PART1 「和」の奥深さと歴史的理念

2023-09-28 10:40:00

続昕宇=文

昨年の中国共産党第20回全国代表大会(20大)の報告は、中国式現代化は平和的発展の道を歩む現代化だとした。そして中国は、「平和的発展の道を堅持すること」を憲法に盛り込んだ唯一の国でもある。伝統文化である平和的発展の道のルーツとして、「和」は中国文化の中で貫かれてきた価値であり、「和を以て貴しとなす」「和して同ぜず」「天人合一」は中国文化における「和」の思想的意義を成す三つの重要な側面だ。

 

各国に親しく接する 

「中国の文明は際立った平和性を持っており、中国が終始世界平和の建設者、世界の発展の貢献者、国際秩序の擁護者であることを根本から決定づけた」と習近平総書記はかつて指摘した。中華民族は古くから平和を愛する民族で、中国の文明も平和を愛し、和睦を尊び、調和を求める文明だ。国際的地位の向上に伴い、中国の発展が世界にもたらす影響は日々大きくなり、中国を理解する必要があり、理解しようとする人々は世界でますます多くなっている。しかし、国が強くなれば必ず覇権を唱えると思い込み、中国が宣言した「平和的発展の道を歩む現代化」に疑念を持つ者も出てくる。 

実際のところ、中国の伝統文化において、「和」の理念は長い歴史があり、そこに内包された「天人合一」の宇宙観、「協和万邦」の世界観、「和して同ぜず」の社会観、「人心和善」の道徳観は、中華民族の最も貴重な「和」の文化的遺伝子だ。2008年8月8日、北京オリンピックの開会式で、中国は世界に向けて漢字文化の魅力を示す際に、「和」の文字を使った。現在、現代化を進めている中国が「平和的発展の道を歩む」ことを中国式現代化の特徴としたことは、数千年にわたる中華民族の平和を愛する文化的伝統の継承と発揚となる。 

「和」という字の起源は甲骨文字にさかのぼる。最初はある音響や調子が他の音響や調子と調和する意味で、のちに調和、和睦、平和などの意味が派生した。早くも秦代以前に、中国人はすでに平和を愛する感情・信念を育み、一連の重要な思想・学説を形作った。たとえば、儒家は「仁者は人を愛する」「和を以て貴しとなす」を主張し、道家は「道は自然に法る」「無為自然」を尊び、墨家は「兼愛交利」「非攻・尚同」を強調した。さらに、戦争を主な研究対象とした兵家も、「上兵は謀を伐つ」「危うきに非ざれば戦わず」を唱えていた。それから2000年余りの間、中国の平和観は仏教など外来文化の「慈悲・」「非暴力・不殺生」などの思想をくみ取り、哲学・宗教、文学・芸術、礼儀・習俗などを通して中国人の生活に浸透し、中華民族の血脈に溶け込み、中国文明の遺伝子に根付いた。それによって、「平和」は中国人にとっての中核的価値の一つになり、中国文明の「天下泰平」の政治的理想と「協和万邦」の処世の道を形作った。 

歴史上、中国は長きにわたって世界最強の国の一つだったが、他国を植民地にしたり侵略したりすることはなかった。2100年余り前、漢王朝の使節・張騫が西域に派遣され、ラクダと善意で東西をつなぐ互恵協力の章をつづった。600年余り前、明王朝の官吏・鄭和が船隊を率いて7度にわたって西洋下りし、宝船と友情で中国と外国が平和的に交流した美談を残した。これらのことから分かるように、「和を以て貴しとなす」への揺るぎない信念を持っているからこそ、中国は戦争と植民ではなく、平和と交流を世界にもたらし続けてきた。 

近代以降、中国は次第に半植民地・半封建社会になり、国は辱められ、民衆は苦難にさいなまれ、文明は汚れ、中華民族は未曽有の災難に見舞われた。しかし、そのような状況に置かれても、中国人民は平和の信念を失うことはなかった。孫文が言ったように、「わが中華民族が平和的で法を守るのは、本性によるもので、自衛でやむをえない限り、決して軽々に戦争を起こさない」。英国の哲学者・ラッセルも、「戦争に気も向けないほど高慢な」民族があるとしたら、それが中国だ、中国人は生まれながら寛容的で友好的だ、と考えていた。 


2021年9月21日、習近平国家主席は北京からビデオ形式で第76回国連総会の一般討論演説に出席し、重要演説を行い、中華民族が伝承し追及するのは平和・和睦・調和の理念であり、中国は一貫して世界平和の建設者であると強調した(新華社)

 

和して同ぜずの共生共存 

中国の伝統文化は「和して同ぜず」「共生共存」を強調している。「和して同ぜず」は「和」でありながらも千篇一律にならず、「同ぜず」でありながらも互いを補い合うこと、つまり他者との共通利益を保証するとともに、自らの独立性を維持すること、多様性を尊重し守り、長所を取り入れ短所を補う多元的交流・融合において統一的な調和を実現していくことを指している。こうした平和の理念は二つに一つというような一元論文化や互いに平行して独立するような二元論文化を強調するのではなく、交流・融合し学び合い、調和して共生する多元文化を尊んでいる。中国は古来、伝来文化に対してほとんどの場合、包容力を持って受け入れる姿勢を取ってきた。現在の国際関係においていえば、「多極共存」を主張し、世界文明の多様性を尊重することだ。 

