PART3 人類文明発展にプラン提供
王焱=文
今日の世界では、多くの挑戦と危機が複雑に絡み合っており、人類社会はかつてない試練に直面している。人類文明の発展を推進するため、新しい時代の中国は独自の案を提出している。
人類衛生健康共同体を構築
2020年から全世界で猛威を振るう新型コロナウイルスの前に、人類は同じ船に乗っているように、共に嵐に直面し、興亡を共にしており、どの国も無関心ではいられない。
百年に一度のパンデミックに直面して、21年9月、習近平国家主席は第76回国連総会の一般討論演説で、初めて「発展優先の堅持、人民中心の堅持、普遍的恩恵・包摂の堅持、イノベーション駆動型の堅持、人と自然の調和・共生の堅持、行動志向型の堅持」という「グローバル発展イニシアチブ(GDI)」を打ち出した。習主席は、「発展は人民の幸福を実現する鍵だ。新型コロナによる深刻なダメージに直面し、われわれは世界の発展を均衡・協調・包摂の新たな段階に共同で進めなければならない」と強調した。
グローバル発展イニシアチブはほどなくして新型コロナウイルス対策の国際協力で具体的な行動に転換した。昨年9月までに、中国は180カ国以上の国および国際機関と感染症の予防・抑制プランと治療経験を共有し、34カ国に38の医療専門家チームを派遣し、120カ国以上の国および国際機関に22億回分以上のワクチンを提供し、新中国成立以来最大規模の世界的緊急人道支援を実施し、人類衛生健康共同体の構築を推進した。
30カ国以上の指導者が公の場で中国製ワクチンの接種を受けた。チリのピニェラ大統領は、中国製ワクチンを接種した後、カメラに向かってピースサインをした。ハンガリーのオルバン首相はソーシャルメディアでビデオメッセージを発表し、「今日は重要な日だ。われわれが中国国薬集団(シノファーム)製の新型コロナウイルスワクチンの接種を開始したからだ」と述べた。
多くの発展途上国にとって、中国製ワクチンは最初に受け取ったワクチンであり、その後も長い間入手可能な唯一のワクチンであり、感染拡大の抑制に極めて重要な役割を果たした。ブラジルグローバルサウス研究所のアレクサンドル・フィゲイレド所長は、世界が手を携えて感染症と闘うこの重要な時期に、中国は世界が団結して感染症と闘うための行動の担い手であると述べた。
今年3月10日、中国、サウジアラビア王国、イラン・イスラム共和国は北京で共同声明を発表し、サウジとイランの外交関係正常化の合意を宣言。三者は共に努力し、国際関係の基本ルールを守り、世界と地域の平和と安定を促進すると強調した(cnsphoto)
発展を維持する環境共同体
地球は一つしかなく、人類は苦楽を共にする運命共同体だ。近年、地球温暖化の兆候がますます顕著になり、多くの国や地域で極端な高温や深刻な自然災害が頻発している。気候変動が地球の生態系に及ぼす影響は、すでに世界の持続可能な発展を脅かしている。
中国は長年にわたり、気候変動に関する「パリ協定」を積極的に推進・実施し、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)など多くの国際的な場で、世界の温室効果ガスの排出削減目標達成に解決策を積極的に提案してきた。
習主席はグローバル発展イニシアチブを世界中に提唱するとともに、国連の採択した持続可能な開発のための2030アジェンダを加速度的に実行し、クローバル発展をバランスのとれた調和的で包摂的な新しい段階へと推進しようと呼び掛けた。21年、中国政府は30年までに炭素排出量をピークアウトし、60年までに実質排出量をゼロにするカーボンニュートラル実現に向けて努力すると宣言した。また、途上国のグリーンで低炭素なエネルギー開発を力強く支援し、国外で新たな石炭発電所を建設しないと約束した。この宣言は、中国が世界最大の炭素排出削減を達成することを意味する。国外で新たな石炭発電所を建設しないという約束も、国際社会の幅広い賞賛を得ている。
