PART3 日常の中の環境保全活動

2021-12-23 14:07:38

李家祺=文

CO2排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの実現には、国民一人一人の行動が必要だ。ここ数年、中国ではプラスチック削減やごみ分別(9)、スマートムーブ、植樹によるCO2削減などエコな生活スタイルが新たな流行となり、低炭素環境保護理念が徐々に浸透しつつある。そこには、どんな秘密があるのだろうか。

AIで「移動」を「エコ」に

「掌上公交(マイバス)」のアプリケーション(アプリ)の画面は、あと10分で39番バスが到着すると表示した――。浙江省湖州市に住む潘斉兵さんは、バッグを背負って近くのバス停に行くと、ほどなくバスがやって来た。

出張の多い潘さんにとって、高速鉄道に乗るのは日常茶飯事だ。だが、これまでと違うのは、今はタクシーではなくバスで高速鉄道駅に行くようになったことだ。「以前はタクシーを呼んでいたけど、『定時運行エコバス』が登場してからは、時間通りにバスが来るし、バス専用道路なので渋滞も少なく、20分ちょっとで鉄道駅に着けます。スマートフォン(スマホ)のアプリでバスの位置がリアルタイムで確認でき、とても便利です」と潘さんは話す。

「定時運行エコバス」は、湖州市がスマートムーブを奨励するために打ち出した措置だ。スマート移動システムにより、住民のバスによる移動の利便性が大幅に向上した。「バスと移動路線をGPS測位とビデオカメラで100%監視することによって、AI路線網の最適化分析や運行のモニタリング分析、スマート配車などが実現できた。また、乗客の集積や道路の渋滞、故障事故によるバスの遅延状況に対応し、速やかに緊急配車を行うことができる」と湖州市公共バス会社の張利萍総経理は語った。

湖州市は2019年、『エコモビリティー提言書』を発表し、市民に対して1以内の移動は徒歩で、3以内は自転車を、5前後は公共交通機関を利用するよう呼び掛けた。現在、湖州市のバス停の半径300以内のカバー率はすでに906%に達している。これにより CO2排出量は年平均約6万削減され、これは新たに森林面積を910平方増やしたことに相当する。そのほか湖州市では、全国で初めて無スタンド型ピンポイント公共自転車駐輪ポート管理モデルを導入し、シェア自転車も統一的な監督管理に組み入れ、市民の自転車での移動がさらに便利になった。

潘さんによると、平日の通勤なら、今では団地のゲート近くのバス停から4駅バスに乗り、そこから自転車で数分走るだけで会社に着くという。「今はどこでもエコモビリティーが提唱されていて、遠出する時以外、めったにマイカーを使わなくなりました」

各種エコ活動で意欲向上

朝晩1回ずつごみ分別をすると「カーボンコイン」が1枚もらえ、2000歩歩くと「カーボンコイン」1枚、シェア自転車に10分間乗れば「カーボンコイン」が1枚もらえる……。

江西省撫州市では、市民のCO2削減につながる行動は全て、スマホの都市スマートサービスアプリ「CO2削減行動への優待」公共サービスサイトで「カーボンコイン」ポイントに換算でき、消費に使える。例えば、10枚の同コインはショッピングモールの駐車券1枚に交換でき、50枚でスーパーのクーポンや市内の観光スポットのチケット1枚、150枚で映画館のチケット1枚などと交換できる。こうした措置によって市民にエコライフの実践を奨励している。

50代の華河輝さんは現在、毎日自転車で10余り走っている。華さんが貯めた「カーボンコイン」2万4000枚余りは、市のトップだ。「サイクリングは体に良いと聞いて、とりあえずちょっと試してみようと、通勤時にマイカーの代わりに自転車に乗ってみました」と華さんは語る。その後、「CO2削減行動への優待」政策でサイクリングへの情熱がかき立てられた。「今はもうサイクリングが大好きになりました。体を鍛えられるし、低炭素の『恩恵』も受けられます」

撫州市の「CO2削減行動への優待」サイトのデータによると、運営開始してから3年余り(今年3月末時点)で、登録ユーザー数は37万5000人に上り、CO2排出の削減量は累計で5294に達した。これは、ファミリーカー1台の年平均走行距離を1万として計算すれば、撫州市のCO2削減量は3年間で計1960台の車を減らしたことになる。

1枚1枚は小さな「カーボンコイン」でも、少しずつ積み重ねたポイントは、より大きな環境効果をもたらしている。

「食べ残しゼロ(10)」の新習慣  昼食の時間帯、江西省南昌市にある東華理工大学の南区食堂では、食事を終えた学生たちが列を作り、きれいに食べ終えた「空の皿」を持ち、カードにポイントを受け取っていた。

国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、全世界で毎年生産される食料のうち、約3分の1が捨てられたり、無駄になったりしている。こうして消費された環境コストは約7000億に上る。また、国連が13年に出した報告では、食糧の浪費による温室効果ガスの排出量は、当時すでに世界第3位のCO2排出源になっている。そのため、食糧の利用率の向上は温室効果ガスの排出を減らし、地球温暖化の速度を遅らせることにつながる。

食べ物や飲み物の浪費を止め、グリーンで持続可能なライフスタイルを普及させるため、中国共産党中央の強力な提唱と推進の下、「食べ残しゼロ」活動は中国各地に広がり、食糧の節約は徐々に一つの習慣となってきている。

東華理工大学では、教員や学生に「食べ残しゼロ」活動への参加を奨励するため、「空の皿」によるポイント獲得キャンペーンを打ち出した。貯めたポイントで、オーダーメードのキーホルダーやはがき、マグカップ、キャンバス地バッグなどの大学オリジナルグッズと交換できる。

