PART2 進化する中高生の語学力

2022-02-17 20:36:41

関係部門の大まかな統計によると、昨年の高考で、日本語を外国語科目に選んだ学生は約20万人に達した。そのうち広東省だけでも約4万9000人の日本語科目の受験生がおり、これは18年に比べて10倍以上となる数字だ。また、全国の高校で日本語を学ぶ学生は70万人近くに及び、中国における中学・高校での日本語教育は急激な伸びを見せているといえる。しかも、これは大都市に限ったことではなく、全国的に広く見られる現象となっている。

 

外国語教育は世界を見る「窓」

中国教育部は、1980年代に早くも高考における日本語科目導入に関する要綱を発表し、後に政府が数次にわたり公布した学習指導要領や教育課程の基準はいずれも日本語に言及したものだった。このことは高考への日本語科目導入や高校における日本語教育が、新たな動きではないことを示している。では、なぜここ5年の間に中学・高校での日本語教育が突如注目を集め、さらには高考で日本語科目の人気が高まっているのだろうか?

「このような変化は、比較的マイナーとされてきた言語を学ぶ目的が再認識されたことによるものです。数十年もの間、中国では一貫して英語を主とする外国語教育が良しとされてきました。しかし、世界の多極化の進展に伴い、外国語教育に携わる人々は環境の変化を受けて、英語教育だけでは多くの文明が融合する国際社会に参加する上で、ニーズを満たせないのではないかと考えを改めるに至ったのです。外国語教育とはそもそも、広い世界に接し、世界を理解するための窓のようなものです。多様な文明が交流し、互いに学び合う今日の世界において、私たちはより多くの窓を開き、さまざまな角度から世界を知る必要があります。英語以外のさまざまな言語教育の盛り上がりは、まさしく文化多様性が促進されていることによるものなのです」と、教育部の高等教育機関外国言語文学類専攻教学指導委員会日本語小委員会の修剛主任は、自身の考えを語ってくれた。

人類運命共同体理念の提起によって、中国はさまざまな文化とより開放的かつ包摂的に交流するようになった。各国言語の教育が幅広く行われることで、グローバル化の時代に生きる今の若者世代は、より多くの新たな選択と可能性を手にしているのだ。

 

学び易さが意欲を高める

徐々に盛り上がりを見せる高校での英語以外の外国語教育のうち、日本語学習者の増加ペースは最も速い。その理由について、成都市の高校で日本語教師を務める陳飛さんは次のように考えている。

「日本語には漢字がたくさん使われており、学習経験がなくても文章を見ればある程度意味が分かるので、生徒たちは『気軽に学べる』というイメージを持ちます。そのような気持ちで日本語学習を始めた生徒は少なくありません」

多くの生徒が日本語は「簡単」であると考えている。とりわけ中学・高校で学ぶ初級レベルの日本語では中国語と似通った言葉が多い。そのため、学習者はより達成感を得ることができ、学び続けるモチベーションとなる。

この点について修主任は、「『日本語は簡単そうだ』という思いの背景にあるのは、中日両国の文化的基盤の深いつながりです。文字表現から風習、文化に至るまで、中国文化と日本文化の間には共通のルーツや価値観という基礎があり、そのことが理解の妨げを減らし、親近感を生みやすくしているのです」と分析する。

さらに近年、新型コロナウイルス感染症の発生前までは、日本旅行のハードルが低くなったことで複数回入国できる数次ビザを持つ中国人訪日観光客がますます増加し、学んだ日本語を生かせる機会もより増えている。また、日本の漫画・アニメ文化に触れて育った「00後」(2000年代生まれ)は、日本文化に対する高い感受性と受容性を備えている。北京外国語大学日本語学院の汪玉林元主任は、次のように語る。

「私はかつて、学部生として入学したばかりなのにすでに高い日本語レベルを備えている学生を受け持ったことがあります。彼は子どもの頃から日本語を独学で学んでいました。彼の両親が日本好きで、自分たちは新たに言語を習得する機会がないため、幼い頃からわが子に日本語を学ばせていたのです。そうして子どもに簡単な日本語を教わったり、もしくは日本を旅行する時に通訳を頼めればと考えていたそうですが、これは決して珍しいケースではありません」

このような現象について修主任は、「これは長期的に見て良いことです。地域共同体という視点に立って言えば、中日間の人的往来はますます増えており、たとえ高校の短い期間に学んだ日本語であっても、隣国に対する理解を深めることができれば、きっと中日の文明の学び合いを後押しする民間の基礎となることでしょう」と話す。

 

日本での交流期間中、現地の高校生と一緒に家庭科の授業を受ける月壇中学の生徒たち(写真提供・月壇中学)

 

中高等教育を有機的にリンク

現在の状況から判断して、中等教育における日本語専門教育へのニーズは今後も高まり続けるだろう。短期間で急速な伸びを見せた中学・高校での日本語教育は教師、教材、考査メカニズム、生徒指導など、いずれの面でも中国国内での中等教育における日本語教育の仕組みにより高い要求を課している。中学・高校での日本語教育は大学の学部とは異なり、生徒たちは高考の他の科目にも気を配らねばならないことを十分考慮する必要がある。同時に、生徒たちの理解力や興味、学習習慣などに合わせて、大学の専攻および学科のリソースを活用して中学・高校で日本語教師が務まる人材を育成し、適切な教材を制作すべきだ。また大規模な日本語教育は、小人数クラスで教えていた時代に比べ、クオリティーを保つのも難題となる。教育モデルを適時改め、中学・高校での日本語教育がより盛んな時代を迎えるに当たり、しっかりと準備をすることが求められている。

各地域で日本語教育の基礎と発展のバランスが取れていない問題について、日本語を第一外国語と定める北京市月壇中学(中高一貫校)の張文生校長は、「教師や教材、資金の不均衡は日本語教育の発展をいびつなものにしがちです。現在のところ、全国レベルで統一された中学・高校での日本語教育体系は作られていません。教育リソースの全面的共有を速やかに実現し、各自がそれぞれ異なる取り組みをして発展が遅れている状況を打破すべきです」と語る。

目下、一部の大学の学科では、英語以外の外国語科目で高考を受ける生徒に対し、一定の出願制限を設けている。そのため、中学・高校で日本語を学んだ生徒が大学で学習を続けられないケースが生じており、語学学習の継続性に支障をきたしている。これに対し、広東外語外貿大学日本語言語文化学院の陳多友院長は、ますます増える日本語での高考受験生が大学の日本語専攻に入学できるように、中等・高等教育における日本語教育を有機的にリンクさせた教育モデルの普及を提唱している。

「大学教育と高校教育の間には切れ目のない連続性が保たれてしかるべきで、高校も大学と共にプラットフォームを構築すべきです。リソースの共有を成し遂げ、試行錯誤を通じたカリキュラムの共同制作および共有を推し進め、履修単位の換算を実現して、大学での履修負担を減らすのです」と陳院長は語った。

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