ドイツの『ターゲス・シュピーゲル』紙は次のように報道した。中国のこの約束は、20カ国以上の計4000万㌔㍗の設備容量のある石炭発電プロジェクトが停止されることを意味する。これはドイツの既存の石炭発電所の総発電量に匹敵する。石炭発電大国の中国がこのような譲歩ができる以上、他の国もできるはずだ。
ウクライナの学者アレクセイ・コヴァリ氏は以下のように述べた。中国が今後、国外で新たな石炭発電所を建設しないことを発表するとともに、発展途上国のクリーンエネルギーの開発を積極的に支援し、先進的な技術や経験、成果を世界と共有することは、世界の二酸化炭素排出量を削減する上で重要な意義があり、グローバル環境ガバナンスの改善に対する中国のコミットメントを反映している。
懸念を重視する安全保障共同体
グローバル発展は今の世界の主要な任務だが、人類の発展の過程には、常にさまざまな新旧の問題が伴い、安全保障政策によって秩序を守る必要がある。
22年2月24日に勃発したウクライナ危機は、世界の安全保障情勢に深刻な影響を及ぼした。同年4月、習主席はボアオ・アジアフォーラム2022年年次総会の開幕式で、「グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)」を打ち出し、人類が不可分の安全保障共同体であることを強調した。中国側は共同・総合・協調・持続可能な安全保障観を中核理念とし、互いに尊重し合うことを根本的準拠とし、安全保障の不可分性を重要原則とし、安全保障共同体の構築を長期目標とし、対立ではなく対話、同盟関係ではなくパートナーシップ、ゼロサムではなくウインウインという新たな安全保障の道を切り開くことを提唱している。
ウクライナ危機勃発直後、習主席はフランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相とのビデオサミットで、各国の主権と領土保全はいずれも尊重されるべきで、国連憲章の趣旨と原則はいずれも順守されるべきで、安全保障に対する各国の正当な懸念はいずれも重視されるべきで、危機の平和的解決に資するあらゆる努力はいずれも支持されるべきだと指摘した。これを踏まえ、中国外交部はウクライナ危機発生から1年を迎えた際、「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」という声明を発表し、各国の主権の尊重、冷戦思考の放棄、停戦、和平交渉の開始、人道上の危機の解消、民間人と捕虜の保護、原子力発電所の安全の確保など12項目から、中国の主張と期待を全面的に表明した。
中国の努力は、ロシアやウクライナを含む国際社会に広く認められた。今年3月、習主席はロシア公式訪問の際に、プーチン大統領とウクライナ危機について深い交流を行った。ロシア側は、中国側の立場を示す文書を真剣に研究し、和平交渉にオープンな姿勢をもって、中国側がそのために建設的な役割を果たすことを歓迎するとした。4月26日、習主席はウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行い、中国とウクライナの関係やウクライナ危機について意見交換を行った。習主席は、中国は一貫して平和の側に立っており、核心的な立場は和平を勧め、交渉を促すことだと強調し、特別代表を派遣し、ウクライナ危機の政治的解決について各方面と踏み込んだ意思疎通を行うと述べた。ゼレンスキー大統領は中国からの人道的支援に感謝し、平和の回復、外交的手段による危機の解決において中国が重要な役割を果たすことを歓迎すると語った。今年4月、習主席が北京でフランスのマクロン大統領、欧州連合(EU)委員会のフォン・デア・ライエン委員長と会談した際に、EU側は、中国側がウクライナ危機の政治的解決に向けて努力していることを賞賛し、中国側のいっそう重要な働きを期待した。
ウクライナ危機の長期化は全ての当事者にとって不利であり、平和は全ての当事者と世界全体の利益に合致する。最近、世界中で和平を勧め、交渉を促す声がますます強まっている。中国側は国際社会がこの契機をつかむよう促し、ウクライナ危機の政治的解決に向けて有利な条件を蓄積しようとしている。
世界の安全と安定を守る
