PART1 期待と自信高める全体方針

2023-03-13 10:32:00

陳珂=文

今年の最優先事項は安定成長であり、中央経済活動会議は2年続けて中国経済に同じ基本方針を打ち出した。 

昨年の中国経済は想定外の事象の影響に耐え抜き、比較的強い粘り強さと潜在力を示した。だが中国経済が回復に向かう中、依然として多重の圧力と諸々の不確定要素に直面していることは否めず、安定成長に向けた取り組みを優先して行うことは、経済が合理的な範囲内で動くように維持し、社会主義現代化国家の全面的建設のための良いスタートを切ることにつながる。   


近年、浙江省嘉興市は積極的に太陽光発電産業を発展させ、産業チェーンの整備に取り組んでいる。昨年の同市の太陽光発電産業の規模は前年同期比73.7%増となった(新華社)

 

今までと違う「安定」 

今回の中央経済活動会議は21年に下した「三重の圧力」という判断を引き継ぎ、中国経済の回復の基礎はいまだ盤石ではなく、需要の縮小供給ショック成長期待の低下という圧力がいまだ大きいと指摘した。また、22年の中国経済の成長にはある程度の変動が起きたものの、経済発展は失速せず、構造の最適化と経済成長の質が向上する勢いも止まらなかったと強調した。 

国務院発展研究センター産業経済研究部の許召元副部長は次のように分析指摘した。中国経済は高い強靭さ、巨大な潜在力、十分な活力を有し、今年の安定成長に向けた取り組みをしっかり行う上で比較的良い基礎と有利な条件を備えている。中国は世界で最も完備された最大規模の工業体系、巨大な生産能力を有し、従来型インフラと新型インフラの建設が世界でも相対的にトップレベルだ。その一方、中国は世界で最も成長性を秘めた消費市場であり、これらの有利な要素が経済の効果的な質的向上と合理的な量的拡大の実現を推し進める上で強固な基礎を築いた。 

安定成長という最優先事項を巡って、中央経済活動会議は財政、金融、産業、科学技術、社会に関する五つの政策と六つの統一的計画を打ち出し、今年のマクロ政策の枠組みをつくった。「統一的計画を重視し、各種政策の連携と協調の強化を強調し、質の高い発展を共に促すために力を合わせることが、今年の中央経済活動会議の際立った特徴です。中央が打ち出した一連のマクロ政策は短期経済目標の実現に極めて大きく作用します」と中国政策科学研究会経済政策委員会の徐洪才副主任は語る。 

「今回の会議で打ち出された『安定』と過去3年間打ち出されてきた『安定』は意味合いが異なります」と中国国際経済交流センターの張燕生首席研究員は指摘する。中央経済活動会議の研究判断によれば、今年は世界経済成長率が減速すると見られるが、中国経済は全体的に上向きで、独自に上昇する軌道を描く。「これは経済が安定の中で前進を求めることを推し進めるために、中国が複合的な措置を実施し、『コンビネーション』を打ち出すことを意味しています。戦略的大局から出発し、国内の需要拡大への注力、現代産業体系の構築の加速、『二つのいささかも揺るがせにしない』の着実な実施、外資の導入と利用の力強さの向上、重大な経済金融リスクの効果的な防止解消などの会議で打ち出された重要な業務をしっかり行えば、中国経済は逆風下でも上昇し、穏やかに遠くまで進めるでしょう」 

「市場参入者(企業個人)は安定した経済の主なよりどころです。中国には1億5000万以上の市場参入者があり、それらは市場の『根』であり、雇用の『魂』であり、安定した経済基盤の底力と強靭さの源です」と話す中国社会科学院の高培勇副院長は次のように考える。中国経済の発展は依然として多くの困難と試練に直面しているが、すでに最も厳しい段階を乗り越えた。市場参入者が活力を取り戻し、雇用をけん引して新たな社会的富を生み出すことができれば、安定した経済という目標を中国が実現する上で十分な保障とサポートになる。 


市場参入者を元気に 

新型コロナウイルス感染症や国際情勢などの要因で、期待の低下や自信不足といった過去のある時期におけるマイナス要素が中国経済の発展の足を引っ張った。どのようにして自信と期待を高めるかが、今年の国内の需要拡大と国民経済のつつがない循環の鍵となる。 

先ごろ、浙江、江蘇、広東、四川、福建などの地方政府は地元の貿易企業が国外で注文の先取りをするように手配し、中国経済の活力を示した。前出の張燕生氏はこれに対し、企業はコロナで失った時間を取り戻し、中国経済と世界経済のつながりが途切れた3年間で生じた情報や認識のブランクを埋めようとしており、奨励すべきことだと述べる。また、これは中国経済の早期回復に社会の各界が期待と自信を強めていることも如実に表している。 

中国の消費市場、特にサービス市場の景気はすでに上向きになっている。元日と春節(旧正月、今年は1月22日)連休期間中、飲食、宿泊、観光などのサービス業における消費は回復的成長を遂げ、デパートやアミューズメント施設には混雑して活気にあふれるという光景がよみがえった。このようにして戻ってきた「活気」は、個人消費の回復の生き生きとした表れであるとともに、今後一定期間の経済の動きが全体的に好転することの兆しでもある。 

