PART2 道筋異なる中日の電池開発
陳言=文
中国の電池メーカー上位2社の寧徳時代(CATL)とBYDは市場シェアの70%近くを占め、3位の中創新航(CALB)と4位の国軒高科を加えると全体の80%近くに達する。電池産業は絶えず大手企業に集中し、研究開発と投資もますます集中するようになっている。
電池材料(正極材、負極材、電解液、セパレータ)の研究開発と生産の分野で、日本企業は世界トップレベルだが、世界的に有名な電池メーカーはパナソニックしかないだろう。パナソニックの電池への投資は、関連分野における日本の発展方向を示すケースが多い。ガソリン車・ハイブリッド車メーカーのトヨタも電池関連の投資計画を発表したものの、あくまでも計画なので、結局どのぐらいの金額を投資するのか、その投資がトヨタに利益をもたらすのか、日本のEVの発展傾向を変えられるのかは不明である。少なくとも今後数年間、トヨタはガソリン車とハイブリッド車の生産を主とする経営方針を変えることはない。
中国と日本の電池産業を比較するため、筆者が主に中国のCATLと日本のパナソニックを重点的に取材し、行った分析をここに記す。電池の研究開発と生産での両国のそれぞれの特徴をある程度反映できるはずだ。
パナソニックが研究開発した異なるサイズの電池
世界の電池供給企業CATL
中国のEVメーカーだけでなく、テスラ、トヨタ、日産、BMW、フォルクスワーゲン、現代(ヒョンデ)といった海外の自動車メーカーにも電池を供給するのがCATLの大きな特徴の一つだ。
今年6月23日、CATLは第3世代のCTP(セル・トゥー・パック)技術を採用した麒麟電池を発表した。同社によると、麒麟電池の体積利用効率は72%を突破し、エネルギー密度は255Wh/kgに達した。同じ化学システムと同じパックサイズで、パナソニックの4680電池より13%多くの電力を供給できるという。また中国の関連ニュースによると、第3世代のCTP技術は航続距離、急速充電、安全性、耐用年数、効率や低温性能の全面的な向上を実現し、リン酸鉄リチウム電池と三元系リチウム電池に適応し、乗用車と商用車をカバーできるという。
電池の研究から見ると、11年に設立されたCATLは、もともとTDK香港子会社の車載用電池の生産部門だった。独立後に急速に発展し、10年足らずで世界最大手の電池メーカーに成長した。
BYDは携帯電話用電池の生産から始まり、その後は徐々に電池の生産範囲を拡大し、最終的には車載電池のほか、EVまで生産するようになり、世界最大のEVメーカーとなった。それに比べると、CATLは産業チェーンが非常に短く、ほぼ車載電池のみに特化している。車載電池に関連する研究開発、投資、生産の分野で、今後数年間でCATLを超える企業が現れるかは、電池業界ではっきりと予測できる者はいない。
筆者は中国の自動車メーカーや専門家と議論を重ねた結果、CATLが揺るぎない地位を確立した最も大きな理由は、中国のEV産業の急速な発展とEV生産量の多さにあるとの結論に至った。世界各国はいずれもEVを今後の自動車産業を発展させるための唯一の道と位置付けており、米国と日本政府は自国の電池産業チェーンをより大きく強くするため、関連企業に政策支援や巨額の資金提供まで行っているが、投資の規模でCATLを上回る日本と米国の企業は今も存在しない。研究開発の人材、設備、技術などで、CATLに匹敵する企業は今のところ世界にないと言えるだろう。
CATLが公開した情報では、麒麟電池を擁する同社は、これから世界の動力電池の投資総額のほぼ4分の1を占める563億元の投資を行う予定だという。また、関係筋によると、昨年末の時点で、CATLの研究開発者数は1万79人にまで達し、国内特許と海外特許をそれぞれ3772件と673件取得し、出願中の国内外の特許は合計で5777件に上った。研究開発費を見ると、19年は29億9200万元、20年は35億6900万元、昨年は76億9100万元と、年々増加している。
このような規模の研究開発投資があったからこそ、CATLは世界各国のEVメーカーに高品質の電池部品を供給することができるのだ。
電池生産のパイオニアパナソニック
CATLに比べると、電池の研究開発・生産のパイオニアとして、長い産業チェーンを持つのがパナソニックの特徴だ。パナソニックは長年にわたり、世界最大の電池メーカーだった。車載用電池の分野で、15年にパナソニックだけで世界市場の37・1%を占め、日本メーカーのシェアは合計で51・7%に達した。しかし、経済産業省が開催した蓄電池産業戦略検討官民協議会によると、20年に日本メーカーのシェアは21・1%に縮小した一方、中国メーカーのシェアは37・4%に増加し、うちCATLが20・1%を占めた。
パナソニックの技術者と電池関連の話をしたとき、「1865電池を開発し、46億個を生産した後、2170電池を開発し、今年までに55億個生産する予定だが、リコールが一度もない。来年に4680電池の量産を始める予定だ」と誇らしそうに語った。08年から電池の研究開発を開始したパナソニックは、電池の開発生産で輝かしい実績を持っていた。
日本の電池産業の強みは、厚みのある研究開発能力にある。国内の基礎材料メーカーが多いため、電池メーカーに安定した材料支援を提供できる。日本の電池業界は全体のレベルが高く、新材料などの研究開発がスピーディーに行われ、電池メーカーが抱える研究開発や生産上の問題をタイムリーに解決できる。それはパナソニックの高い実力にもつながっている。
しかし、日本にも弱点はある。まずここ10年ほどの間、国の経済政策の中心が金融財政政策にあり、国内のEV市場が結局形成されておらず、経済産業省の言葉を借りるなら、その原因は「産業政策や国家戦略の欠如」だ。また、パナソニックの電池業務は主に米国にあり、米国のテスラに電池を供給している。だがテスラがここ数年販売目標を達成できず、パナソニックも電池業務で利益を得られなかったため、経営陣は電池事業への追加投資をなかなか決意できていない。
EV市場の将来性を見据えて、パナソニックは今年2月に和歌山県に800億円の投資を決定した。これは日本ではわりと大きな電池投資のプロジェクトだが、中国と比べると、パナソニックを代表とする日本企業の投資規模はかなり小さい。
筆者は、日本企業の技術的な特徴を十分に発揮できれば、電池の分野で再び優位に立つ可能性は非常に高いと思う。その時、CATLの麒麟電池もパナソニックの4680電池も、将来のEV市場で新エネルギー車の発展と普及に大きな役割を果たすだろう。