PART1 世界平和への責任を再確認

2023-01-09 19:40:48

沈暁寧=文

昨年12月7~8日、中国国務院新聞弁公室と日本の外務省による後援、中国国際広報集団(中国外文局)および日本の言論NPOの共催で、第18回「北京―東京フォーラム」がオンラインとオフライン形式で開催された。2日間に及んだ議論には、中日両国の政治、経済、外交、安全保障、メディア、デジタル技術などの分野から200人以上のゲストが参加し、「世界の平和と国際協調の修復に向けた中日両国の責任 中日国交正常化50周年で考える~」というテーマについて、率直かつ誠実な交流と忌憚のない議論が行われた。その中で、平和秩序の維持、政治的相互信頼の増進、経済貿易協力の深化、安全保障の強化、メディアの責任の明確化、デジタル経済の発展といった重要な議題にまつわる踏み込んだ意見交換や提言がなされ、コンセンサスがまとめられた。 

 

新時代の関係づくりを 

12月7日、第18回「北京―東京フォーラム」が北京と東京で同時に開幕した。 

開幕式では、中国共産党中央政治局委員国務委員兼外交部長の王毅氏がビデオメッセージで式辞を寄せ、次のように述べた。今年(2022年)は折しも中日国交正常化50周年に当たり、来年は中日平和友好条約締結45周年を迎える。中日双方は信義をもって付き合い、政治的約束を固く守る必要がある。互いを高め合い、協力ウインウインを堅持する必要がある。誠意を持って向き合い、平和的共存のために力を注ぐ必要がある。心を通い合わせ、友好の基礎を育む必要がある。原則を堅持し、公正な道理と正義を守り、中日関係が正しい方向に沿って引き続き安定的に前へと進むよう後押しし、新時代の要請にかなう中日関係を共に切り開き、力を合わせてアジアの発展と振興という新紀元を打ち立てる必要がある。 

中央宣伝部副部長の孫業礼氏はオンライン形式で行った基調講演の中で、次のように指摘した。今年はちょうど中日国交正常化50周年に当たる。双方は当時の初心を振り返り、平和と友好の正しい方向性をつかむべきだ。経済貿易上の協力を深化させ、互恵ウインウインという利益上の結び付きを緊密にすべきだ。人的文化交流を推し進め、両国の友好における民意の基礎を固めるべきだ。協調協力を強化し、世界の繁栄と安定的発展を促すべきだ。双方のメディアとシンクタンクが交流および協力により力を入れ、理性的な声を伝え、優れた知見をささげ、中日友好に資する広範な共通認識をまとめるよう願っている。また、青少年の交流が深まり、両国の友好の基礎が強固なものとなるよう望んでいる。 

福田康夫元首相は基調講演の中で次のように提起した。日中共同声明と日中平和友好条約は日中関係の基本となる枠組みであり、双方の平和友好協力の基礎を打ち立てた。皆さんが初心を振り返り、新時代の要請にかなう日中関係の構築を推し進めるために努力することを願っている。また、日中双方が交流の拡大と深化を通じ、相互信頼および相互尊重を促進するよう望んでいる。日中両国は今日の国際情勢の中、両国民が率直かつ誠実に付き合い、手を携えてウインウインの関係を築き上げるようにする。 

林芳正外務大臣はビデオメッセージの中で、日中国交正常化から50年間、両国首脳の戦略的思考と政治決断により、双方は政治経済文化人的交流などの分野で着実な進歩を遂げてきたと述べた。また、林外務大臣は、現在両国は広大な協力の余地を持ち、数多くの共通する課題にも直面しており、日中両国は地域および世界の平和と繁栄に重要な責任を負う大国として、率直かつ誠実な対話と踏み込んだ協力を必要としていると指摘した。 

中国国際広報集団総裁(中国外文局局長)の杜占元氏は中国側主催を代表して行ったスピーチの中で、次のように語った。両国関係が新たな50年へと入る重要な節目の時期に、今回のフォーラムは「世界の平和と国際協調の修復に向けた中日両国の責任」をテーマとして、中日両国の関係で要となる問題ならびにそのグローバル発展に対するプラスの影響について議論を行い、双方の政治的相互信頼と各分野での交流を増進させ、共に素晴らしい世界を築くための知恵を結集させるプラットフォームを提供する。両国の有識者が中日関係の長期的かつ安定的な発展に寄与し、中日両国の素晴らしい未来を築き上げる後押しとなるよう思想と知恵をささげ、友好の声を発することを願っている。 

