのグリーン化と低炭素化を推し進める主な道筋だ。中国はすでに世界最大のクリーンエネルギーシステムを完成させ、水力、風力、太陽光などのクリーンエネルギー(5)の重要性は日増しに高まっている。

昨年7月、中国が自主開発した初の10㍋㍗海上風力発電機が福建省福清で発電と送電に成功した。推計によると、発電ユニット1基が毎年送り出す電力は3人家族で2万世帯の需要を満たし、石炭消費を1万2800㌧、CO2排出量を3万3500㌧削減できる。今年6月28日、四川省寧南県と雲南省巧家県の境界の金沙江で、白鶴灘水力発電所の最初の発電ユニットが正式に稼働した。この発電所は世界で建設中の水力発電所のうち最大級の規模で、技術的難易度が最も高いプロジェクトだ。来年7月に全ての発電ユニットが稼働すると、CO2排出量を毎年5160万㌧削減でき、長江経済ベルトのグリーン発展に輝きを添える。

さまざまな排出削減措置のほか、中国は市場メカニズムを通じて企業が速やかに環境配慮型への転換を実現するよう推進し、社会全体の低炭素化への転換に堅固な基礎を打ち固めた。今年7月16日、全国CO2排出権取引市場が正式に始動した。これはグリーン化と低炭素化を推進する制度刷新というだけでなく、「3060」目標を実現する重要な政策手段でもある。

今年は全国CO2排出権取引市場の最初の契約履行周期で、第1陣に組み入れられた2000社余りの企業はいずれも電力事業者だ。推計では、これらの企業のCO2排出量は40億㌧以上だ。これは中国の排出権取引市場が始動と同時に、温室効果ガス排出量をカバーする世界最大規模の市場になったことを意味する。中国は11年から北京、天津、上海などで排出権取引の地方試行事業を展開し、割り当ての成約量は今年6月までにCO2換算計4億8000万㌧になった。全国市場の始動後、地方市場は徐々に全国市場に移行し、カバーする業界も電力から鉄鋼、化学工業、建材などの重点排出業界まで拡大していく。

産業構造とエネルギー構造の最適化から新エネルギーの強力な発展まで、環境に配慮した技術革新の促進から省エネ・環境保護産業の育成・発展まで、全国的なエネルギー使用権、CO2排出権取引市場の始動からグリーンファイナンス実施による低炭素発展の支援まで、どの措置も「3060」目標を予定通り実現することを中心に進められ、有言実行の明確なシグナルを発している。

 

河北省豊寧満族自治県の千松場で、植林隊員はラバを率いて苗木を運ぶ。植林や森林保護という持ち場に尽くす「緑の使者」は、中国の大地に緑の種をまく(新華社)

 

植樹・造林でも大きな成果

「3060」目標実現には、汚染削減や排出削減という「引き算」だけでなく、生態管理の積極的な展開という「足し算」もしっかり行わなければならない。植樹・造林、荒野の改善、水と土壌の保護などの行動を通じ、森林、耕作地、湿地の重要な役割を発揮させ、天然のCO2吸収源を増やさなければならない。 「30年に中国の森林蓄積量は05年との比較で60億立方㍍増加する」。昨年12月に開かれた気候野心サミットで、習近平国家主席はこの公約を打ち出し、15年に中国が提出していた45億立方㍍増加の目標を更新した。何建坤・国家気候変動専門家委員会副主任は「この行動はCO2吸収源を大幅に増やし、CO2の実質的な排出を減らすだけでなく、生態環境の保護、生物多様性の増強、気候変動への対応という協力とウインウインの局面の構築を推進し、世界的な範囲で模範と先導の役割を果たすでしょう」と論評した。

中国が植樹・造林分野で行ってきた努力と獲得した成果は衆目の一致するところだ。「十三・五」計画期間中(2016~20年)、中国は計5億4500万ムー(1ムーは約0・067㌶)の造林を終え、森林被覆率(6)は2304%まで上がり、森林蓄積量は175億立方㍍を超えた。全国民義務植樹では、延べ28億人が計116億株を植えた。国連食糧農業機関(FAO)が公表した「世界森林資源評価2020」は、中国の年平均の森林資源純増量は世界一で、他国を大きく上回っていると指摘し、森林保護と植樹・造林の分野で中国の貢献を十分に認めた。

