PART1 党の百年不変の目標と約束
沈暁寧=文
昨年4月、習総書記は海南省を視察し、五指山市毛納村で現地の幹部と村民たちと親しく言葉を交わした(新華社)
この10年間、中国共産党の指導の下、中国は絶対的貧困を根絶し、小康社会を全面的に完成させ、中国人民は共同富裕実現という素晴らしい目標への新たな道を歩み出した。しかし中国はまだ社会主義の初級段階にあり、発展途上国だ。発展の不均衡と不十分の問題が依然際立つ中、14億の中国人の共同富裕への夢をどのように理解し、またどのように実現すべきだろうか?
創立以来の変わらぬ目標
近代中国は帝国主義、封建主義、官僚資本主義の「三つの大きな山」に虐げられ、極度の貧困は中国人民を長きにわたりさいなむ悪夢となった。1921年に中国共産党が創立し、「人民に良い暮らしを送るようにさせる」は、党が全国の人民を団結させ率いて民族独立と人民解放を求める闘いを巻き起こす根本的な目的になった。
49年に新中国が成立し、中国共産党が中国人民を率いて社会主義制度を次第に確立し、社会主義建設を始め、全人民の共同富裕実現のための政治的前提条件と制度的基礎を打ち立てた。53年12月、党中央が明確にした「農民を次第に貧困から完全脱却させる」という目標の中で、毛沢東主席は初めて「共同富裕」の概念を打ち出した。
長年の模索の末、78年から実施し始めた改革開放政策は中国を人民富裕と国家富強の実現に向かう「高速道路」に走らせた。90年12月、中国の改革開放の総設計士と呼ばれる鄧小平氏は、「社会主義最大の優位性は共同富裕だ」と指摘した。
鄧小平氏以降も中国共産党は共同富裕実現のために模索し、その内容を豊かにし、刷新し続けた。江沢民氏は、共同富裕の実現は「社会主義の根本的な原則と本質的な特徴」と述べ、胡錦濤氏は「全人民に改革発展の成果を分け与え、全人民を共同富裕へ向かって着実に前進させる」と強調した。
2012年11月の中国共産党第18回全国代表大会(第18回党大会)後、中国の特色ある社会主義は新時代に入った。習近平総書記を核心とする党中央は人民中心の発展理念を堅持し、新時代の共同富裕実現に関する一連の重要な戦略思想を提起した。17年10月、習総書記は第19回党大会で、今世紀中頃までに「全人民の共同富裕の基本的実現」を達成するというスケジュールを明確に打ち出した。21年8月、習総書記は共同富裕の実現についてさらなる計画と配置を行い、「共同富裕とは社会主義の本質的要請であり、中国式現代化の重要な特徴であり、人民中心の発展思想を堅持し、質の高い発展の中で共同富裕を促さなくてはならない」と強調した。
これらのことから、中国共産党の百年間の奮闘の歴史はすなわち、中国人民を団結させ率いて共同富裕の目標に絶えずまい進した歴史だと理解できる。
正しい富の分配
改革開放初期に鄧小平氏が打ち出した「一部の地域や人が先に裕福になり、その他の地域や人々をけん引するとともに助け、共同富裕を徐々に成し遂げる」という「先富論」は、貧困から脱却して裕福になろうとする中国人民の向上心と創造力を刺激した。それによって、よく働いて富を築いた企業や個人を続々と輩出した。そして彼らに影響された大勢の人々が裕福を求める闘いに身を投じた。
改革開放の事業が進み続けた45年間で、中国社会は大量の資金、技術、経験、人材を蓄積した。これらの資源は党と政府の「的確な貧困脱却」政策の下、1億人余りの貧困人口の貧困脱却を支え、中国が貧困脱却の堅塁攻略戦に打ち勝つ上で重要な役割を発揮した。
共同富裕の実現に向けた取り組みから分かるように、中国の地域間の生産要素賦存と発展の基礎の差が生み出す困難性と複雑性によって、共同富裕の実現が長期的な任務になることは避けられず、地道に進め、段階的に推進しなければならない。そのため、「先に裕福になった者たちが後から裕福になる者たちをけん引する」ことはいまだに共同富裕実現の要となる方法なのだ。
天津大学マルクス主義学院の王軍旗教授は、「先に裕福になること」を奨励するのは発展の原動力を呼び起こすためで、「後から裕福になる者」をけん引するのは社会の公平性を示していると考える。「確実に労働所得を守り、財産権と知的所有権を守り、法に基づいて裕福になることを守り、企業家の積極性を十分に引き出し、各種資本の規範的で健全な成長を促進しなければなりません。そして公共・慈善事業の規範化した管理を強化し、税制優遇政策を整備し、高所得層と企業に社会へさらに多くの還元を行うよう奨励しなければなりません」
中国社会科学院農村発展研究所の党国英研究員は、共同富裕は平均主義でもなければ、「裕福な者の富を奪って、貧しい者に分け与える」ものでもなく、社会的富を増加する効率、都市・農村部の公共サービスの均等化、社会の公平性に対する人民の共通認識を向上させるという三者を結合させた社会福祉の分配状況だと述べる。
まさに習総書記が昨年の世界経済フォーラムのビデオ会議で、中国は共同富裕を実現するとしたが、それは平均主義ではなく、まず「パイ」を大きくしてから合理的な制度設計に則って「パイ」を適切に切り分けるものであり、潮が満ちれば船は高く持ち上げられ、それぞれが適所で活躍する場が与えられ、発展の成果がより多く、より公平に全人民に恩恵をもたらすようにしなければならないと強調した通りである。
