Part1 春の到来祝う氷の開会式

2022-03-22 11:31:14

沈暁寧=文 

2月4日夜8時、北京冬季五輪の開会式が北京国家体育場「鳥の巣」で始まった。これまで数々の奇跡を生み出してきた中国人が今回は何を見せてくれるのかと、世界中が高い関心を寄せた。開会式が進むにつれ、関心は震撼に変わり、人々を興奮と感動の心の旅にいざなった。 

約2時間の開会式は純白の氷雪と緑あふれる春の彩りによって、「団結」と「希望」という二つのキーワードを示した。中国は詩的情緒を駆使して「共に未来へ」のテーマを世界に唱え、国際社会の幅広い共感を巻き起こした。 

  

北京冬季五輪の開幕日は、中国ではちょうど旧暦の二十四節気の一つ「立春」。開会式のパフォーマンスでは、春が大地に戻り、生命が芽生え、人々に希望と憧れをもたらす――立春が表現された(新華社) 

  

春の息吹を伝える開会式 

開会式当日はちょうど旧暦で使われる中国の二十四節気の起点「立春」だった。この日は中国人にとって、冬が去り春が訪れることを意味する。2008年の北京夏季オリンピック(北京五輪)で大量の太鼓が鳴り響く音でカウントダウンを演出したのとは異なり、今回は二十四節気に込められた中国の伝統的な詩と四季折々の風景を結び付けた。一年がゆっくり過ぎ去っていき、最後に「立春」で止まって冬季五輪の幕を開けた。このように奇抜なアイデアは中国文化の精髄と奥深い趣を見せたばかりか、冬季五輪と春を巧みに結び付け、目も心も楽しませるプレリュードにまとめ上げた。 

続いて、100人を超える出演者がステージ中央で緑色のLEDライトを振って踊り、若葉が氷を割って顔を出し、そよ風に揺れる様子を表現した。レーザーの光の下、若葉は次第にタンポポに姿を変え、男の子が息を吹き掛けると、白い綿毛が体育場の夜空に飛んでいき、「立春」と「SPRING」の文字が緑色の花火となって現れた。これは、春が希望を生み出し、世界各地に素晴らしい願いを届け、人々を喜ばせて憧憬を満たすことを表現している。韓国の『毎日経済新聞』のニュースサイトは、次のように評価した。「世界が新型コロナウイルス感染症により氷に閉ざされている中、春のような北京冬季五輪が約束通り開催された。これは新型コロナに対する人類の勝利を待ち望む開会式であり、世界の注目を集める『春の物語』でもある」 

春が希望を届けることは、開会式の一部始終を貫いたテーマだった。会場では、あどけない子どもたちがおぼつかない足取りでさまざまなウインタースポーツに挑戦する『未来の金メダリスト』というショートムービーが上映された。転んだ時のかわいらしい姿の数々に、ついほほ笑みがこぼれる。子どもたちは転ぶたびにまた立ち上がって練習を続ける。動画の最後、子どもたちがウインタースポーツの楽しみを知った氷上の小さな妖精になった時、会場から割れんばかりの拍手が沸き起こった。その拍手は、勇敢でかわいらしく、将来を期待できる子どもにのみ向けられたものではなく、私たち自身を鼓舞するものでもあった。失敗を恐れず、必勝の願いを心に持ち続けていれば、私たちは困難に打ち勝つ英雄になれ、人生の金メダリストになれるのだ。 

北京冬季五輪の開会式の総合演出を務めた張芸謀氏は、このショートムービーをとても気に入り、次のように語った。この動画には北京冬季五輪がかき立てた「中国の3億人をウインタースポーツに参加させる」という情熱が描かれているだけでなく、人類の進化の過程とは七転び八起きであることを象徴している。これこそ、困難にどう対応し、どのように未来と向き合うかという人類に対し、オリンピック精神が与えた啓発だ。 

  

オリンピックは人類がスポーツの最高峰を目指して登る競技場であり、また人々が楽しく集う祝祭の日でもある。写真は、開会式で五星紅旗を振り、満面の笑みを浮かべて行進する中国選手代表団(新華社) 

  

