PART1 価値観押し付けず個性尊重
高原=文
欧米の一部の社会学者は第2次世界大戦後に生まれた人々をX、Y、Z世代に分類し、各世代の文化的な特徴と性格的な特徴を分析する。中国のZ世代は現在13〜27歳で、人生観や価値観、生活態度が徐々に確立し、成熟していく時期を迎えている。このため、彼らを理解することは将来の中国社会の発展を予測するのに役立つ。
かつて米国でもてはやされた「ミレニアル世代」や日本の「ゆとり世代」のように、人々は簡単で直観的な言葉で中国のZ世代の特徴を総括しようとする。しかし、この若者たちは上の世代と比べて統一的に定義するのが難しい。仕事や生活などの面から彼らのおおよその姿を描き出すほかない。
人気の就職先はネット業界
Z世代のうち比較的年長の人々はもう社会人になっている。昨年9月、人材サービス業の智聯招聘は「職場におけるZ世代の現状とすう勢に関する調査研究報告」を発表した。ここから職場でのZ世代の様子をうかがい知ることができる。
報告によると、就職先としてZ世代の若者に最も人気があるのはインターネット業界だ。「95後」(1995〜99年生まれ)の14・7%と「00後」(2000〜09年生まれ)の20・1%はIT、通信、エレクトロニクスなどのネット関連産業に従事しており、比率はそれ以前の各世代よりも明らかに高くなっている。ネット企業で働く「95後」の若者にとって、給与が他の業界より高いことが引きつけられる大きな理由だ。国有企業や国家機関にも世間体の良い仕事、安定した収入、充実した福利厚生などのアドバンテージはあるが、インターネット業界の企業文化は比較的寛容で、多元的で、若者が多く、活気があるため、よりZ世代の間で人気がある。「95後」は「80後」(1980年代生まれ)「70後」(70年代生まれ)よりも企業文化や雰囲気を重視する。「昔ながらの企業で働こうとは絶対に思いません。しゃくし定規で、いつ結婚して子どもを生むのかと常に誰かが聞いてくるような環境は嫌いですから」と話す若者もいる。
Z世代の若者はこの調査の中で、仕事の条件面に関して比較的高い要求と期待を示した。「70後」「80後」は「艱難汝を玉にす」と信じ、きつい仕事や厳しい労働条件に耐えられ、それを貴重で有益な人生経験と捉えてきた。物質的に豊かな時代に育ったZ世代は違う。彼らは高給で昇進の早い仕事を求め、「残業したくない」「会社は家から近い方がいい」「良いオフィス環境が欲しい」といった期待を口にするのをはばからない。労働者がこのような要望を持つのはとても合理的なことだと彼らは考えている。
このほか、Z世代は自分の仕事の意義を非常に重視する。彼らが職場で最も困惑するのは「仕事の意義が感じられず、自分が会社の歯車になったように思う」ことだ。彼らは給与だけでなく、個人の成長に役立つ学習機会を会社が提供してくれるかどうかについても上の世代より関心を持っている。「00後」の半数近くは興味のある仕事内容や、個性と創造力を発揮できるポストに引かれると答えている。
このため、彼らは動画制作者、電子商取引のライブ配信キャスター、ゲーム代行業者、アートトイのデザイナー、人工知能(AI)訓練士など、自由に時間を使えてクリエーティブな新しい職業に憧れる。
インターネット業界は若者に人気。広州のネット企業は従業員の大半が20代だ(写真提供・雷鳥網絡科技)
趣味の仲間とオンライン交流
日常生活での「95後」の若者は職場での姿からさらに離れ、個性を持っており、定義するのはさらに難しい。彼らは上の世代よりも自分の趣味を重視する。なぜなら、趣味は余暇の気晴らしだけではなく、彼らの交友関係とネットスラングにも関わってくるからだ。
「95後」の多くの若者は学校にいても同級生とは疎遠で、毎日出勤しても同僚とは深く交流せず、隣近所とはただ面識があるだけの他人の関係を保っている。彼らの交友関係の多くは共通の趣味をよりどころとしている。ネット時代には、どんな少数派の趣味であってもネット上ですぐに同好者を見つけ、自分たちのグループをつくることができる。こうした小集団の一体感によって若者は大きな自信を持ち、いっそう自分の主張を堅持できるようになるが、同類のグループから飛び出す原動力は欠けている。各小集団には特有の文化とネットスラングがあり、外部の者は一定期間学ばない限り全く理解できないというネット時代の奇妙な現象が生まれた。
例えば、eスポーツに熱中する若者はネットから離れられず、競争や電子機器を好み、科学技術の最先端を追い掛ける。漢服を楽しむ若者は相対的に淡白で、伝統文化を好み、健康づくり、生け花、茶道などに励む。このように両者は全く異なる気質を見せている。かつてなく多様な趣味と特質を前に、Z世代の共通点をどう総括すべきなのか? それは伝統文化を好むeスポーツ愛好家が次のように指摘する通りだ。「私たちの誰もが多くの趣味と多くの立場を持っています。多くの直線の交差点に立っているようなものですから、どれか1本の直線では定義しようがありません」
あるいはZ世代が到達できる唯一のコンセンサスとは、レッテル貼りを拒否すること、特定の集団を代表し代表されるのを拒否することなのかもしれない。まさに取材時に彼らが自分のことだけを話し、自分をある集団のスポークスマンとは見なさなかったようにだ。これは少なくとも、彼らが人と人との違いを許容し、一人一人の個性を尊重していることを示している。
アニメ・ゲーム文化の影響を受け、中国のZ世代の中にはコスプレで自己表現する者が大勢いる(写真提供・江南大学デジタルメディア学院)