「グローバル安全保障イニシアチブ」は、国連憲章の原則と目的を順守することを堅持し、世界の安全保障問題で国連がいっそう大きな役割を果たすことを支持している。中国は一貫して国連平和維持活動(PKO)の積極的な参加者と重要な貢献者であり、現在のPKOの第2位の出資国であり、5カ国の常任理事国の中で最も多くのPKO部隊を派遣する国でもある。1990年以降、中国は合わせて20カ国以上の30件近くのPKO活動に参加し、5万人以上のPKO部隊を派遣し、25人が犠牲になった。
2016年5月31日、爆発物を積んだ車両が突然、第4期中国駐マリ平和維持工兵分隊の正面ゲートへ突進した。勤務中の申亮亮氏は直ちに警報を鳴らし、爆発の瞬間に仲間を突き飛ばし、自らが犠牲になった。彼の貢献をたたえ、国連とマリ共和国はそれぞれ「ダグ・ハマーショルド・メダル」、マリ軍人栄誉勲章を授与した。
今年5月、アビエイに派遣された中国第3期PKOヘリコプター分遣隊は、危険な中での命令を受けた。現地武装勢力に攻撃されるかもしれず、地上からの支援が受けられないという高い危険性の下、緊急出動し、紛争の激化で窮地に陥った国連職員の救出に成功した。事件後、国連平和維持活動担当事務次長のジャン・ピエール・ラクロワ氏は、重要な役割を果たした中国のPKOヘリコプター分遣隊を称賛し、中国はPKO活動を揺るぎなく支持しており、PKO活動での「不可欠な」力であり、今後、平和維持における国連と中国の協力がさらに強化されることを期待すると述べた。
文明交流で国の垣根を越える
近年の地政学的対立の激化の影響を受け、「文明衝突論」や「文明優位論」などの雑音が台頭し、異文明間の不信感を募らせ、現在の国際社会での交流や協力を妨げ、世界の平和的発展に脅威を与えている。
習総書記は今年3月15日、中国共産党・世界政党ハイレベル対話会で、「グローバル文明イニシアチブ」を打ち出し、異なる文明が包摂的に共存し、交流して学び合い、人類社会の現代化プロセスを共同で推進することを提唱した。このイニシアチブは、より良い世界の構築に関する中国の深い思想を反映しているだけでなく、新時代における中国の外交布石にも落とし込まれた。
3月10日、重大ニュースが世界を揺るがした。中国側の折衝の下、サウジアラビア王国とイラン・イスラム共和国は北京で、7年間中断していた国交を回復することで合意したと発表した。4月には、サウジアラビア王国のファイサル外相とイランのアブドラヒアン外相が北京で公式会談を行った。6月、在サウジアラビア・イラン大使館が再開された。複雑な原因で長い間対立してきた中東地域の2大国であるサウジアラビアとイランは、このようにして和解を実現した。
「北京和解」の実現には中国の役割が不可欠だった。早くも2016年、習主席はアラブ連盟本部を訪問した際に「三つのノー」の原則を掲げた。すなわち「代理人を探すのではなく、和平を勧め、交渉を促す。勢力範囲を広げるのではなく、各国が共に『一帯一路』の仲間に入るよう促す。『真空』を埋めようとするのではなく、互恵・ウインウインの協力パートナー・ネットワークをつくる」だ。昨年、習主席は第1回中国・アラブ諸国サミット、中国・湾岸協力会議(GCC)サミットに出席し、サウジアラビアを公式訪問した。今年2月、国賓として訪問したイランのライシ大統領と会談した。中国の高級外交官も昨年からサウジアラビアとイランの間を頻繁に行き来している。中国の外交努力は、サウジアラビアとイランの国営通信の報道で高く評価された。
サウジアラビアとイランの和解は、垣根を越えるための各国のモデルとなった。岐路に立たされたとき、途方に暮れるべきではない。中国が3年連続で打ち出した三つのグローバルイニシアチブ(グローバル発展イニシアチブ、グローバル安全保障イニシアチブ、グローバル文明イニシアチブ)は、人類社会が現在の苦境から抜け出すための三つの処方箋といえる。安全保障は発展の前提条件であり、発展は安全保障の原動力であり、文明は発展と安全保障の基盤である。三つのグローバルイニシアチブは、共に人類運命共同体を構築するための強固な基盤を築くものである。