PART6 等身大の姿見せる五輪選手
段非平=文
東京オリンピック・パラリンピックでは、多くの若者が世界のひのき舞台でスポットライトを浴び、はつらつとした笑顔を輝かせた。この若者たちこそ、「95後」、中でも「00後」を主とするZ世代のアスリートだ。
オリンピック期間中、中国のZ世代の新星50人余りが各競技に出場し、12人の胸に輝く金メダルが掛けられた。彼らは試合に恐れることなく挑み、勇敢に戦い、若者らしい力を存分に発揮した。また競技場の外では、自信と誠実さ、個性を発揮し、青春の最も素晴らしい姿を描き出していた。
かわいさ満点 クールな射撃手
東京五輪金メダル第1号となった中国の女子10㍍エアライフル個人の楊倩選手(21)は、混合10㍍エアライフル団体でも楊皓然選手(25)とペアを組み、二つ目の金メダルを手にした。楊倩選手は、今回のオリンピックで初めて2個の金メダルに輝く選手となり、中国代表チームで最も輝かしい新星の一人となった。
2000年生まれの楊選手は11歳の時、浙江省寧波市のスポーツ専門学校に選抜されて入学。その並外れた腕の安定性と強い精神力という素質から、楊選手は射撃競技に天賦の才を見いだされた。しかし楊選手は、恵まれた才能に甘んじることなく、日々の練習に懸命に打ち込んだ。片方の膝を立てて撃つ膝射の練習では、いつも足がしびれて立ち上がれなくなるまで撃ち、小休止の時はチームメートたちに抱えられて射撃場外に出るほどだった。
楊選手は振り返ってこう語る。「苦しくてやめたいと思った時は、大声で『これは夜明け前の光だ。もう少し頑張れば、明るい日の光でもっと素晴らしい自分が見られるんだ』と自分に言い聞かせ、励ましました」
楊選手の努力は報われた。15歳でユース五輪代表チームに抜てきされ、国家レベルアスリートの称号を受けた。19歳の時には633点という世界トップクラスの高得点を挙げ、ナショナルチームに入った。東京オリンピックの選手選考会で楊選手は、四つの競技会全てで1位になり、ついにオリンピックでの金メダルという夢を実現した。
射撃場で沈着冷静な「クールな射撃手」は、最後の一発でライバル選手を逆転した。射撃場を離れた楊選手は、かわいいヘアアクセサリーやきれいなパールのネイルアート、表彰台で頭上に両手をかざしてハートマークを作る様子など、かわいらしい姿も注目された。
「カワイイ。私も幸運のアヒルちゃんを着けて試験で良い成績を取りたい」「アヒルちゃんで金メダリストを身近に感じた」「五輪の優勝者って、こんなにカワイかったの」――。楊選手が試合中に着けていた黄色いアヒルのヘアピンは、オリンピック期間中に「一番人気」となり、このヘアピンを扱う多くの業者は、2、3日で売り切れになったと話した。
幼い頃から選手養成システムに参加し、厳格な生活管理を受けたアスリートは、カメラの前ではしばしば素朴なイメージを見せる。楊選手のネイルアートやヘアアクセサリーは、普通の少女たちにはありふれたものだが、アスリートにとっては人々にかわいらしさを感じさせ、アスリートに対するステレオタイプのイメージを打ち破るものだった。これがまさしくZ世代アスリートの個性の自然な発露なのだ。
昨年7月24日、東京オリンピック射撃女子10㍍エアライフル個人で金メダルを獲得した楊倩選手は、表彰台の上でハートのポーズをした(新華社)
闘志を貫き個性を重視
先輩アスリートたちと比べると、Z世代のアスリートには共通点もあれば違いもある。
「共通点」とは闘志だ。2度の全審査員の満点評価、ノースプラッシュ(水しぶきを上げない入水)……中国五輪代表団の最年少選手、14歳の全紅嬋選手は、女子10㍍高飛び込み決勝で完璧な演技を披露し金メダルに輝いた。全選手は「デビュー時点で頂点」とたたえられたが、決して適当にやって成功したわけではない。広東省湛江市出身の全選手は7歳から飛び込みを始めたが、「水しぶきを立てない」神技の裏には、十年一日のような猛練習があった。
広東省飛び込みチームの何威儀コーチはこう語る。全選手は同年齢のアスリートの中で一番練習に打ち込み、陸上とプールで毎日400回以上も飛び込みを繰り返した。忍耐と不屈の精神で、彼女はスポーツという大海に巨大な大波を巻き起こすことができたのだ。
「違い」とは時代を反映した個性だ。競技場で実力を発揮する以外に、生まれながらネットが身近なZ世代のアスリートは、ためらうことなく感情を表現し個性をアピールする。また、ソーシャルメディアなどを通じて自分の生活をシェアし、フォロワーとの交流を楽しみ、新時代の中国人アスリートの自信と開放性、素直さ、親しみやすさを見せている。
五輪期間中や帰国後の一時隔離中でも、多くのオリンピック選手はライブ配信や動画ブログを通じてネットユーザーと交流した。また、試合中の様子から隔離期間中のトレーニングまで、あるいは好きな芸能人からお気に入りのゲームまで……選手たちが競技場内外の様子を披露することにより、アスリートのイメージはよりリアルで立体的になり、より多くの若者に親近感を抱かせ、見習うべき手本になっている。
試合で戦うZ世代の選手だけでなく、テレビやパソコンなどで観戦し歓声を上げる多くのZ世代もいた。彼らは、同世代の選手たちから愛国や奮闘、努力といった資質を見て取り、真実や自信、夢の価値を知った。スポーツが見せる競技の美、力の美、健康の美は、新時代の中国の若者たちが持つ美意識の潮流をリードしている。
東京オリンピックで全力で戦った中国の若手アスリートは、試合後に年相応な一面を見せた(新華社)