氷に刻んだオリンピック精神 

「君見ずや、黄河の水天上より来たり」。唐代の詩人李白は黄河の雄大な流れをこう詠んだ。開会式で、とうとうと流れる黄河が滝となって豪快に流れ落ちる様子がスクリーン上に映し出され、水煙を上げる波濤がステージ中央に集まると、巨大な氷の塊になった。24本のレーザー光線が過去23回の冬季五輪の開催都市を氷の塊に映し出し、最後に「2022年中国北京」の文字を表示した。そして数人のアイスホッケー選手が氷の塊にパックを打ち込むと、パックが氷の中を反射して氷を割り、中から「氷の五輪」がゆっくり浮かび上がった。この壮大で美しい光景に場内から大きな歓声が上がった。第2ドイツテレビの開会式実況解説者は、「詩的」「幻想的」「完璧」などと褒めたたえた。英国の新聞『ガーディアン』は、「世界で最も偉大なパフォーマンス」とさらに称賛した。 

人々は08年の北京五輪開会式の光り輝く五輪を片時も忘れたことはないが、この時現れた、障壁を打ち破り、対立を取り除き、相手に近付き、理解し合うことを意味する氷の五輪は、オリンピック精神のパワーをさらに感じさせるものだった。オリンピックの歴史が今日まで推し進められてきたのはまさに人類が協力したからであり、「より速く、より高く、より強く、共に」を唱えるオリンピックのモットーは人類が進むべき方向を指し示している。日本のNPO法人「日中未来の会」は、北京冬季五輪が開催を勝ち取ったことは、オリンピック精神の勝利であり、平和を愛する世界の人々の勝利であり、中国人民の勝利でもあると述べた。 

ここで、習近平国家主席が北京冬季五輪の開会式に出席した海外の賓客を歓迎するレセプションで述べた次の言葉が思い出される。古来、オリンピックは平和、団結、進歩という人類の素晴らしい追求の担い手である。私たちはオリンピックの初心を胸に刻み、共に世界の平和を守り、尊重し合い、互いに平等に接し、対話によって協議することを堅持し、相違と対立の解消に努め、恒久的に平和な世界を共に構築すべきだ。 

開会式で五輪旗が徐々に上がった時、「山からやってきた子どもたち」が『オリンピック賛歌』を合唱した。彼らは河北省阜平県城南床鎮内の郷や村に住む小学生だ。幼い彼らの頬には、山から吹き下ろす風によって赤みが差している。歌を披露したこともステージに立ったこともない子どもたちは、実に4カ月余りをかけて、複雑なメロディーのこのギリシャ語の歌を習得した。会場に歌声が響き渡ると、子どもたちの透き通った眼差しと素朴な声、そして清らかな魂がオリンピック精神の神聖さを固く守ることを人々に訴え、オリンピック精神が世界に光をもたらすよう呼び掛けた。 

子どもたちにギリシャ語を教えた林嘉濠氏はこう語る。「子どもたちが成長すれば、この歌に込められた素晴らしい意味をより深く理解でき、オリンピックでこの歌を歌った自分を誇りに思うでしょう。これもオリンピック精神の継承です」 

  

開会式で流れる『この愛が世界に満ちるまで』の中、中国と海外の若者76人が横一列になって「鳥の巣」を横断した。彼らが歩いた後、ステージには世界各国の人々の笑顔が現れた。この「足跡」には、北京冬季五輪のスローガン「共に未来へ」への希望と憧憬が込められている(cnsphoto) 

  

団結し共に未来へ 

開会式当日、ある日本のネットユーザーは熱を出して寝込んでいたため、生中継を見られず、寝室で音声だけ聞いていた。彼は、中国がこの場を借りて自国文化をひけらかすのだろうと思っていたが、リビングのテレビから聞こえてきたのは、聞き慣れたクラシック音楽だったと話す。 

彼の言うクラシックとは、選手代表団の入場時に流れた19曲の世界の名曲だ。オリンピックは世界のスポーツの祭典であり、世界の名曲は芸術の至宝であり人類共通の財産でもある。「世界は一つの家族」を示し、「人類運命共同体」を唱えることは、北京冬季五輪の開会式が伝えたかったテーマだ。開会式に参加した各国・地域の選手は、自国の名曲を耳にした時、故郷に帰ったかのような温もりを感じたとともに、祖国が世界に果たした貢献に誇りを覚えただろう。 