大和総研名誉理事の武藤敏郎氏は日本側主催を代表して行ったスピーチの中で、今日の世界にはさまざまな問題が存在し、われわれは国連を中心とする国際的なルールに基づき、国際協調によって世界の平和秩序を打ち立てるべきだと述べた。また、同氏はこのたびのフォーラムにおいて、日中双方のゲストによる率直で誠実な対話を通じ、いかにしてアジアおよび世界の平和と安全保障のために貢献できるかを共に考えていきたいとした。 

今回のフォーラムは2日間にわたって開催され、平和秩序、政治外交、経済、安全保障、メディア、デジタルの六つの分科会に加え、青年対話、共同世論調査に関するセッションが行われた。 

  

平和協力を堅持し、新たな章を 

12月8日、第18回「北京―東京フォーラム」が閉幕した。 

孔鉉佑駐日本中国大使と垂秀夫駐中国日本大使はフォーラムの閉幕式でそれぞれ式辞を発表した。孔大使は次のように指摘した。50年前の中日国交正常化実現は、中日の平和と友好、協力ウインウインという新たな章を開き、地域と世界の平和および安定的発展を守るために重要な貢献を果たした。50年後の今日、百年間なかった変動の加速に直面し、史上まれにみる新型コロナウイルス感染症の影響は根深く、地政学的情勢は急激に不安定化し、世界経済の回復力は弱く、世界規模の課題は日増しに際立っており、中日双方は平和的発展の道を歩むことを堅持すべきだ。「互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」という重要なコンセンサスを堅持すべきだ。共にアジアの平和安定と団結協力を守るべきだ。国際的な公平正義を断固として守るべきだ。双方が共に努力し、新時代の中日関係の素晴らしい未来を絶えず切り開き、中日の平和と友好、協力ウインウインという新たな章を引き続きつづっていき、地域および世界の平和と安定、団結と協力、発展と繁栄を促進するために新たにより大きな貢献を果たすことを期待する。 

垂大使は式辞の中で次のように指摘した。日中国交正常化から50年間、日中関係は紆余曲折を経てきた。喜ばしいことに、今年11月には日中両国首脳がバンコクで会談を行い、今後の安定的かつ建設的な両国関係構築のためのコンセンサスをまとめ、方向性を明確にした。日中両国が全方位的な交流を進め、特に首脳間の意思疎通を保つことは、両国が政治的相互信頼の基礎を着実に築く上で重要な意義を持っている。日中両国は永遠の隣国である。歴史上、日本は中国から漢字を取り入れ、自らの言語文化を発展させた。また、20世紀初頭には、梁啓超などの知識人が、当時の新興メディアを通じて政治や経済、社会にまつわる「和製漢語」を中国に取り入れた。このように日中は相互に学び合い、両国社会の発展を推し進めてきた。双方が今後、互いに学び合い、助け合う精神を継承し、発揚していくことで、日中関係をより高いレベルに押し上げることを願っている。 

閉幕式では、中日のパネリストの代表が各分科会で行われた議論について総括を行った。 

平和秩序分科会に関して、中国社会科学院日本研究所所長の楊伯江氏は、双方のパネリストは国連憲章の精神と今日の国際的な平和秩序について率直で誠実な対話を行い、国際社会は安定的な大国の安全保障協力関係構築にいっそう力を入れ、改革を通じて国連の役割をさらに強化向上させるべきことで考えが一致したと指摘した。それに加え、双方は中日関係の重要性について、両国による国際的な平和秩序の再建に関する協力の強化や、それぞれが対話により力を入れることなどでコンセンサスが得られたとした。 

言論NPOの工藤泰志代表は、ロシアウクライナの衝突に関する双方の見解に違いはあったが、共に国連を基礎とする平和秩序の再建に期待を示したと述べた。また、工藤代表は、このように対話を通じて相違を乗り越え、コンセンサスをまとめるプロセスは、フォーラムの役割と意義を示していると指摘した。 

政治外交分科会に関して、中華日本学会会長の高洪氏は次のように語った。本分科会では、政治外交というツートラックの対話に成功した。双方のパネリストは率直かつ誠実で、意義に富み、充実した交流を通じ、現在両国が直面している共通の課題を整理し、激動し目まぐるしく変化する世界情勢の下、いかにして中日関係を維持し、改善すべきか議論を行った。各パネリストはそれぞれの主張を述べただけでなく、多くの価値のある提言を行い、それらにまつわるいくつかの新たなコンセンサスをまとめた。 

