PART1 クリーンで美しい中国を
沈暁寧=文
習近平総書記はかつて次のように指摘した。「長い歴史の流れから見て、私たちの世代が後世に何を残せるかというなら、エコ文明建設こそ極めて重要な分野だと考える。エコ文明建設は人々に最も満足感をもたらすことができ、環境が改善されれば、人々も深く実感する」
2012年の中国共産党第18回全国代表大会(18大)から、党中央はこれまでにない力の入れ方でエコ文明建設に取り組み、エコ文明建設を中国の特色ある社会主義事業の総体的配置に組み入れた。「緑の山河は金山・銀山にほかならないという理念を確立し、実践しなければならない」と17年の19大の報告に書き入れ、「緑の山河は金山・銀山にほかならないという意識を高める」と党規約に盛り込んだ。エコ文明が憲法に盛り込まれ、「エコ文明建設は中華民族の永続的な発展に関わる根本的な大計だ」と「党の百年奮闘の重要な成果と歴史的な経験に関する中国共産党中央の決議」に書き加えられた。18大以降、党中央の指導の下、クリーンで美しい中国の建設に向けて全国の人民の積極性が著しく高まり、中国の生態環境保護は歴史的・転換的・全局的な変化が生じた。
昨年8月、遼寧省を視察した習近平総書記は、錦州市東湖森林公園を訪れ、
植樹の影に若者の努力
チベット自治区のラサ川のほとりにあるバイティン(白定)溝では、夏でも遠くの山肌には雪がかぶり、近くに青々とした山々が重なる。ゴム製の緑色の配水管が山肌をうねり、自動噴水装置がところどころで音を立て、高原の緑を潤している。
ラサ市で建築会社を経営するチベット族の若者ツェレントンジュさんは、3月から同世代の仲間を引き連れて現地の山で義務植樹活動を行い、もう4カ月余りになる。
「木を植えるのは一瞬の苦労ですが、木を育てるのはそれ以上の苦労が必要です」。中国銀行チベット支店で働く何偉軍さんは現地の林の手入れをしている。すぐ近くを指差し言った。「今年の初めに、職場の若い行員たちが植樹に参加しました。しっかり植えるためにみんな知恵を出し合って、簡易な道やフェンス、施設を少しずつ整備したんです」
「今日はバイティン溝で水をまかなきゃいけません」。消防士のドルジェツォージェさん(25)と同僚2人は早朝、車でバイティン溝の人工林へ向かった。「ここの灌漑施設はほぼ完成していて、森林も水源涵養機能が徐々に発揮され始めました」と説明する。
馬暁林さん(26)はラサの南北山緑化プロジェクトの電力保障責任者であり、彼とそのチームは20万ムー(1ムーは約0・067ヘクタール)余りの造林地の電力供給と各種灌漑施設の安定した機能を確保しなければならない。1月から馬さんはチームを率いてほぼ毎日、工事現場に駐在している。
ラサ南北山緑化プロジェクトはチベット自治区の重点生態プロジェクトであり、ラサとロカ(山南)市の九つの県・区、35の郷・鎮を含めて、2030年までに200万ムー余りの植樹林が完成する予定だ。ラサ南北山緑化プロジェクトの一部であるバイティン溝植樹造林区は多くの区画に分けられ、たくさんの企業や公的機関がそれぞれ受け持ち、多くの青年ボランティアが重要な任務に就いた。
近年では、北部のチャンタン高原で青年監視員がチベットカモシカなどの野生動物の保護に専念している。南東部の森林地帯では、45万ムー以上の造林を完成させ、30万本以上の樹木を守っている。ヒマラヤ山脈では、青年科学技術者が険しい山脈を越えて数多くの生態調査を行った。広大な高原では、さまざまな民族の青年が生態環境保護に青春をささげ、汗をかいている。
5月23日、「2023・中国チベット発展フォーラム」が北京で開催された。フォーラムでは米国から参加したジャーナリストの徐大巍氏が次のような意見を述べた。「生態保護と持続可能な発展を促す上での『Z世代』の責任と実践を検討する際の最たる方法は、私のように、現地の若者がチベット自治区の美しい風景と貴重な資源をどのように保護しているのかを実際に見て、自分の力でどのように貢献すべきか彼らから直接学ぶことだ」
中国の青年たちとチベットの環境保護に参加した清華大学に留学中のフランス人留学生の大衛明さんは次のように語った。世界中の若者が交流と協力の場をつくり、世界のグリーンで持続可能な発展を共に促進するように呼び掛けたいし、彼らに若者の知恵を可能な限り引き出し、声を大きくして、より大きな責任を担い、全人類のためによりグリーンで、低炭素で、美しい未来がつくれるよう力を合わせてほしい。
低炭素でグリーン経済へ
この10年で中国の再生可能エネルギーは飛躍的な進歩を遂げ、太陽光発電や風力発電といった産業チェーンが国際競争でも際立った優位性を見せ、エネルギー構造調整と二酸化炭素削減効果が次第に顕著な成果を収めている。風力発電業界では、新素材、新工法、新技術応用が大量に出現し続け、開発建設、設備製造、技術開発、検査認証、付帯サービスを完備した製造業チェーンができた。