個性に富んだ多彩なテーマのイベントの開催、各種クーポンの積極的な配布、焦点を絞った小規模事業者向けの優遇政策の実施など、各地で打ち出された一連の消費促進政策は市場参入者の自信の向上を力強く支えた。春節連休中、天津が配布した「津楽購」クーポンは33億元の消費をけん引したとみられる。第9回全国大衆氷雪シーズン期間中、北京は数回にわたって市民に3万枚余りの氷雪クーポンを配り、ウインタースポーツの発展を後押ししたとともに、氷雪経済に回復のきっかけを与えた。浙江省では正月用品の購入時期に250余りの特色ある販売促進イベントと外資系企業誘致資金導入イベントを開催して、16億元以上ものクーポンを配った。「クーポンの配布は市場という『雪解け水に満ちた春の池』をかき混ぜ、新たな消費と成長の風を吹き込み、『消費の拡大–生産性向上のための投資の増加–収入増加–消費拡大』という好循環をつくるのに役立った」と国家情報センタービッグデータ発展部の楊道玲研究員は話す。そして次の段階でさらなる有力な措置を取り、消費能力を高め、消費環境を改善し、消費の潜在力を十分に発揮させるべきだと考える。 

「新型コロナ対策期間中、中国が実施した一連の経済政策は持続的に力を発揮し、経済の下振れ圧力に耐え切りました。そして政策と同じぐらい重要なのが、期待と自信です」と張燕生氏は語る。市場への期待が安定してこそ市場が安定し、市場参入者の自信が高まり続け、経済の内なる生命力をかき立てる。「市場参入者の自信を向上させる鍵は、中小企業の積極性を守って市場参入者の活力を呼び起こすことです。中国共産党中央政治局会議は、社会全体の起業の活力を奮い立たせ、幹部が恐れずやり遂げ、地方が恐れず切り開き、企業が恐れず実行し、人々が恐れず創造するようにさせなければならないと打ち出しました。これはまた、地方政府とさまざまな市場参入者が力を合わせて質の高い発展を推し進めることを奨励する明確なシグナルを発しています」 


貴州省貴定県の菊花工場で菊の日干し作業をする村民たち(昨年10月、新華社)

  

コロナ対策と経済発展の両立 

昨年12月26日、国家衛生健康委員会は「新型コロナウイルス感染症『乙類乙管』に関する全体案」を発表し、新型コロナウイルス肺炎という名称を新型コロナウイルス感染に変更するとともに、新型コロナウイルス感染を「乙類甲管」から「乙類乙管」に調整した。この重要な調整の実施に伴い、「経済の再起動」が中国の各業界の新たなテーゼになった。 

この3年近く、党中央は新型コロナ感染症の予防抑制と経済社会の発展を効率的かつ統一的に計画し、人民の生命の安全を最大限保障し、経済社会の発展に対する新型コロナの影響を最大限減らし、最小の代償で最大の予防抑制効果を成し遂げた。ウイルスの変異とワクチン接種の普及、予防抑制の経験が蓄積されるにつれ、中国は感染症の予防抑制と経済社会の発展の統一的計画において新たな情勢と任務に直面し、時勢に合わせて絶えず感染症の予防抑制措置の最適化と調整をし、常態化した感染症の予防抑制の中で生産生活秩序の穏やかな回復の推進を速めることを、力を余すことなく堅持しなければならない。 

「防疫の新たな段階に入り、新型コロナの予防抑制と経済社会の発展を統一的に計画する上で最も適切な均衡点を見つけるよう努力しなければいけません。健康を守り、重症化を防ぐことに力を入れ、流行期を無事乗り越えて社会秩序の安定を確保するとともに、成長雇用物価を安定させる業務を優先的に行い、重大なリスクを効果的に防止解消し、経済の全体的な好転のために堅固な基礎を築き上げなければいけません」と語る中央財政経済委員会弁公室の韓文秀副主任から見て、新型コロナの予防抑制措置の最適化が経済運営に与える影響は、「Jカーブ効果」に似ている。すなわち、経済の動きは短期的に阻まれるものの、年間を通して大きなプラスが生じる。「今年上半期、特に第2四半期には生産生活秩序が早期回復し、経済の活力の発揮も早まると思われます。中国は経済の全体的な好転を推し進める上で、自信と環境と能力がそろっています」 

先ごろ開かれた中国財富管理50人フォーラムの年次総会で、中央財政経済委員会弁公室の尹艶林副主任は次のように述べた。中国経済の発展が長期的に上向くという基本的傾向は変わっておらず、経済のファンダメンタルズが強く、潜在力が大きく、方向調整できる空間が広いという基本的特徴も変わっておらず、新たな成長エネルギーが強大で経済構造の調整と最適化が好ましい状態にあることも変わっていない。新型コロナの予防抑制政策の最適化と実施に伴い、人や物の流れがさらに滞りなく行われ、社会的再生産の各段階や経済と社会生活における各分野の回復が早まり、経済の活力も効果的に発揮されると見込まれる。 

 

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