安全保障分科会 対話を堅持し「陣営化」回避

2023-01-09 19:33:41

王焱=文


安全保障分科会では、オンライン形式で開かれた。中日両国の安全保障防衛分野の専門家十数人が、「アジアの平和と安定に向けた中日両国の責任」のテーマを巡り率直に意見を交換し、それぞれの立場を明らかにするとともに、多くの前向きなコンセンサスを形成した。 

  

双方の利益を損なう「陣営化」 

昨年2月に勃発したロシアウクライナ衝突は、アジアと遠く離れているものの、北東アジアの安全情勢にも波及している。中国側のパネリストは、中米関係などの要因の変化の影響に加え、北東アジア地域の安全保障の枠組みに「陣営化」の傾向が現われていることに注目している。日米韓3カ国の同盟関係がさらに強化され、政策的な協調や情報の共有、軍事演習訓練などの分野における協力がさらに緊密になっている。 

中国軍事科学院国家ハイレベルシンクタンク学術委員会の委員で、同院の元中米防衛関係研究センター主任の姚雲竹氏は、地政学的な特殊性のため、北東アジアは東南アジアに比べて早くから「冷戦」に類似する兆候が現れており、地域各国間の障害と不信感を増していると指摘。中日双方は地域内の大国として、安全保障政策を調整する際に、この地域にとって最大の長期的な利益になるためにはどうすべきか、より慎重に考えるべきだとした。 

中国社会科学院日本研究所副所長の呉懐中氏も、最近日本が軍備を絶えず強化し日米同盟を強化していることは、北東アジアの「陣営化」をさらに促すことになり、互いの戦略的環境や中日関係にもマイナスになると懸念している。 

多くの日本側パネリストも、互いに張り合う軍備競争は、地域の緊張スパイラルを高めるだけだと認識している。宮本アジア研究所代表で元駐中国日本大使の宮本雄二氏は、中国の懸念に理解を示した。宮本氏は、日米中3カ国はいずれも国連憲章を支持しており、イデオロギー的な対立があってはならず、米中の対峙も日本の国益にならないとの考えを示した。 

  

比較的安定している台湾海峡 

日本側パネリストには、日本の防衛強化の動きは決して中国を封じ込めようとしているのではなく、発生の可能性がある台湾海峡での衝突に対応するためであり、いったん台湾海峡で軍事衝突が勃発すれば日本に波及することが懸念される、と指摘する人もいた。 

これに対し複数の中国側パネリストが、中国大陸の台湾地区に関する政策は全般的に変わっていないと答え、平和的な統一を目指しているが武力行使の放棄は約束していないと述べた。これは台湾の独立勢力を抑止するためであり、また外部からの軍事的干渉を阻止するためでもある。地域の安全を守るという観点から日本側がなすべきは、自らの台湾政策に変わりがないとより鮮明に表明することだとした。 

中国人民大学国際関係学院の教授で同大学米国研究センター主任の時殷弘氏は、ペロシ米下院議長(当時)による台湾地区訪問で台湾海峡の情勢は一時的に緊張が高まったが、今のところ台湾海峡の実質的な状況は相対的に安定しており、中米双方とも台湾問題での武力衝突は望んでいないと述べた。 

 

中日関係もガードレールが必要 

前半の議論を経て、中日のパネリストは、安全保障の分野での対立は中日双方に有益ではないと考えたが、現実にはそれぞれの立場も存在した。両国がいかに対立をコントロールし、北東アジアの平和と安定を守る責任を尽くすか――これが次第にフォーラムに参加したパネリストの議論の重点となっていった。 

参議院議員で元防衛大臣政務官の松川るい氏は、他国と同様に日中双方の外交担当と防衛担当の閣僚2人による「2+2会合」を開くことを提案。防衛部門の参加と意思疎通、交流は、疑念を減らし安全保障での誤った判断を防ぐのに有益であると述べた。 

北京大学国際戦略研究員院長で同大国際関係学院教授の于鉄軍氏は、この提案に賛成を示した。于教授は、中日関係は中米戦略競争の最前線であり、中米関係はガードレールが必要であり、中日関係もガードレールが必要だと指摘。中日の安全保障関係は軌道を外れず、混乱を助長せず、長期的な展望に着目する必要があると述べた。また于教授は、日本は全ての先進国の中で最も中国を理解しており、両国は東洋の知恵を持ち、それは理解と寛容であると述べた。さらに中米の戦略競争において、日本が橋渡しと緩衝の役割を発揮することを期待した。 

北京大学国際関係学院副院長で国際戦略研究院副院長の帰泳濤氏は、双方は対話を通して互いの誤解を解き、相互理解を深めるため、最大の努力を尽さなければならないと指摘した。 

2時間の議論が過ぎても、パネリストたちは意を語り尽くせなかった。最後に、分科会の中国側の司会者で元党中央外事弁公室副主任、元空軍副司令官、第12期全国人民代表大会外事委員会委員の陳小工氏が以下のように述べて議論を締めくくった――中日間の戦争は中国人民の心の傷である。しかし大多数の中国人は、日本を理性的に認識しており、日本には中国が学ぶべき点が多くあると考えている。われわれの今日の対話がどんなに激しくとも、両国関係を素晴らしい方向に発展させる方法が見つかることを常に願っている。

 

 

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