張芸謀氏はインタビューで次のように述べた。08年と22年に北京で開催されたオリンピックの開会式の最大の違いは、「私」から「私たち」になったことにある。08年は世界に中国を見せたかった。今回は、心の内をさらけ出し、より温かく、リラックスしてシンプルな方法で、私たちは一緒だと世界に伝えた。 

「私たちは一つ」を表すハイライトは、聖火台点火の瞬間に訪れた。各代表団が掲げる雪の結晶を模したプラカードが合体して一つの巨大な結晶になった時、聖火台の真の姿が現れた。その時、人々は、北京冬季五輪の聖火台は各参加国・地域が開会式で共につくり上げて完成させるものだと悟った。このような一体感によって、北京冬季五輪が「私たちの冬季五輪」だと突然気付いた。これに関して、北京冬季五輪は世界にこう伝えようとした。「世界に同じ雪の結晶は二つとしてない」。しかし、組み合わさることで大きく輝く雪の花になれる。この雪の花こそが世界であり、人類が共にする家だ。ある日本のネットユーザーは、その瞬間、心の中で何かが湧いてくるのを感じたと言っている。そして多くの人々がこのシーンに感動の涙を流した。 

2000年代生まれの中国人冬季五輪選手2人がトーチを雪の結晶の中心に差した瞬間、多くの人々は聖火が燃え盛る壮観な光景を待ち望んだ。だが、その期待に対する北京冬季五輪の応えは、「これで十分だ」だった。大勢の人々が抱いた疑問に対し、張氏は次のように説明する。「今回の開会式の点火方法は、100年以上に及ぶ近代オリンピック史上初めてのものだと言える。燃え盛る聖火を雪の結晶のような神聖かつ生命力のある小さな火に変えたのは、低炭素と環境保護の理念から発想を得た。環境保護の理念がますます人々の心に深く根差している今、私たちはこのような方法で世界に向けて私たちの理念を語らなければならない。私たちは同じ家族であり、一つの共同体であり、低炭素社会を追求し、環境を保護し、自然を愛し、人類が直面している問題に対処し素晴らしい未来を切り開くことは、私たち共通の責任だ。そして、中国哲学には『一葉知秋』という言葉がある。一枚の落ち葉から金色に輝く秋を想像するという意味で、とても詩的だ。今回の聖火台の点火方法は、小さなトーチと小さな火から偉大なオリンピック精神を連想してもらい、全人類が激しく燃やす情熱とロマンを彷彿とさせることが目的だった。炎の大小にかかわらず、みんなの心の火をともせば、それが最も光り輝く聖火になる」 

火の点いた聖火台が宙に浮かび、氷の五輪の下で停止し、聖火の周囲を全参加国・地域の名前が書かれたプラカードが取り囲む。「オリンピック史において、どの聖火台も開催国の文化特性に基づいてデザインされ、参加国・地域全ての名前を前面に押し出したものはなかった。今回の北京冬季五輪では初めて、みんなが共有する聖火台をつくり、さらに繊細でロマンあふれるデザインにした」と張氏は自信を込めて語った。 

北京冬季五輪は開会式で聖火台に点火する「常識」を覆したが、聖火に対する新たな認識を人々に与えた。中国は東洋式のロマンを用い、「私たちは一つ」を象徴する雪の花の聖火台と、「共に未来へ」を実践する小さな聖火で、国際社会に向けて中国が世界に果たす責任と抱く気持ちを表した。シンガポールの新聞『聯合早報』は公式サイトでこう述べている。08年の北京五輪のテーマは「同じ世界、同じ夢」で、中国が国際社会に溶け込む願いが反映されていた。今回の北京冬季五輪のテーマ「共に未来へ」は、「人類運命共同体」の理念が際立ち、中国が各国と未来を切り開こうとする大願が表れている。 

  

北京冬季五輪のマスコットの一つ「氷墩墩」(ビン・ドゥンドゥン)も、開会式で各国・地域の選手を歓迎した(新華社) 

 

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