工藤代表は、双方のパネリストによる両国の相互信頼メカニズムの構築と日中の平和を守る呼び掛け、今回のフォーラムの世論調査で双方の回答者が両国の平和的共存を望んでいたという結果から、両国が政府および民間レベルでいずれも平和維持に力を注いでいることが明らかになったとし、これは本分科会で示された大きな注目点だとの見解を述べた。 

日興リサーチセンター株式会社理事長の山口廣秀氏はそれに付け加えて、双方は世界の経済情勢が深刻であり、日中両国は世界経済の分断発生を回避し、デカップリングの現実化を防ぐべきだと考えていると指摘した。 

メディア分科会に関して、中国外文局アジア太平洋広報センター総編集長の王衆一氏は次のように述べた。双方のパネリストは今回行われた最新の世論調査の結果と合わせて、それぞれのメディアの性質や特徴について議論を行った。また、ジャーナリズム観の差異を乗り越えようとし、互いに踏み込んだ交流を行いたいという願いを示した。そして、フォーラムの成果について深く掘り下げた報道を行い、両国民の幅広い議論を喚起することで、相互理解を深めるとともに互いの好感度を高め、両国民の民意の基礎を改善する呼び掛けを行った。さらに、双方のゲストはメディア交流を推進するとともに、両国の民間交流と青少年交流を積極的に推し進めることへの期待を示した。 

東京大学大学院総合文化研究科教授の川島真氏は、日中両国の政治体制が異なることから、双方のメディアの立場にも違いがあり、議論の中で双方のメディア代表者が述べた批判や説明はいずれも理解できるものだとの見解を示した。川島教授は、まさしくこのような私心を挟まず誠意に満ちたムードの中、双方は両国メディアが民間交流を促進する上で積極的な役割を果たすべきだとのコンセンサスをまとめたと強調した。 

デジタル分科会に関して、科技日報社総編集長補佐の王俊鳴氏は、双方のパネリストが四つのコンセンサスで合意したと述べた。第一に、デジタル経済は中日両国の発展における新たなチャンスであり、双方はデジタル社会の発展とサイバースペース運命共同体構築のために貢献を果たすべきこと。第二に、双方は共にオープンかつ公平で差別のないデジタル経済の発展環境をつくり上げるべきこと。第三に、中日はデジタル経済分野で幅広い協力の見込みがあり、双方は医療介護グリーン低炭素金融テクノロジーなどの分野における協力モデルメカニズムを模索できること。第四に、双方は引き続きデジタル技術分野のイノベーション人材を共に育成すべきことだ。 

NTTデータ株式会社相談役の岩本敏男氏は、日中両国は政治体制が異なり、デジタル経済分野における具体的な運営ルールも同じではないが、双方のパネリストは両国がこれらの障害を乗り越えて共通のルールを定め、中日におけるデジタル経済産業の協力と発展を後押しできると考えていると述べた。 

安全保障分科会については、北京大学国際関係学院副院長の帰泳濤氏が次のように総括した。双方は現在の北東アジアにおけるリスクをいかに評価するか、北東アジア地域の平和と安定をいかに守るかということについて率直かつ誠実な議論を行い、安定を中日の安全保障関係における総体的目標とすることを提起し、中日の安全保障分野における「ガードレール」を築き上げ、双方の軍事面での交流を速やかに再開させるなどの提言を行った。双方の間には安全保障問題でなおも相違が存在するが、交流と対話を強化し、誤解をなくし、相互信頼を増進することが今回の分科会で合意をみたコンセンサスとなった。 

宮本雄二元駐中国日本大使は、双方のパネリストは十分な意見交換を行い、議論の中でそれぞれの認識の違いを埋める努力をしたと述べた。また、宮本元大使は、われわれが直面している世界と東アジア地域における安全保障情勢の緊張について、双方のパネリストはいずれも危険の放置による事態の悪化はあってはならないとする緊迫感と責任感を持っていると指摘した。 

それに続き、工藤代表は「第18回『北京―東京フォーラム』平和協力宣言」を読み上げた。これは平和と協力の精神を示すコンセンサスであり、今回のフォーラムにおける双方のパネリストの知恵が結集された重要な成果であって、新時代の要請にかなう中日関係の構築でポジティブな役割を果たすだけでなく、国際協力の推進と世界規模の課題の解決をリードするために東方の知恵をささげるものにもなることだろう。 