「このキャンペーンは大人気で、すでに3000枚余りのポイントカードが発行されました」。東華理工大学調達支援課の黄磊副課長によると、「食べ残しゼロ」活動が展開されてから、1日当たりの大学の厨房の生ごみ量は前年同期比で30%減少したという。

また、重慶市渝中区の中華レストランでは、「当店の料理は量が多めなので、お客様4人なら5品で十分です。さらに他の料理にもご興味がありましたら、半量でも注文できます」と、店員が人数と予算に見合った注文の仕方を勧めてくれた。

店のマネージャーによると、顧客に積極的に「食べ残しゼロ」活動に参加してもらうため、注文した料理を残さず食べた場合はVIP客として割引が受けられ、食べきれなかった場合は残した料理を無料で持ち帰れるサービスを提供している。「お客様の90%が持ち帰りをされていて、『食べ残しゼロ』活動をとても応援しています」 同店の常連客の李可翔さんはこう述べる。「以前なら、全ての店が多めの注文を望み、食べきれずに無駄になってしまうこともしょっちゅうでした。でも今は、多くの店で食べ残しが出ないよう店の人が注文でアドバイスしてくれたり、半量が注文できたり、残さず食べることで割引してくれたりするので、食料を節約する意識とモチベーションが高まります」

「ステーション」で意識改革

海南省海口市の美蘭区にある白沙門環境保護教育ステーションに入ると、傘寿(80歳)を過ぎた趙月英さんがミシンでエコバッグを縫っていた。色とりどりの布地は、市民らから送られてきた古着や古いシーツなどだ。きれいに洗って消毒した後、良い服は選別されて辺地の山村に寄付され、残った物でエコ袋が作られ、市民に無料で配られる。

この教育ステーションで、趙さんは最年長のボランティアだ。「一つでも多くのエコバッグを作って一枚でもビニール袋を減らし、社会に貢献したいです」と言って趙さんはほほ笑んだ。 同ステーションは17年9月に設立された。環境保護の研修や講座、テーマイベントなどを通した住民のエコ意識の向上やごみ分別の実用的ノウハウの普及、ごみ分別回収や資源のリサイクルの促進を目的としている。

同ステーションの中庭には、10個の大きなプラスチックの箱が順番に並べられ、箱にはペットボトルやスチール缶、紙類、衣類などと書かれたラベルが貼られている。責任者の蒋付軍さんは、「ここに回収されてきたごみを10種類に分け、その分別方法を分かりやすい数え歌の『十指の歌』にまとめて市民に覚えてもらうようにしている」と語る。

回収した廃品を「宝」に変えるのは、同ステーションの大きな特徴だ。古着でエコバッグやテーブルマット、コースターを作る以外、回収したペットボトルを加工再利用して「エコ腰掛け」に一変させている。また、野菜の根や果物の皮、腐った野菜果物など厨房の生ごみを、ボランティアたちは赤砂糖と水と一緒に一定の割合で混ぜ、缶の中に密封して3カ月間発酵させ、エコ酵素を作っている。このエコ酵素は、汚れをきれいに取ったり、花の肥料として使ったり、台所やトイレに置いて臭いを消すこともできる、簡単に作れる環境に優しい洗剤だ。

現在、この小さなステーションは、すでに海口市が低炭素環境保護を宣伝するための「人気スポット」となっている。年間延べ2万3000人余りの市民観光客が利用し、無料でエコバッグを2万4000枚以上、エコ酵素を3万本以上配布した。また、美蘭区政府の支援を受けた蒋さんはここ2年、同区内に新たに教育ステーション2カ所を建設した。

昨年7月に完成した美蘭区和平南通りの環境保護教育ステーションは、夏休みには近所に住む子どもたちの「楽園」となった。子どもたちはここで、ごみ分別ゲームなどの娯楽を通して、楽しみながら環境保護に関する知識を学んでいた。さらにボランティアになって近くの住民や通行人にごみ分別の知識を宣伝している。

12歳の毛志森さんは、「ここでボランティアをするのは本当に有意義です。いろいろなごみ分類の知識を学びました。今では家でもちゃんと分別をするようになって、以前のように全部一緒にはしていません」と話した。

「ごみ分別とリサイクルは人々の日常生活と密接に関わっています。確かに末端の処理に属していますが、エコ文明建設を推し進める上で果たす役割は軽視できません」と話す蒋付軍さん。「誰もが小さなことから始め、低炭素に向けて意識と行動を変えていく。これが子孫に恩恵をもたらすやり方です」と笑顔を浮かべた。

中国のCO2排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの実現に向けたタイムテーブルの発表と推進に伴い、ますます多くの人が環境保護に対する自身の行為の重要性を認識し、グリーンライフスタイルの実践に取り組むようになっている。

中国の生態環境部(省に相当)環境経済政策研究センターが発表した『公民生態環境行為調査報告(2020年)』によると、回答者のうち60%以上が、自分はエコ移動や水電気などのエネルギー資源の節約を比較的よく実践していると答えている。これは前年同期と比べると、グリーン消費の面で比較的よく実践していると答えた回答者の数は2倍に増えた。また、「いつも」あるいは「よく」ごみ分別をする人は前年同期比で2割増え、回答者の9割以上がごみ分別は重要な意義があると受け止めている。

しかし、誰もが環境対策に参加し、「3060」目標達成への後押しを実現するには、まだ長い道のりを歩まなければならない。「道は長く険しくとも、歩み続ければ目的地に至る」。中国国民のエコ環境への参加と実践は、将来の新たな一章を期待させてくれる。

 

人民中国インターネット版

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