中国共産党は早くも1922年に、自らの綱領において明確に「平和」を奮闘目標として掲げた。40年代、毛沢東は「平和」こそ中国の唯一の活路であることを何度も指摘し、「世界平和の維持」は中国共産党の外交政策の基本的原則であることを宣言し、世界中の「平和と民主の力」を集結し、「人類の恒久的平和の勝利を勝ち取る」よう提唱した。 

新中国成立後の53年、周恩来総理はインド政府代表団と会見した際、初めて完全な形で平和五原則、すなわち領土保全および主権の相互尊重・相互不可侵・相互内政不干渉・平等互恵・平和的共存の5項目を打ち出した。この原則は打ち出されてすぐに国際社会で大きな反響と幅広い賛同を得て、その後の国際活動の中で発展、充実化し、重要な原則として国際社会に広く受け入れられ、多くの重要な国際文書に盛り込まれ、国際社会で国家間の関係を処理する基本準則となった。 

平和五原則が確立された時点で、中国は平等・互恵が交際の形態と方式であり、平和的共存の原則が対外関係を発展させる方法であることを確立した。5項目の原則で表された「独立」「平等」「平和的共存」は実質、「和して同ぜず」の精神的中身を受け継いだといえる。 

改革開放と社会主義現代化建設の新しい時期に入って、中国共産党は「平和と発展」という時代のテーマにしっかりと応え、平和と発展の関係を模索、研究し、平和的手段で紛争を解決する、新しい国際関係と秩序を構築する、平和的発展の道を歩む、調和のとれた世界を構築するなどの主張をし、他国との関係を積極的に発展させ、多国間外交活動に積極的に参加し、自国と世界の共同発展の促進によって人類社会が平和・和睦・調和に向かうようにさせることに力を入れている。ここから分かるように、平和を愛する思いはすでに中華民族の精神的世界に定着しており、今でも中国が国際関係を処理する際の基本理念であり続けている。

 

天人合一、法則に従う 

「天人合一」という言葉が最初に現れたのは北宋の時代だったが、その理論的起源は秦以前の時代にさかのぼる。中国の伝統的な哲学を貫いた根本的な思想だけでなく、儒家の和諧(調和)観の主な内容をなしており、儒家が求める理想の境地であり、中国文化と西洋文化の違いを生んだ根源でもある。20大の報告は中国式現代化の特質に言及したが、そこには天人合一という理念に内包された仁愛、系統、協調などの観点、思考、方法が含まれた。 

中国の伝統的思想史上、「天」と「人」の意味は非常に豊富だ。「天」は自然の世界だけでなく、倫理・義理を指しており、「人」の「天」に対する主動性は自然的主動だけでなく、道徳的主動を指している。これも、中国の伝統文化において、自然界と人類社会は関係しており、宇宙論と倫理学は通じ合っていることを物語っている。 

「天人合一」の極意は「合」にあり、合すれば一つになり、合しなければ天と人は対立することになる。この思想は「天」と「人」を不可分の全体として見なし、天道と人道、自然と人間の間の調和・統一した関係を強調する。 

中国文化は誕生の当初から、人と天地・自然を結び付けるようにしている。季節に応じた日常の労働から、「身を修め、家庭をととのえ、国家を治め、天下を平らかにする」国政運営に至るまで、天人合一は人知れず中国人の人倫の考えに影響している。また、天と人が合一しているかどうかは中国と西洋の哲学を差異化する論理の原点だ。 

西洋の哲学が「人間は万物の尺度だ」「自然界の立法者は人間だ」「主客二分化」など天人対立の考え方を主張する一方、中国の哲学は「道は自然に法る」「人性と天性相通じる」など天人合一の理念を強調している。さらに、中国と西洋の文化におけるほかの違いもそこから生まれてきた。 

社会文明の発展に伴い、天人合一の理念もますます成熟し、完全になり、深みを増しながら、より科学的なものになっている。自然界に対していえば、天人合一の理念は主に人間と自然はどう付き合うかを検討するが、義理に対していえば、天人合一は主に人間と社会はどう付き合うかを検討し、しかも社会文明を象徴する倫理・道徳と共に発展し、のちに人と人の間の倫理・道徳の要求に変化し、国際関係において平和的発展の道の堅持という中国の外交方針に落とし込まれた。こうしたことはどれも天人合一という観念の延長、継承、発展となる。 

「天下大同」「和衷共済」から人類運命共同体に至るまで、全ては平和的発展、協力・ウインウインの外交戦略を示している。天人合一の哲学的理念は中国式現代化に独自の精神的標識を与え、地球環境危機の対応や美しいふるさととしての地球の建設、人類社会の永続的発展のためにも、中国の知恵とプランを提供した。 

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