閉幕式の終わりには、中国国際広報集団副総裁(中国外文局副局長)の高岸明氏が次のように述べた。今年、中日両国は国交正常化50周年を迎え、来年は中日平和友好条約締結45周年でもあり、中日関係はまさに過去から未来へとつながる重要な節目の時期にある。今回のフォーラムにおける議論の中で提起された意見や提言、発せられたポジティブな声が、次の50年の歩みをスタートさせるものとなり、中日関係の安定的で長期的な発展を後押しし、深刻かつ複雑に変化する国際情勢にプラスの力、安定的な力を加えると確信している。フォーラムの中国側主催として、中国外文局は引き続き日本側主催の言論NPOと共にこの対話と交流のプラットフォームをしっかりと維持し、構築して、中日関係の長期的で健全かつ安定的な発展を促すために提言を行い、ささやかながら貢献を果たしていく。こうして、第18回「北京―東京フォーラム」は成功裏に幕を閉じた。 

  

熱心に耳を傾ける北京会場のゲスト 

  

「第18回『北京―東京フォーラム』平和協力宣言」概要 

世界やアジアの歴史的な困難にどのように向き合うのかを巡り、中日のパネリストは率直な対話を行い、以下の中核的な合意に達した。 

一つは、各国の主権と領土の一体性を尊重し、どんな紛争も、最大限の努力を尽くして平和的に解決すること、そして二つ目は、共に国際協力を推進し、世界の分断傾向をこれ以上、助長させないことである。 

そのためには中日関係のさらなる改善も不可欠である。中日双方は、この50年間に合意した四つの政治文書の意味を再確認し、新時代の要求に合致する中日関係を共に構築していくべきだ。 

その環境づくりを、政府に一歩先駆けて取り組むのが、民間の対話の役割である。こうした強い思いから、私たちは以下の合意をまとめた。 

これを「平和協力宣言」として公表する。 

1.世界の平和と安全を維持するために世界が力を合わせることは、国連憲章が掲げる理念である。私たちはこの理念に賛成し、国連憲章を基礎とする世界の平和秩序を擁護し、どんな紛争も平和的手段で解決すべきと考える。双方はウクライナ情勢の現状を憂慮しており、ウクライナ危機のエスカレートの回避、平和的解決につながるあらゆる努力を共に支持する。 

2.今回の世論調査では、周辺地域の安全保障情勢を懸念し、不戦や紛争回避を希望する声が、両国で増えていることが明らかになっている。私たちは、こうした民意を重視し、全ての関係者に地域の緊張を高める全ての行動を自制することを求める。中日両国は事故の防止や紛争を回避するために海空連絡メカニズムの一層の強化を行うほか、安全保障課題を考える定期的な協議を早期に始めるべきである。また、北東アジア全域で、建設的な安全保障関係を構築するため、多国間の対話を強化すべきである。 

3.中日両国が、地域の平和、安定と繁栄発展に責任を持って取り組むことは、国交正常化以来の合意である。両国は、これまでの政治文書に反映された合意が、国民間の幅広い理解を得るために一層の努力をする必要がある。両国はこれらの合意の今日的な意味を再確認し、世界的な視野を持って、新時代にふさわしい中日関係をどう構築するのかについて協議する。そのためにも中日両国は政府間だけではなく、民間も含めたあらゆるレベルの対話を強化し、必要に応じて、新しい合意を検討すべきである。 

4.両国は、包摂的で地球環境に配慮した持続可能な世界経済のために共に努力すべきである。そのためにも、国際協調や国際法に基づく国際秩序の擁護、共通のルールに基づく自由経済の修復は堅持しなくてはならない。中日両国は、世界の分断傾向をこれ以上悪化させるべきではなく、世界経済のブロック化を避けるべきである。経済の全てを安全保障で考えるべきではなく、過度の経済混乱を招かないように、両国政府は協力を前提に話し合いを始めるべきである。 

5.アジアの未来で両国に問われるのも、平和と協力発展に向けた一層の努力である。両国はそのためにも相互信頼や共通利益での協力を具体化すべきである。政府間の信頼関係の再構築は急務であり、先日の首脳会談を政府間交流の正常化につなげるべきである。歴史的な困難が広がる中で、民間の取り組みが勢いを失うことは致命的である。コロナで国民の往来が影響されているが、コロナ対策でも両国は協力を進め、渡航の正常化に向けた環境づくりに取り組むべきである。 

 

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