今年6月18日、国務院弁公庁は「科学的緑化に関する指導意見」を公表し、今後の国土緑化行動の科学的な展開と美しい中国の建設のための方向性を指し示した。劉東生・国家林業草原局副局長は「将来、中国が緑化プロジェクトを実施する鍵は科学です。緑化事業は過去の数量重視から数と質の重視に転換します。過去の単純な植樹と緑地増加を生態システムの機能を高める緑化に広げ、『グリーン中国』の青写真をしっかり描き出さなければなりません」と説明した。

「グリーン発展の推進」はすでに「十四・五」計画の重要な内容の一つになっている。将来、中国は国土の緑化と気候変動への対応を有機的に結び付け、国家の自主的な貢献の公約を履行し、世界のグリーン化と低炭素化にいっそう大きく貢献するだろう。

実情に合わせ行動

「3060」目標が打ち出された後、各地の政府は積極的に呼応し、それぞれ現地の行動計画を策定し、排出削減と目標達成のスケジュールとロードマップを相次いで公表した。

「石炭大省」の山西省は環境に配慮したスマート採掘の推進に力を注ぎ、産業集中度をより高め、石炭ガス資源の開発と利用の強化を通じ、クリーンエネルギーの比重を効果的に高めた。山東省は水素エネルギー産業の発展を加速し、全力で「中国水素バレー」を構築し、30年に水素エネルギー産業の飛躍的発展を実現するよう努力している。サービス業を中心とする上海は、低炭素分野の先端技術研究に力を入れ、汚染物質やCO2の削減技術の普及と応用を速め、全国目標より5年早い25年までにCO2排出量ピークアウトを実現するよう努力しなければならないと打ち出した。

董戦峰・生態環境部環境計画院管理・政策研究所副所長は次のように述べる。「各地が行動計画を策定するときには、必ず現地事情に合った措置を講じ、発展の実情に合致させなければならず、一律に処理してはいけません。経済発展が進んだ東部の省・直轄市、豊富な再生可能エネルギーを持つ西南部の省・直轄市は、『十四・五』計画期間中に前倒しでCO2排出量ピークアウトを実現する条件を備えています。一方、従来型のエネルギー消費大省は着実に取り組むべきで、決して焦って効果を求めてはいけません」

中国は国土が広大で、各省の経済発展レベルと産業配置には差異が存在するため、CO2排出量ピークアウトの時期とピーク値もそれぞれ異なる。李高・生態環境部気候変動対応司司長はこれについて次のように説明する。中国の「3060」事業は「全国一体となった行動」という思考を貫き、各地域の戦略的位置付け、発展水準、資源状況、ならびに各省の温室効果ガス排出管理の責任、潜在力、能力などに依拠し、地域と業界がCO2排出量ピークアウトを実現するための段階ごとの目標を統一的に設定しなければならない。

中国は現在、最大の決意と最強の自信でエコファースト、グリーン発展の道を闊歩している。中国がいっそう豊かな発展の成果によって人類運命共同体構築に模範を示すことを人々が信じる理由はここにある。

 

豆知識

 

CO2排出量ピークアウト ある地域や業界の年間の CO2排出量が過去最高に達した後、減少に転じること。カーボンニュートラル ある地域で一定期間内に人類の活動によって直接的、間接的に排出されたCO2の総量と、植樹・造林や炭素固定などで吸収されたCO2の総量を相殺し、バランスを取った状態。排出権取引 個々の企業などに割り当てられた温室効果ガス排出枠の売買。例えば、ある企業の排出枠が足りない場合、排出枠の余ったほかの企業から購入できる。こうすることで地域全体の排出量を抑えながら、企業の技術向上や省エネ、排出削減を奨励できる。 

 

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