現在の中国に目を向けると、科学者は実験室で研究に没頭し、技術作業者は作業場で工業用ロボットと足並み揃えて生産性を高め、配達員は町中を駆け回り、コミュニティーワーカーは現場で各家庭のために働いている。無数の中国人が、自国の質の高い発展の実現のために努力する中で、自身の運命を変えている。そして共同富裕は、まさに全中国人民の共同の努力によって実現するのだ。
習総書記が「幸せな生活は誰もが奮闘して手に入れるものであり、共同富裕は勤労と知恵によって生み出される」と指摘したように、共同富裕に通じる道の上では誰もが受益者でも貢献者でもあり、全員が参加し、力を尽くせば、誰もが享受できるようになる。
着実にコツコツと
全国の1人当たり可処分所得は、1978年の171元から2020年には3万2189元に増え、就業者数は1949年の1億8000万人から2020年には7億5000万人に増えた。9年間の義務教育の普及率は95%以上に上り、4億人を超える中所得者層がおり、年々増え続けている。これらは白書「中国の全面的な小康」に掲載されているデータであり、中国が小康社会を全面的に完成させ、共同富裕に向かう道をまい進し続ける中で生み出した輝かしい成果を表している。
共同富裕の実現は人民共通の願いだ。人々が一番関心を寄せ、人々にとって最も身近で、また最も現実的な利益に関する問題について、習総書記は次のように指摘した。「中国は現在、そして長期にわたって社会主義の初級段階にある。段階を飛ばすということはできないが、共同富裕の段階的な実現に手をこまねいているということではない。今ある条件に基づいて、できることは可能な限り行い、大きな勝利のために小さな勝利を積み重ね、全人民の共同富裕という目標に向かって前進し続けなければならない」。要するに、できることは全力で行うが、無理はしないということだ。
共同富裕を実現するために、できることを全力で行うことは、受け身になってはならず、目標を見定めたら直ちに調整と整備を行わなければならず、条件がそろったら全力で行い、より強い力とより実務的な措置で、確かな恩恵を人民にもたらさなければならない。
無理はしないということは、共同富裕を推し進める中で発展の実際の状況を十分に考慮しなければならないという意味だ。2021年に開かれた中央財経委員会第10回会議では、共同富裕に対して全面的な配置が行われた。会議の精神から、社会保障の水準向上でも、可処分所得の増加でも、あるいは支援政策を策定し農村振興を推し進めるにせよ、非現実的や一足飛びの取り組みは行えず、高すぎる目標を設定したり興味をかき立てようとしたりして人民に実現不可能な約束をしてはならないということが読み取れる。民生の保障と改善は経済発展と財政の持続可能性の上に成り立ち、基礎的で包摂的かつ下支えとなる民生保障建設を重点的に強化しなければならない。現状に立脚し、遠くまで見つめ、需要と可能性を総合的に考慮し、経済社会の発展の法則に従って段階的に進んでこそ、共同富裕を推し進める上で新たな進展を勝ち取り続けられる。
物質面と精神面を充実
「一鉢の金、一鉢の銀、そして一鉢の粒胡椒……」。3月12日の夜、海南省海口市の大坡村にある広場で、「村歌」の『大坡胡椒』のメロディーに合わせ、村民の蔡銀花さん(42)と十数人の村の女性が楽しそうにダンスを踊っている。夜9時、蔡さんは家に帰る途中、村のブックバーでインターネットマーケティングの書籍を真剣に読む夫を見掛けた。
10年近い発展を経て、大坡村は中国最大の現代的な胡椒生産拠点となり、その生産量は中国全体の30%以上を占め、昨年の生産額は2億800万元だった。裕福になった大坡村には、村民のための文化室やブックバーができ、撮影会や座談会が開かれ、村民の文化的な生活を豊かにしている。
大坡村駐在第一書記の黄一笑さんは、近年の農村文化振興によって村の文化的気風と知識習得の気運が日に日に高まり、村民も精神面をますます積極的に向上させていると語る。「村民は労働の傍らに本を読んで知識を増やし、写真を撮って故郷の美しさや労働の美しさを記録し、ネットで紹介することで多くの観光客を引き付けています。今は中華の敬老の伝統に関する石碑群の建造を計画中です」。それより少し前の村民大会では、知見を広げた村民たちが、大坡村を海南胡椒貿易センター、産業データセンター、植物品種保護センターにつくり上げる一体化した産業発展の枠組みの構築に自信と意欲をみなぎらせた。
今日の精神的な豊かさは、中国人の幸福度を推し量る重要な尺度となっており、人民の素晴らしい生活への憧れを満たす大事な要素となっている。共同富裕を実現する中、物質的な豊かさと精神的な豊かさは互いに補い合うことで相乗効果を発揮することができる。
習総書記は、「共同富裕とは人民大衆の物質的生活と精神的生活が共に豊かになることだ」と指摘した。共同富裕を地道に推し進める上で一つの重要なポイントは、「豊かなポケット」と「豊かな頭脳」の関係を適切に処理することだ。各家庭を「生活が豊かになって衣食に事欠かない」ようにさせるとともに、人々を「礼節や栄辱を知る」ようにもさせ、最終的に人々の全面的な発展と社会の全面的な進歩を促さなければならない。
「人民の幸福と民族の復興の追求」は、中国共産党が指導する中国の特色ある社会主義現代化建設の出発点と到達点だ。人民中心の発展思想を堅持し、14億の中国人の意志と力を結集し、質の高い発展をよりどころにしさえすれば、共同富裕の実現という夢は必ず素晴らしい現実になる。