「石炭のクリーンで高効率な利用と、石炭化学工業のハイエンドでマルチで低炭素的な発展を促します。新エネルギー産業チェーン全体の発展を推し進め、25年までに新エネルギー発電設備容量を現在の12倍以上にし、5000万㌔㍗以上にするよう努めています」。内蒙古自治区オルドス(鄂爾多斯)市党委員会書記の李理氏は、オルドス市はまさに「ダブルカーボン」目標に向けて産業のモデルチェンジを急ピッチで進め、エネルギー構造調整によって経済の構造変化をけん引していると語る。
「20大報告は、グリーン・低炭素産業を発展させると提起しました。これに励まされ、また大きな責任を深く感じました」。新疆ウイグル自治区の金風科学技術社の武鋼董事長は、会社は引き続き技術研究開発に力を入れ、風力発電産業のスマート化とデジタル化のモデルチェンジを力を入れて推し進め、風力発電産業の製造レベルと能力を急成長させ、中国の風力発電を中国の産業機械業界の新たな看板にしたいと語った。
近年、天津市の静海区は産業構造調整と汚染対策・排出削減が並行して推し進められ、グリーン・低炭素へのモデルチェンジが深いレベルで進んでいる。昨年、鉄鋼加工業の生産高は4・9ポイント下落した。それとともに、的確な排出削減成果ランキングと深刻な大気汚染の際の差別化対策を実施し、昨年、排気ガス排出企業の大気汚染物質排出量は全体で13・2%減少した。静海区党委員会書記の劉春雷氏は、「生態環境を保護し、グリーン発展を実現する意味は大きいです。経済成長の新・旧原動力の転換のスピードを上げ、産業構造調整、汚染対策、生態保護などに引き続き取り組んでいるところです」と述べた。
重慶大学で数十年教壇に立つ舒立春教授は、中国のエネルギー分野のモデルチェンジとアップグレードを目の当たりにしてきた。「長年にわたって重慶大学国家重点実験室は石炭の安全で高効率なグリーン開発とクリーンな応用に力を入れて科学技術イノベーションを行い、コールベッドメタン、シェールガス、天然ガスハイドレート、地熱などの低炭素エネルギーのブレークスルーに新技術を開発・応用し、中国のエネルギー計画に技術的サポートを提供しています」
この10年の数字の数々
昨年9月、国家発展改革委員会はエコ文明建設記者会見を開き、18大以降、中国で10年近く続くエコ文明建設における進展と成果を発表した。
同委員会資源節約・環境保護司の劉徳春司長によると、この10年間で中国は世界の人工造林の4分の1に当たる9億6000万ムーを植林した。2021年時点で中国の森林被覆率は24・02%、森林蓄積量は194億9300万立方㍍に及び、世界で森林資源の増加が最も多い国となった。12年と比べて、21年の中国のハイテク製造業の付加価値額が一定規模以上の工業企業(年売上高2000万元以上の企業)の付加価値額に占める割合は15・1%に達し、12年比で5・7ポイント増加した。新エネルギー産業は世界をリードし、世界市場に70%以上の太陽光発電モジュールを供給した。それとともに、新エネルギーのグリーン・低炭素へのモデルチェンジも顕著な成果を見せている。グリーンビルディングも12年と比べて、都市部の新築建築物に占める割合を84%にまで上げた。昨年8月末時点で、中国の新エネルギー車保有台数は1099万台になり、これは世界の約半数を占める。
これらエコ文明建設の目を見張る「成績表」で最も各界の注目を集めたのが、やはりエネルギー資源利用効率における成果だ。10年もの間、中国は省エネと排出量削減、そして資源の節約とリサイクルを力を入れて推し進め、エネルギー資源利用効率を大幅に向上させた。12年と比べて、21年の中国の実質GDP当たりのエネルギー消費は26・4%減少し、同二酸化炭素排出量は34・4%減少し、同水使用量は45%減少した。
エコ文明建設と環境保護事業の発展によって、空はさらに青く、水はさらに澄み、地球はますます美しくなる。統計によれば、15年と比較して、21年の中国の地級市およびそれ以上の都市の微小粒子状物質(PM2・5)の年平均濃度は34・8%減少し、空気質指数(AQI)は優良な日が87・5%になった。21年の中国の国家地表水優良水質断面の割合は、12年と比べて23・3ポイント増の84・9%となった。
中国最南端の海南省は約7分の1の陸地面積が熱帯雨林国家公園保護区だ。このエリアの山奥にある毛納村に住む村人は木を伐採せず、田を切り開かず、農村ツーリズムと茶葉という独自の産業を大々的に発展させ、貧困から脱却し豊かになった。村人の王瓊香さんは、茶畑だけで毎年10万元余りの収入があると話す。昨年初めには、保護区内のハイナンテナガザルに赤ん坊が1匹増えたという吉報が舞い込んだ。これで絶滅危惧種のハイナンテナガザルの数は、10匹未満だったころから五つの群れを持つ36匹まで回復した。
人が自然に責任を負えば、自然も応えてくれる。現在、緑の山河は金山・銀山にほかならないという発展理念は中国人の心に深く刻まれている。中国共産党の指導の下、全国が一丸となって人と自然の調和的共生という新たな発展理念の実践に努める中、クリーンで美しい中国のイメージはますますはっきりと見えてきた。
貴州省畢節市は太陽光発電パネルの間に、花胡椒などの商品作物を栽培し、土地の利用率を高めただけでなく、土壌浸食の回避と生態環境の改善にもつなげた(2022年8月、vcg)