PART6 不動産市場の安定発展確保

2023-03-13 10:22:00

李士萌=文

中央経済活動会議が配置した今年の五大任務の一つは、「重大な経済金融リスクを効果的に防止解消する」であり、「不動産市場の安定的な発展を確保する」ことはリスクを防ぐための最も重要な任務とされている。不動産業の好循環は経済の健全な発展に対して非常に重要な意義を持っている。そのため会議では、不動産市場の安定した発展を確保し、住宅の実需または買い換え需要をサポートし、住宅は住むためのもので投機のためのものではないという位置付けを堅持し、不動産業の新たな発展モデルへの円滑な移行を推し進めなければならないということが明確に掲げられた。 

四川省巴中市通江県の公営賃貸住宅団地「民生家園」で、27の低所得世帯に公営賃貸住宅の鍵が引き渡され、住宅難の問題が解決された(vcg)


供給側と需要側双方に注力 

2021年以降、中国各地で不動産価格が下落傾向にある。これに対して、広東省都市農村計画設計研究院住宅政策研究センターの李宇嘉首席研究員は、不動産業界の最大のリスクは、業界規模の加速反応が減速反応に転化し、金融機関に貸し渋りが発生することにあると分析した。李氏は次のように指摘する。現在、不動産市場の川上と川下、供給側と需要側のリスクが比較的顕著だ。投資の伸びが鈍化し、地方財政の持続可能性におけるリスクがさらに高まる一方、不動産の売上が減少し、投融資のプラットフォームに波及している。「リスクを防ぐには資金を調達する必要がありますが、不動産市場が全体的な低迷状態なのに、進んで『落とし穴に落ちる』人はいません」と李氏は語る。 

華南理工大学経済金融学院の田秋生教授は、「『幽霊ビル(資金チェーンの断裂などが原因で、建設工事が途中で停止したままの未完成の建物)』現象は、現在の不動産市場における大きな問題です。今年の中国の不動産市場が安定的な運営を維持するために取り組むポイントは、不動産物件を期日通りに品質を保証して引き渡すことです」とし、「中央と地方政府が協力し、銀行と政府が連携し、不動産物件を期日通りに品質を保証して引き渡す上での特別借入金の規模を拡大し、不動産企業の資金不足問題を解決しなければいけません」と強調した。 

「不動産業界の再編合併の推進」に中国人民銀行と中国証券監督管理委員会(証監会)が素早い対応を見せ、中央経済活動会議終了後の5日目に証監会はホームページに、「条件に適合する不動産企業が上場している不動産企業を再編買収することを許可し、不動産業や建築業など密接に関連する業界の上場企業が不動産プロジェクトに関する再編を実施することを許可する」という文書を掲載した。これに対して李氏は、不動産市場はすでにストック時代に入っており、再編合併によって業界の需給のバランスづくり、リスクの解消を推進することができ、不動産企業が優良資産を生かすことができる一方で、再編される不動産企業もリスク資産を解消し、資源の利用効率性を高めることができると分析する。 

供給側の問題解消はもちろん、需要側の低迷状態も無視できない。江蘇省や浙江省など不動産業界への依存度が高い省では、需要刺激策を積極的に打ち出している。蘭州、広州、南京、杭州などの都市でも、住宅ローンの金利を引き下げ、積立金ローンの限度額を引き上げ、購入制限のハードルを下げることで住宅購入の需要を喚起している。 


円滑な移行が重要 

一部のコンサルティング機関は「中央の不動産業界に対する態度が軟化している」と見ているが、田氏は、このような見方はあまり正確ではなく、中央は不動産業界に対する態度を軟化させていなければ、規制も緩和していないと述べる。そして、安定第一で安定の中で前進を求める方針を実行し、不動産市場に大きな変動が生じて大きな経済金融リスクを誘発することを防止し、不動産業界の新たな発展モデルへの円滑な移行を推し進めなければならないと指摘する。 

不動産業の円滑な移行を確実に保障するため、今回の会議は一連の重点措置を打ち出した。例えば、住宅の実需または買い換え需要をサポートし、「新市民」(都市戸籍をまだ持たない、または取得して3年未満の市民)と若者などの住宅問題を解決し、長期賃貸住宅市場の形成を模索するなどだ。 

李氏によれば、住宅の実需または買い換え需要に関する政策の主な対象は、3億人にも及ぶ「新市民」層だ。「新市民」にとって家を借りたり買ったりすることは、依然として実需だ。「ストック時代において、『新市民』と若者の住宅需要は不動産業の新たな発展モデルにおける最大のニーズで、ここの有効なニーズを活性化させなければならない」と李氏は述べ、次のように分析する。新市民は不動産市場を安定させる基本的な力だが、彼らの支払い能力、将来への期待はいずれも弱い。これも長期賃貸住宅市場を発展させなければならない理由だ。その本質はハードルを下げて、都市の公共サービス、住宅消費、商業用不動産の消費から長期的に遊離している3億人以上の人々を、本格的な住宅消費に組み入れ、「借りてから買う、賃貸と購買も重視する」ことを通じて、不動産市場の好循環の基盤を整えることにある。 

「中央経済活動会議で強調された『円滑な移行』とは、必ずタイミングと程度を正確に捉え、適切に調整し、段階的に実施し、安定の中で前進を求めなければならないという関連政策や施策への要求です」と田氏は語る。今後の不動産市場と中国経済の相互作用は必ず実体経済や都市雇用などと共にバランス良く発展しなければならないと田氏は考える。 

 

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